番外編⑤ その一 デスゲームにかかわる噂――
「……なんだこれ? デスゲーム……スレイヤー?」
杉崎はパソコンとにらめっこしながら画面に映る噂話を眺めていた。
以前はジャーナリストだった父親の仇討のためにデスゲーム運営について調べ続けていた杉崎だった。
既に父親の仇であった組織も潰れもう調べる必要はないのだが、やはり長年続けていた事だけに時間があるとついつい見てしまう自分がいた。
そんなときに見つけたのがネットに転がっていたデスゲームスレイヤーの噂である。
「何々? 『デスゲームが行われている場所に紛れていてデスゲームをぶっ潰す存在がいるという。デスゲームスレイヤーはデスゲームをぶっ潰すことだけを生きがいにしているような存在と――』か、これって……」
ふと杉崎の脳裏にある友人の顔が浮かんだ。
「――勿論デスゲームをぶっ潰すなどと豪語するぐらいだ。その強さも尋常ではなくコンクリートの壁も素手であっさり破壊するほどであったりと人外じみた噂が次々と――」
一通り読んだところでノートパソコンを閉じ杉崎は戸惑ったような顔を見せつつ独りごちる。
「これどうみても――海渡、だよな?」
◇◆◇
「ちょっと待て! ここは一体どこなんだよ~!」
矢島が一人叫んだ。彼は気がついたら妙な場所で寝かされていた。意味がわからず辺りをキョロキョロと見回すがどうやらどこかの森に放り出されていたようだ。
「落ち着け俺。確か最近金欠だったし何かいいバイトないかなとネットを探しててたら日給一千万円ってバイトがあってラッキーと思って応募したんだよな?」
矢島が頭を抱えながら思い出していた。その内容からして明らかに怪しいのだが矢島は欲望に忠実な男だった。
そもそも金欠の原因がマッチングアプリで知り合った女の子に奢るだけ奢らされて何もなかったということが続いたためでもある。
「くそ、そもそも日給一千万円なら寝て起きた時点で目の前に一千万円ぼんっと置いてないとおかしいだろう! 騙されたのか俺は!」
矢島の基準も大概だが、そもそもそんな怪しいバイトがまともであるわけもなく――
――ピンポンパンポン、皆様にデスゲームギルド【死神の調べ】よりお知らせです。最後の一人がお目覚めになったのでこれよりデスゲームを開催いたします」
「はぁああぁあああ!?」
矢島が絶叫した。おかしな状況と思ったがまさかデスゲームに巻き込まれるとは思っていなかったのだろう。
「ふざけるな! 日給一千万円は嘘だったのかよ!」
――皆様の中には日給一千万円が嘘かよと文句を口にしている方もいるかと思われますが。
「バレてる!? なにこれ怖い!」
矢島が随分と驚いているが似たような参加者がたくさんいるならそれぐらいは予想がつくだろう。
――日給の一千万円はこのデスゲームに生き残ることが出来た方に間違いなくお支払い致します。勿論生き残れなかった場合は死ぬだけなのでお支払い致しません。どうしても日給がほしければ頑張って生き残ってください。
「何が安心だ! 大体一日寝かされてるから一日分じゃ割に合わないだろう!」
――等というツッコミも考えられますが日給というのは二十四時間分の報酬のことであり皆さんが拘束されてから経過した時間はまだ六時間程度です。間違いはございませんのでご注意ください。
「何か読まれてる! 怖い!」
これは純粋に怖いとも言えるがとにかく矢島がデスゲームに巻き込まれたのは間違いなさそうである。
――それではルールをご説明致します。先ず皆様の首、両手首、両足首を確認してください。それぞれ器具が嵌っているはずです。
わけのわからない状況だが矢島はとにかく言われた場所を確認した。確かに何か器具のような物が嵌められている。
「おいおい。まさかこれが爆発するとかじゃないよな?」
矢島の全身から汗が吹き出す。今彼はサバイバルロストの事を思い出していた――




