外伝の八 大魔王の帰還
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三匹の竜が融合しアサドランがパワーアップしたが、結局クレアの超魔法によって消滅した。
あまりにあっさりの決着に黒瀬も目を丸くさせていた。キングは元の姿に戻りクレアに駆け寄って嬉しそうにぐるぐる回っていた。
凄い凄いと称えてるようでもある。
「どうじゃ? これが男女の愛憎を取り入れた勇者カイト様の必殺技なのじゃ!」
クレアが自慢げに言い放つが、聞いた黒瀬は冷めた目で見ていた。
「……愛憎を利用する、とても勇者が使うような魔法とは思えないな」
「フッフッフ。勇者の魔法を使いこなすわしに尊敬しておるな。よいぞもっと敬うが良い!」
「いや、尊敬はしてないぞ」
「弟子が師匠に憧れるのは当然のことじゃからな」
「話を聞け。それに弟子入りした覚えはないぞ」
冷静に反論する黒瀬だがヘルクレアの耳には届いてないようだった。
「よし決めたのじゃ! お主を勇者様とまではいかないまでも、このわしが理想の勇者像に近づける程度には鍛えてやるのじゃ」
しかも何やら随分と熱くなってるようで勝手に黒瀬を勇者に育てると張り切りだした。大魔王の黒瀬としては受け入れがたい話なのである。
「……悪いが俺は勇者には興味がない。じゃあな――」
このままではまずいと感じたのか黒瀬が踵を返し立ち去ろうとするがむんずとクレアに首根っこを捕まれどこかへと引きずられていく。
「……やめろ放せ」
「恥ずかしがるではない。のうキングお主もそうおもうじゃろ?」
「ワンワン!」
愛犬のキングはクレアに抱かれ尻尾をふりふりして完全に懐いてしまっていた。拒む黒瀬とはあまりに対称的であり何とかキングを連れて逃げたい黒瀬だが、クレアのパワーの前ではどうしようも出来ず――結局それからまるで拷問のようなとんでもない修行につきあわされうこととなった。
しかも当の本人には全く悪気がなくキングは可愛がってもらっていたので暫く一緒に過ごすことに不満を覚えることもなかった。
こうして数ヶ月が過ぎ――
「おお大魔王様。いやいや随分と遅いから心配してましたかやっと軌跡を追いかけてこれましたイタタタタタタタタ! 大魔王様何を~~~~~~~~!」
部屋でぐったりとしていた黒瀬の前に突如魔法陣が浮かび上がりそこからメフィストが姿を見せた。
その姿を見るなりぐったりしていた黒瀬は飛び起きメフィストの頭を拳でぐりぐりした。容赦なくぐりぐりした。
「脳みそが飛び出てしまいますぞ!」
「そのまま脳みそごと交換してやる」
「なにか怖いこと言ってません!?」
黒瀬は怒っていた。それも当然だった。征服しやすい世界と言っておきながら中身がとんでもない上クレアという一見幼女の常識はずれな存在に捕まり修行させられてしまっているのだから。
「えっと、それでどうですかな? 征服は、イダダダダダダダッ!」
「……ここは却下だ。今すぐ戻るぞ。キングもいいな?」
「クゥ~ン」
キングは寂しそうだったがご主人様である黒瀬に言われては仕方ないといった様子であった。
クレアにキングも随分懐いていたが、黒瀬としてはさっさとこんな世界とはおさらばしたいところなのである。
「わかりました。とにかく帰りましょう。ですが黒瀬様、何というか随分とパワーアップされてますね。まさか夕食までの時間にここまでとは流石大魔王様です!」
「夕食?」
黒瀬はその言葉に疑問を感じたが、とにかくメフィストをせっつきクレアに挨拶もなく元の世界へと帰還した。
多少は罪悪感もあったようだが、下手に帰るなど言ってはどうなるかわかったものではないのである。
そして元の世界に戻り現実世界では数時間程度しか経っていないことに気がついた。
ちなみに地球と黒瀬が送られた世界の間では時空の歪みが激しくどこをどう通ったかで時間の経過がことなる。
黒瀬の場合は数ヶ月が数時間だったが、上手くやれば異世界の十年が現実世界では十秒程度だったなんてこともありえるのである。
とは言え、黒瀬は無事元の世界に戻ることが出来た。同時にクレアの修行で相当なパワーアップも果たしていたわけであり――そして更に月日は流れ無事修学旅行も終わって日常生活に戻って更に経ったわけだが。
「ハッピーハロウィン大魔王様~~!」
「ハッピーハロウィーン!」
「ハロウィンですぞ大魔王様!」
「ワンワン!」
「うむ。今日はハロウィンというのじゃな! このカボチャのケーキというのは実に美味いのじゃ!」
そう今日はハロウィンであり、学校から戻った黒瀬をメフィストやメイド達が出迎えてくれキングも駆け回り、そして――ケーキに夢中になるクレアの姿もあったのだが。
「……どうして――こうなった」
黒瀬は一人机に突っ伏し頭を抱えるのだった――
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ハッピーハロウィーン!




