番外編⑤ その十三 百話後で死ぬ田中
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「田中は死んだ。百話前に死ぬと予告されてから実に百話後のことであった」
「息吐くようにうそつくのやめて! もうとっくに百話超えてるから!」
田中が突っ込んだ。どうやら自分のことは自分でよくわかってるようだ。
「チッ、田中のくせに何勝手に突っ込んでんだよ」
『不機嫌そうだなシンキチ』
舌打ち混じりに文句を言うシンキチにダマルクが突っ込んでいた。
「エイプリルフールだし許されるかなって」
「いやいやいやいやいやエイプリルフールなんてとっくに過ぎてるよね! もうとっくに過ぎてるよね! 時差なの? 時差なの? いやいや時差大きすぎでしょ!」
『張り切って突っ込んだなぁ』
ダマルクの言う通り海渡に向けてシンキチは全力で突っ込んでいた。何なら突っ込んだ後田中相手にドヤ顔を見せたほどだ。
「あいつら一体何の勝負してるんだ……」
「全く興味の惹かれない場外乱闘だな」
田中とシンキチに対する杉崎と虎島の反応は実に冷めたものだった。そして実際は田中はまだ死んでいない。何なら勝負はまだまだこれからだが皆の興味は薄い。
「もっと興味持って!」
「ではルールを説明します。お互いに勝負はこのリングの上でつけてもらいます」
司会者が話すと同時に田中と名もなきシュワの立っていた地面がせり上がっていく。そして円形のリングが出来たかと思えば外側が溝となり水が流れてきた。
そして水の張られた溝に背びれの付いた奴らが解き放たれた。どうやら落ちれば奴らの餌食になってしまうらしい。
「さぁそれでは天羅大闘制覇一回戦を始めたいと思います。落ちたら恐らく最後のデスゲーム! 果たして生き残るのはどっち!」
「待って待って待って待って! なにこれなにこれ! こんなの落ちたら食われて死んじゃうよ!」
目玉が飛び出でんばかりに驚き叫ぶ田中だが名もなきシュワは実に容赦なかった。開始早々からロケランをぶっ放してきたのだ。
「こわ! 何でロケランぶっ放してきてるのあの人!」
田中は逃げた。とにかく逃げた。
「そ、そうだ私はこれで悪運だけは強いんだ! きっとこうやって逃げてればいずれ」
「フンッ!」
「ギャッ!」
しかし名もなきシュワはいつの間にか田中に近づきロケラン本体で直接殴ってきた。田中はそのままリングから落ちそうになったがなんとか端に捕まり落ちそうになりながらもギリギリで耐えていた。
「ひぃ、やばいやばい!」
「さっき百日後に死ぬと言ったな? だがあれは嘘だ」
「それもうさっきじゃない大分ま、ぎゃぁあああぁああ!」
結局田中は最後まで逃げ切ることが出来ずそのまま落ちていった。
「田中、死亡をなんとなく確認!」
「田中ぁああああぁあああ!」
司会者が勝利を告げると同時に杉崎が叫んだ。別に田中の事はどうでもいいと言えばどうでもいいがそれでも目の前で死なれてば寝覚めが悪いだろう。
「あ~あ落ちちゃったね」
「いやいや落ちちゃったじゃないだろう海渡! 見ろ鮫が集まってきてるぞ!」
「え? 鮫? どこに?」
背びれのついたそいつらが田中に群がり虎島も慌てていたが――直後背びれのついたイルカに笑顔の田中が乗っていた。
「えぇ補足させて頂きますと今のは落ちたら死んじゃう気がするんですゲームです。水の中にいたのは鮫にコスプレしたイルカちゃんたちでした~皆さん演技派のイルカたちに盛大な拍手を」
観客からパチパチと拍手が起きた。そう、当然だが学校で本気の殺し合いがおこることはないのである。
「よく考えたらそりゃそうか」
「ま、これなら安心だな」
「ひいぃいぃい! 待って待って! 何かイルカに集団でボコられてるんですけどぉ! 今まさにイルカに命奪われそうなんですけどぉおお!」
「背中に乗られたのがよっぽど嫌だったんだなぁ」
こうして一回戦は田中がイルカに半殺しにされる程度で終わったのだった。
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