外伝の六 黒瀬は食事番?
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「むぅ! うましなのじゃ! こんなくい方があったとは驚きなのじゃ!」
クレアが狩った蛇の唐揚げを食しながら舌鼓をうった。すごく喜ぶ姿は見た目通りの幼さも感じられる。
「……追加だ」
「うむ! お主、戦闘力はまだまだじゃが料理の腕は大したもんなのじゃ!」
ちなみに唐揚げをつくったのは黒瀬だった。大魔王である黒瀬は完璧だ。当然唐揚げ一つとってもこだわりがある。
そのため常に収納魔法で料理に役立つ調理器具や調味料などを入れてあるのだ。そういつでもおあがり『いわせねーよ!』という感じで今日もどこからともなく突っ込みの声が冴えわたるのだった。
「まぁわしも料理ぐらいはこなせるがのう」
「適当にぶつ切りにして味付けもせず煮ようとしていたあれが料理か?」
実は最初はクレアが自慢の料理を披露すると張り切っていたのだがそのあまりにいい加減、もとい野性的な調理法につい口を出してしまった黒瀬なのである。
「ふぅ、お腹一杯なのじゃ」
「そうかよかったな」
倒した蛇はかなりの大きさだったのだが、黒瀬も多少は手を付けたとはいえクレアが殆ど食べ尽くしてしまった。
見た目に反して相当な大食漢である。
「……満足したならそろそろ俺は行くぞ」
「ふむ。どこへ行くのじゃ?」
「…………」
ピタッと黒瀬の側によりちゃっかりついてくる気満々なクレアであった。
「……本当に一緒に来るつもりなのか?」
「お主の料理も美味かったからのう。これからも宜しく、なのじゃ!」
「ワン!」
どうやら目的の一つに黒瀬の料理もあったようだ。つまりこの時点で黒瀬は幼女の料理番扱い決定なのである。
そしてキングはクレアに尻尾を振っていた。すっかりクレアに懐いているようだ。
『見つけたぞヘルクレア!』
その時、二人とキングの頭上から何者かの声が降り注いだ。見ると翼が生え肌が鱗状になった三匹が空中で並んでいた。
顔も蜥蜴に近いが立ち姿は人のようでもある。竜人や人竜といった単語が黒瀬の頭に浮かんだ。
「何じゃお前らはちょっと美味そうじゃな」
「ふ、ふざけるな我らは食い物ではない! そう俺様はいずれこの世界を支配する三魔竜が一人アサドラン!」
「そして俺様は最強の怪力を誇る三魔竜が一人ニッチゲッキ!」
「そして私こそが三魔竜が紅一点ゲック!」
「「「我ら三魔竜なり!」」」
竜たちが声高々に宣言した。人と呼称してるあたりやはり竜人か何かなのだろうと黒瀬は判断した。
「それでその三魔竜とやらが何用じゃ? 団子にされて喰われたいのか?」
「何故団子! 貴様馬鹿にしてるのか!」
ニッチゲッキが怒りを顕にした。ニッチゲッキは他の二匹よりでかいがこれは横幅や腹の膨らみ具合も含めての話だった。
だが怪力自慢というだけあってただの肥満体ではなさそうだ。
「お主、団子にしたら食いごたえありそうじゃのう」
「誰が肉団子だ!」
しかしクレアから見れば結局ただの団子であり食い物なのようだった。そしてニッチゲッキも特に肉と言われてもいないのに自分から口にしてるあたり多少は自覚しているのだろう。
「とにかくヘルクレア。貴様の命は貰うぞ」
「……やれやれ面倒なことだな」
「ワンワン!」
すると黒瀬が頭の頭巾を外しエプロンを脱ぎ前に出た。料理の時はしっかりエプロンをしもっといえば頭に白頭巾も忘れないそれが黒瀬だ。
そしてキングが黒瀬の周りをぐるぐると回っている。楽しそうだ。
「何だこの人間は?」
「フンッ。馬鹿なやつだ。我らの目的はあくまでそこの女だったというのに」
空中からアサドランがどこか見下すようにして言い放った。
しかし気にもとめず黒瀬は首を回し軽くストレッチをした後、体を温め始めた。しして一時間程経ち。
「……準備はバッチリだ。悪いが幼気な少女を襲うような連中に手加減する術は持ち合わせてないのでな。覚悟してもらうぞ」
「かかっ、馬鹿な奴だ。逃げる時間はたっぷりあったというのに」
『そうだね! たっぷり一時間ストレッチしたり体を動かして体を温める程度の余裕はあったわけだからね!』
「全くね。私達が黙ってみていたからって舐めてるのかしら?」
『一時間も黙って見れればそれはね! 気が長いね君たち!』
逃げるどころか三人を全て相手してやろうとしっかり準備を終えた黒瀬。
そしてそれを大人しく見ていた三魔竜、今まさに究極の戦いの火蓋が切られそして幕が落とされるのだった!
『何か色々ごっちゃになってるよ!』
『落ち着けシンキチ』
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