番外編⑤ その九 驚愕の彼女の真実
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「おい海渡。何か厄介なのに目をつけられたな」
「う~ん。まぁでも呼ばれてるしね」
「お、おいおい海渡」
スレイが海渡を呼ぶ中、杉崎と虎島は心配していたが海渡は立ち上がりスレイに向かって答えた。
「俺が海渡だけど何か用かな?」
「か、海渡くん……」
海渡が名乗り出ると委員長は不安そうな顔を見せていた。ひょんなことで海渡が巻き込まれる事を気にしているのかもしれない。
「テメェが海渡か。おいお前! 委員長とはどういう関係だ!」
「大事な友だち」
「と、ともだち……」
海渡は即答だった。爽やかな笑顔であっさりと友だちと言い放った。その様子に密かにショックを受ける委員長であり。
「ちょっと海渡。こんな時ぐらいもうちょっと洒落たこといいなさいよ!」
「洒落たこと?」
鈴木が、ガー! と歯牙をむき出しに叫びだした。
しかし言われた海渡はきょとんっとしていた。
「なぁ杉崎。海渡って本当に気がついていないのか?」
「だろうな。本当そういうのに疎いやつだし」
「委員長も大変だよね……」
一方で虎島、杉崎、花咲の三人はひそひそとそんな事を話していた。正直委員長が海渡に好意を寄せているのは傍から見たら明らかであり事実上気がついていないのは海渡ぐらいなのだ。
ちなみにクラスでは海渡と委員長はイセサトやカイイなどと呼ばれ一部では尊い存在として扱われる程だった。
『イセサトはともかく怪異は普通に怪しそうな名前だよね! トラブルまったなしだよね!』
またツッコミが聞こえてきているが、それでもやはり女子たちはキャ~キャ~言い合い海渡とスレイ果たしてどっちが委員長のハートを射抜くのかなどと話題にしていた。
「ふん。何だ友だちか。だったら俺の方が上だな。何せ俺は委員長の手作り料理を食べたんだからな!」
「あ~……う、うん。凄いね」
海渡は引きつった笑顔を見せ素直に感心した。以前委員長の料理を食べる機会はあったが海渡でさえ上手いこと収納魔法でごまかしたのである。
それを実際口にしたというのだから海渡としては驚きなのである。
「委員長の手料理なら海渡も食べてるだろう」
「あ、あのときね」
「キュ~……」
すると虎島と景が思い出したように言った。二人もその場にいたので知っていたのだ。もっとも海渡は実際には食べていないのだが。
そして景に撫でられていたミラクが細い声を上げた。
若干どよんっとした空気が漂っているのは当時委員長の料理を何杯も押し付けられたからだろう。
どんなものでも文句なく食べる筈のミラクでさえ嫌々取り込む。それが委員長の料理だった。
「お、お前もあれを食べたというのか! 愛情がこもりすぎていて思わず意識が途絶えそうになるあの究極の手料理を!」
スレイがムキになって突っかかってきた。ただ海渡は冷静に意識が途絶えるほどの味だったんだね、と同情していた。
「わかったでしょ? いい! 委知世はね。皆に優しいの。料理だってあんたの為だけじゃないんだから諦めなよ」
「ちょ、鈴ちゃんってば」
鈴木が委員長を抱き寄せながらスレイに言い放った。するとスレイが鈴木と委員長を見ながら目をパチクリさせた。
いや、スレイだけではない。今の鈴木の発言で教室中が騒然となった。それはなぜかと言えば――
「「「「「「「「「「委知世って誰ーーーーーーッ!?」」」」」」」」」」
教室にいたほぼ全員の声が揃った。そうなのである。これまで委員長はあくまで委員長でありそれ以上でもそれ以下でもなかった。
だがいま確かに鈴木は呼んだのだ。佐藤委員長のことを委知世、と――
委員長の名前はコミカライズ版にもバッチリ載ってたりします。
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