番外編⑤ その十八 同じ異世界帰り
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「その言い方だとまるでお前も異世界から戻ってきたみたいだね」
「みたいじゃない。その通りさ。僕も帰ってきたのさ。異世界――そうとてもファンタジーな異世界リトルフラットからね」
「いやそれ絶対名前繋がりだよね! 小さい平らだよね!」
シンキチのツッコミが入った。英訳から入るとは中々インテリなツッコミ略してインコミであった。
「何その略称! ダサッ!」
「てか地元どこだよお前」
「唐突すぎる!」
何故か鮫牙がそんなことを聞き出した。脈絡なさすぎてシンキチもビックリである。
「僕の地元はこだい」
「ストオォオオォオォォオップ!」
小平が地元を口にしようとしたところでシンキチがストップを掛けた。見事なツッコミストップ略してツコップ、シンキチの新必殺技である。
「嫌だよそんな必殺技! いやそうじゃなくてとにかくわかり易すぎる! みなまで言う必要ないからね! てかどんだけこだいらで推すんだよ!」
『突っ込むなぁ』
ダマルクが感心したように言った。そしてシンキチ本人は割とノリノリである。
「あはは、彼面白いねぇ。僕がいた異世界にはいなかったタイプだよ」
「まぁ異世界にツッコミ役がいたらそれはそれで驚きだよね」
笑う小平に海渡が淡々と答えた。杉戸と虎島も苦笑いである。
「ところで小平――お前が海渡と同じで異世界帰りなのはわかったけど、さっき者達って言ってたよな? あれってどういう意味なんだ?」
杉戸が怪訝そうに聞いた。
「俺もそう聞いたが、言われてみれば俺も異世界帰りみたいなものだな」
「あ、私もそうなる、のかなぁ?」
虎島が一人頷き景は小首をかしげていた。確かに景も異世界にいたが転生してから戻ってきている為、どっちなのか迷っているのだろう。
「キララ殿は我々と同じ生まれであろう」
「そうよ! キララは私たちと長年パーテイーを組んでたんだし」
「うふふ、キララちゃんは誰がなんと言おうと私たちの世界の住人ですよ」
「熱い友情だねぇ」
「いや、あれはいきすぎというかなんというか……」
あっという間にフォワード、マックス、キャラットに囲まれ抱きつかれている景を見ながらげんなりした顔を見せる虎島だった。
「虎島も大変だよな」
「キュッキュ~」
杉戸が同情的な目を向けた。そんな虎島の頭上ではスライムのミラクが楽しそうにポンポンっと跳ねていた。
「さて、そろそろ本来に入ろうかな。海渡、実は僕たちは君にいい話があって来たんだよ。これまでのはただの余興でね」
「余興でマグマを増殖したの?」
「まだ根に持ってるの? ほんの冗談だってば。それよりも本当の目的は」
「いい加減にしやがれぇええぇええぇええ!」
小平が目的とやらを話そうとすると、どこからともなく叫び声が聞こえてきた。見るとガラの悪い少年がのしのしと大股で近づいてきている。
「さっきから聞いてればお前らこの俺、狩人を忘れてんじゃねぇだろうな! おい!」
そして叫んだ。そう狩人だった。思えばこの大会も元を正せば海渡と狩人の因縁から始まっていたのだが。
「あ、ごめん。すっかり忘れてた」
「軽! この状況で軽すぎでしょう! いや確かに途中から誰もが狩人の存在なんて忘れていただろうけどさぁ!」
「何だとこらぁああぁああ!」
「ひぃぃいぃぃいいごめんなさいぃいぃいいい!」
海渡の反応に早速突っ込んだシンキチであったが、結果的に狩人に目を付けられてしまった。とんだとばっちりである――
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