番外編⑤ その十七 え? 過去話はじまるんですか?
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「お、おい海渡! 一体何がどうなってんだよ!」
「あいつ。シンキチの試合でリングの周りを本物のマグマに変えたんだ」
「マジかよ。何かおかしいとは思ったけどな……」
杉崎と虎島が海渡に近寄ってきて話を聞いた。いきなり相手を消滅させたのだからそれなりの理由があると思っていたようで二人ともひとまず納得はしたようだが。
「いや、でも流石に消滅はやりすぎじゃないか? それになんでこんなことしたのか聞いておきたかったかもだし」
杉崎が心配そうに海渡に聞いた。確かに相手のやり方に問題はあったが、対応が過剰すぎたのではないかと杉崎としては今後が心配だったのだろう。それに相手の目的が現状はっきりしていない。
「問題ないよ。だってあいつ本体じゃないからね」
「何ッ! ということは?」
「ははは。流石だね海渡くん。噂になってるだけあるよねぇ」
虎島が驚いたその時、背後から聞こえてきたのは確かに海渡と戦っていたゴヘイの声だった。全員が振り返るとローブを脱ぎ去った一人の少年がその場に立っていた。
「もう正体を隠すのもやめたんだねゴヘイ」
「流石にもう意味がないでしょう? それとわかってると思うけどゴヘイは偽名さ。本名は蔵敷 小平だよ。驚いたかい?」
ゴヘイが自分の名を口にした。これで謎だった名前も明らかにされた。まさかゴヘイと思っていた相手がコヘイだったとは一同は驚きを隠せなかった。
まさか真の名がコヘイとは……ゴヘイとは似ても似つかないその本名に誰もが唖然としたことだろう。一体ゴヘイは何故コヘイという本名を隠してまでゴヘイを名乗ったのか。
その秘密は彼の過去にあった。そもそもコヘイとは――
「いや長いよ! いつまでゴヘイとコヘイについてナレーションっぽく挟んで語ってんだよ! てかゴヘイもコヘイも殆ど変わんないよ! しかもわざわざカタカナにしてどう見てもツッコミ待ちだろう! てかなんでそんなの偽名にしたんだよ! そのままコヘイで良かっただろう! しかも過去話はじめようとしたよね今! 本当危なかったよ! こんな誰も興味のないコヘイの歴史の過去話なんて誰も興味ないからね! 僕が止めなかったらそんなヤバい過去話が長々と二十話ぐらい続くとこだったよ! タイトルまでそれっぽくして油断も隙もあったもんじゃないよ! てかもっと他に気にするところあっただろううぅうぅうぅうぅううがぁあああああ!」
『などとシンキチはわけのわからないツッコミを続けており……』
「いやわけわかるだろう! ゴヘイとコヘイにこだわる方がわけわからないよ!」
ダマルクの返しに更にシンキチが突っ込んだ。久しぶりすぎてかシンキチ渾身のツッコミである。
「おお! 確かに久しぶりにシンキチが長々と突っ込んだぞ」
「やっぱりツッコミしてる時のシンキチはイキイキしてるなぁ」
虎島と海渡が感心していた。そして杉崎はどこか冷めた目で見ていた。
「それよりも小平だよ。お前一体何したんだ?」
「ひ・み・つ、といいたいところだけど、多分海渡はもう気がついているよね」
「どうかな。増殖してるんだろうなぐらいしか思いつかないよ」
挑発するように述べた小平に向けて海渡が答えた。
「アハッ♪」
海渡の態度に小平が嬉しそうに笑った。
「やっぱりわかってるじゃん♪ 流石だね海渡は。そう僕の能力は増殖。これで僕はなんでも好きなだけ増殖できる」
「……待て。それだとおかしいぞ」
この流れに横槍を入れたのは黒瀬だった。
「おやおや。確か大魔王の黒瀬だったかい? あまりに出番ないからって横入りしちゃったかな?」
「やめてあげて! 本人もとっても気にしていることだから! 確かに大魔王という正体明かしてからもわりと影が薄かったかもだけど!」
「何だと?」
「ごめんなさいぃいいいっぃぃいいい!」
突っ込んでる途中に黒瀬に睨まれシンキチが謝罪した。黒瀬はわりと本気でイラッとしているようなので小平やシンキチの言う通り気にしていたのだろう。
「とにかくだ。能力が増殖ならリングの周囲をマグマに変えたことの理屈が通らないぞ」
「そんなことはないよん。マグマを増殖させればいいだけだからね」
「は?」
聞いた黒瀬が?顔を見せた。
「ふ~ん。つまりマグマを溜めていた穴も増殖したってことでいいのかな?」
「流石だね海渡よくわかっている♪」
「待て待て! そんなこと言い出したらもうなんでもありだろう!」
「はは、何を今更。最強を超えて戻ってきた者達ってのは大体そんなものでしょう? そこにいる海渡だって似たようなものだしね」
両手を広げ小平が言った。その言葉に含まれた不穏なワードに海渡も眉を顰めたのだった――
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