番外編⑤ その十一 開催!? 天羅大闘制覇!
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天羅大闘制覇――その歴史は紀元前にまで遡る。それはかつて天聖学園にて異性に想いを告げたい漢だちによって行われた死合――戦死たちは想いを認めた手紙を預け、勝利することによって取り戻し想いを告げる事が出来る。故に死合前に預ける文をかつては死文と呼ばれたのである。余談ではあるがこの際に認められたデスレターが平和な時代になりラブレターに変化したことはごく一部のマニアの間では有名だった気がしないでもない話である。
――死遊戯書房「田中でもわかるデスゲームの歴史」より抜粋。
「いきなりおかしな歴史解説が始まったーーーーーーーーーー!」
『勉強になったねぇ~』
シンキチが盛大に突っ込んだ。しかしダマルクはとても感心していた。他の生徒達はいつもどおりだなと考えていた。平常運転である。
「あ、あの、先生? 何を言って……」
そんな中、委員長だけは大真面目に矢田先生に確認を取っていた。確かにいきなりこんなことを言われても意味がわからないのだ。
「うむ。委員長。何も聞いていないのか?」
「い、いえ、全然」
「そうか。ならば説明しよう! この日のために校長に掛け合い、開催が決定したそれが天羅大闘制覇だ!」
「だからその天羅大闘制覇って何なんだよ」
「おかしな歴史しかきいてないしな……」
杉崎と虎島が矢田先生に突っ込むと、矢田はフっと笑いながら語りだした。
「簡単にいえば大会編だ!」
「編って言っちゃたよこの人!」
矢田の発言にシンキチがツッコミを入れた。最早何でもありの世界だった。
「……で、何で大会?」
海渡が興味なさげに聞くと……
「スレイは委員長と付き合いたい海渡も委員長と付き合いたい」
「いや、俺何も言ってないんだけど……」
「細かいことは気にするな!」
「細かくないよ!?」
委員長が叫んだ。しかし相変わらずのマイペースな矢田である。
「とにかくいい機会だからこの大会の設定を引っ張ってきたんだよ。大会はトーナメント的なあれで行う! そして優勝者には好きな相手をデートに誘える権利を進呈する。デートに掛かる費用もある程度負担してくれるという太っ腹ぶりだ!」
矢田が声高々に宣言した。この発言に生徒たちからは――
「うおぉおぉおぉぉおおおおおおお~!」
――という大歓声が上がった。確かに魅力的な提案ではあったからだ。元々は委員長とスレイや海渡の問題だったのが、いつのまにか好きな相手と一緒にデート出来る権利にすり替わってることなどご愛嬌といえるだろう。
「カカッ。面白いじゃん。おい海渡! 俺はこの大会で必ず優勝して委員長をデートに誘ってやる!」
「デートに誘うだけでこんな大掛かりな大会になる方が面倒じゃない?」
「あ、それ言っちゃうんだな海渡……」
海渡が疑問を口にすると、虎島が思わず突っ込んでいた。まさにその通りなのである。とは言えこの話はあっという間に学校中を、いやそれどころか街中に、日本中に、世界中に、宇宙中へとどんどん広まっていくのだった。
「いやいや! 勝手に話が大きくなってるよ!」
『大丈夫! もう止められないのさ!』
シンキチの叫びに対しダマルクがサムズアップしながら答えた。
こうしてなんだかんだで学園にて大会が行われることとなったのだ。
「ふっ、ここであの伝説の天羅大闘制覇が行われるのだな――」
そう呟いたのはいかにも侍といった和装に身を包んだ男だった。片目には眼帯をしており顔は傷だらけ。腰には刀が四本も吊るされていた。
「カカッ、腕がなるわい。まさにこの平和な世にこのような死の大会が開催されるとはな」
更にもう一人現れたのは迷彩服を来た年嵩の男だった。口ひげを弄くる男の背中にはロケットランチャーやグレネードランチャといった重火器が大量に背負われていた。この男もまた物騒な気配を漂わせている。
そんな二人に向かい合うように立つ男が一人。一見するとどこにでもいるサラリーマン風のスーツを着た男だ。だがその眼光はまるで獲物を狙う肉食獣のようにギラギラとしていた。その男は刃のついた金属の名刺をチラつかせゆっくりと口を開いた。
「ふん。貴様等のような雑魚どもがこの僕の邪魔をするというのかな?」
その言葉に二人がピクリと反応した。だが男は続ける。
「まぁ良いです。どうせ貴様ら程度の力じゃ僕には勝てませんよ」
「ほざけ若造が! 俺の力を見せてやろうぞ!」
「やれやれ、儂の本気を見せる時が来たようじゃな」
天聖学園前にて大会も始まる前から三人は熱い火花を撒き散らしていた。それはこれから始まる大会の熾烈さを暗示するようでもあった――
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称・天羅大闘制覇・ツッコミ等は架空であり、実在のものとは関係ありません。




