番外編⑤ その十九 忘れられてた狩人
「お前らもいい加減にしやがれ! さっきから真のラスボスみたいな顔しやがって。狩るぞコラッ!」
狩人が叫んだ。元々は狩人が佐藤委員長に惚れた事が原因で起きた大会だった。だがその趣旨が変わりつつある現場に不満しか無いのだろう。
「嫌だなぁ。別に僕たちは魔王がやられたあとに登場する大魔王的な存在じゃないよ~プルプル」
「お前ぜったい俺を舐めてるだろう!」
茶化すように語る小平に狩人が噛み付いた。
「ところで狩人くん。君はさっきから何を怒ってるの?」
「ああ? 俺の存在忘れてやがった癖に偉そうに説教すんなよ!」
海渡の質問に反発する狩人だった。
「とにかくだ! この戦い俺とお前が決着をつけるためのものなんだよ! それまで余計な邪魔すんな!」
「ならば時を進めよう――」
その時、静かに割り込んだ声。途端に時空が歪んだことに海渡は気がついていた。
『さぁいよいよ決勝まで進みました! ここまで様々な戦いが繰り広げられましたが最後まで勝ち残ったのはこの二人!』
実況の声が響き渡る。そう。気がつけば殆どの戦いは終わり、なんと決勝戦が始まろうとしていたのだ。
「どうやら時を進めたのがいるようだね。君ではないようだけど仲間かな?」
「ハハッ。それはノーコメントって事で。ねぇ時男♪」
小平が隣に立っていたメガネの少年の肩を叩いた。時男は眼鏡を直しながらジッと海渡の顔を見つめていた。
しかし謎が残る。一体誰が時を進めたというのか。
「いやいや謎でも何でも無いよね! どう考えてもいきなり小平の友人みたいな顔して登場したその時男がやったことだよね! 名前的にもそうだよね! いかにも時を操る能力者って感じやん!」
シンキチが突っ込んだ。とても鋭いツッコミだが周りの反応は冷ややかだった。
「いやシンキチそれはいくらなんでもこじつけが過ぎないか?」
「だよね。時男という名前だから時を操るなんて決めつけが過ぎるよ」
「全く。大体よくある名だからな」
「え? えっと……」
逆に総ツッコミを受けて戸惑うシンキチ。普段からツッコミが欠かせないシンキチではあったがいざ受けに回ると案外脆いのである。
「そもそも時男はこれでも名字だからね。子どもからの付き合いで一緒にいても別に不思議じゃないし。ねぇ操流♪」
「フンッ。腐れ縁って奴だ」
「いやいや! ますます確信したよ! 時男まではいいとしても名前が操流ってもう確定じゃ! 有罪! 有罪!」
シンキチが叫んだ。だがやっぱり周りは納得してない。
「だから名前で決めつけるなって」
「そうだよね。大体、操流って名前もよくあるし」
「いやないよ! あったとしてもレアだよレア! SSRだよ!」
流石のシンキチもここは譲れないようだった。
「お前らもういい加減にしろ。決勝が始まるんだから大人しくみておけ」
矢田が面倒くさそうに言った。確かに大事なのはシンキチのツッコミではない。これから始まる決勝戦である。
「そう言ってもこんなのもう決まってるようなもんだからね」
シンキチが冷静に口にする。
『さぁそれではいよいよ決勝戦まで勝ち上がって選手の登場です!』
そして実況の声が響き渡りついに決勝の幕が落とされる。
『出てきました! そう決勝に生き残ったのはまさにこの二人! 激しい激戦を終え今まさに最強のカードが姿を見せる! 決勝戦はぁあああぁ! 佐藤委員長VS田中だぁあああぁああ!』
「いやいやなんでだよおぉおおぉおおお!」
シンキチの大声が既に暮れ始めていた空に響き渡るのだった――
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