番外編⑤ その五 危ないバイト?
いつも感想や誤字脱報告をいただきありがとうございます!
「えっへっへ、か、海渡~ありがとうなぁ。バイトのおかげでもう五十万も稼いだぜえ、へ、えへへ」
矢島に相談を持ちかけられてから一週間が過ぎた。海渡から稼げるバイトを紹介してもらった矢島は早速取り掛かっていたようだが、稼げてはいるようだが目の焦点があっておらず呂律も回っていなかった。
「おい海渡、矢島の様子が明らかにおかしいぞ。一体どこのバイトを紹介したんだ?」
「え? 異世界のだけど?」
「やっぱりか」
矢島の様子が尋常じゃないことに気がついた虎島が海渡に聞いた。海渡はあっさりどこのバイトか答え杉崎は妙に納得していた。
「日給十万円というからおかしいとは思ったぜ」
「それって危険じゃないのか? 既におかしいし」
杉崎がやれやれといった顔を見せ、虎島は改めて矢島の顔を見ながら海渡に問い直す。
「まぁ元から危険とは言っておいたしね。例え死んでも神殿で復活出来る異世界だから、それでもまだ楽な方だとは思うんだけどね」
「普通に聞いてしまってるけど、本当にそんなゲームみたいな異世界があるんだな」
海渡の説明を聞いて杉崎はなんとも言えない顔を見せた。そういう世界があることを受け入れてしまってることとそんな異世界もあること両方に対して若干の戸惑いを覚えているのかもしれない。
「なぁ死んだ時の痛みはどうなんだ?」
「痛いよ。死ぬわけだしね」
「そんなあっさりと……」
杉崎の問いかけに淡々と答える海渡に虎島は若干引いていた。
「俺や杉崎ならともかく流石に矢島みたいな一般人にその世界は厳しいんじゃないのか?」
「なんか凄く自然に俺、お前らと同じ土俵に上げられてるんだが」
杉崎は一般人枠だと思いたいようだが残念ながら杉崎は十分海渡側である。
「一応異世界限定のスキルは授かってると思うし、あと数日もすれば慣れると思うよ。十日ぐらいはあんな感じでハイになったりするだろうけどね」
「そういうものなのか?」
「あぁ、でも俺も経験あるな。修行は受けたけどそれでも異世界についてから暫くは精神的にちょっとおかしかったと思うし」
これに関しては虎島も納得したようだ。杉崎は直接異世界に行ったことがないが虎島は海渡の勧めもあり一度異世界に渡っているのだ。
「でも異世界とか慣れていいものなのか?」
「まぁ期間限定だしね。借金を返せるだけたまったらバイト期間は終了にするから」
「いや、でも矢島が必ずしも借金返すために使うとは限らなくないか?」
杉崎が素朴な疑問をぶつけた。たしかに大金を手にしてしまったならつい別なことに使ってしまおうと思ってもおかしくない。
「大丈夫。しっかり契約は交わしたから矢島は借金を返す以外にお金は使えないからね」
「そういうところはしっかりしてるんだな海渡は」
「まぁ、これで異世界のバイトだけしてればいいなんて考えられても困るからね」
海渡が答える。事実異世界で稼いだお金を日本で使えるようにするには色々と手間が掛かるのだ。
今回はサマヨが教師という立場上生徒の借金を放っておけないと同意し異世界バイトの許可も出ているが、そのおかげで結果的に何故かガブリエルの仕事が増えたのだが。
「まぁこの調子なら一ヶ月と少しあれば返せるよね」
「う~ん。でもさ海渡。改めて思うんだけどそのデスゲームスレイヤーって何者なんだろうな?」
「さぁ?」
杉崎が?顔で問いかけるが海渡はあまり興味なさそうだった。
「本当関心ないんだな」
「まぁ別に悪いことしてるわけじゃないからね」
要求してる金額も命が助かることを考えればそんなものだろうというのが海渡の考えだった。
「まぁ願わくば面倒そうだし関わりたくないものだな」
そして改めて矢島を見た後そう呟く杉崎だったのだが――
◇◆◇
「あれ? ここって?」
佐藤委員長が目を覚ましキョロキョロとあたりを見回した。確か今日は試写会に当たったという友だちに誘われて映画を見に来ていた筈だった。
だが映画を見ている途中で突然ウトウトししまい目が覚めたら床に横になっていたのである。
映画館であれば本来椅子に座っていた筈であり、委員長はこれはただ事じゃないと考えた。
『どうやら皆様目が覚めたようですね。ようこそ死の上映会へ――』
そして案の定周囲に設置されたスピーカーから誰かもわからない機会的な声が聞こえてきたわけだが――
発売中の月刊コミックREX2月号にて本作のコミカライズ版最新話が掲載されております!




