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【コミカライズ】異世界帰りの元勇者ですが、デスゲームに巻き込まれました【本編完結】  作者: 空地 大乃
第九章 様々なデスゲーム編

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外伝の五 カイトを探す少女

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「お主も人としてはそこそこじゃがパパが聞かせてくれた勇者カイト様に比べたらまだまだなのじゃ。じゃが良い線言っておるぞ。今後も精進するがよい」

「……あぁ。そうだな。それじゃあさらばだ」


 助けたというのにむしろがっかりされ若干イラッと来た様子の黒瀬であり、キングを連れて立ち去ろうとしたわけだが。


「ちょっと待つのじゃ」

「ぐべっ!」


 しかし少女に足を捕まれ黒瀬は前のめりに倒れ鼻を打ってしまった。


 起き上がり赤くなった鼻を擦りながら少女に顔を向け問いかける。


「……一体何だ?」

「お主ひまならわしに付き合うのじゃ」

「暇ではない。じゃあな」


 暇人と勘違いされた黒瀬だが彼には手始めにこの世界を支配するという重要任務があるのだ。


 道端で助けた小生意気な少女に構ってる暇などないのである。


「それにお主はとてもカイト様に及ばないと思うがのう。わしの勘が言っておるのじゃ。お主といれば何かがつかめるかも知れぬとのう」

「……お前話を聞いているのか?」

「キュ~ン」


 だが少女は実にマイペースな存在であった。黒瀬の腕を掴みながら自分の要件のみを黒瀬に伝えてくる。


 しかも黒瀬も頑張るが何故か振りほどけ無い。これには愛犬のキングも戸惑いを隠せない様子だった。


「……そもそも俺はそのカイトとなんの関係もない」


 一応は地球の海渡は知っているがそれとは関係ないと黒瀬は考えていた。


「しかし話によると勇者カイトはお主のように黒髪黒目であったと聞くのじゃ」

「……それはこっちでは珍しいのか? あと黒ではない茶目だ」


 黒瀬は意外と細かいことにうるさかった。


「どっちでもいいのじゃ。そして珍しいのじゃ。片方ならともかく黒髪黒目両方となると十人に一人ぐらいしかいないのじゃ」

「ほう。なるほど」

「ワン!」


 少女に教えられ黒瀬は納得したように頷きキングも陽気に吠えた。なるほど確かにこの世界では珍しそうだ。


『いや十人に一人って全体で言えば結構な確率で出会えるぐらいだよね! そこまで珍しいものでもないよね!』


「ムッ、今の声がカイトなのかのう!」

「違うと思うぞ」

「アンッ」

「なんと紛らわしいのじゃ。ぶっ飛ばすとするかのう」

『何この子怖い!』

 

 ツッコミの声が震えていた。どうやら中々勇ましい女の子なようだ。


「それとお主。わしはおまえではないヘルクレアという名前があるのじゃ!」

「……ヘルクレア。クレアでいいのか?」

「うむ! それで良いのじゃ!」


 黒瀬が適当に愛称で呼んでみるとヘルクレアもといクレアが喜んだ。


 どうやら他の人間と知り合えたことが純粋に嬉しいようだ。


 最初は生意気に思えたが笑顔から子どもらしさも感じた黒瀬である。


「とにかくお主についていくのじゃ」

「……勝手にしろ」


 面倒になったのか黒瀬がクレアの同行を許した。こうして謎の少女と知り合った黒瀬の異世界旅が本格的に始まるわけだが、黒瀬には不安もあった。


 このような年端もいかない少女を連れて行って足手まといにはならないものか、と――


「キシャァアアァアアァアアアア!」


 その時だった巨大な双頭のヘビが木々の隙間から飛び出してきて二人に襲いかかってきた。


「チッ、隠れろクレア――」

「食料なのじゃーーーーーー!」


 危険を感じた黒瀬がクレアに呼びかけるが、いち早くクレアが飛び上がり双頭のヘビを殴り地面に叩きつけた。


 途端に地面が爆ぜ巨大なヘビは窪んだ地面の中で息を引き取った。あまりにもあっけない幕切れであった。


「……クレア、戦えたのか?」

「戦えるのじゃ」

「……なら何で悲鳴を上げた?」

「勇者カイト様が釣れると思ったのじゃ!」


 クレアを助けたことに一抹の不安を覚えた黒瀬なのであった――

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