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【コミカライズ】異世界帰りの元勇者ですが、デスゲームに巻き込まれました【本編完結】  作者: 空地 大乃
第九章 様々なデスゲーム編

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外伝その三 異世界人と初遭遇

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「ワンワン!」


 キングが黒瀬の手の中で吠えていた。突然の爆発により黒瀬の立っていた場所は大きな窪みが出来上がりその中心で黒瀬は横倒しになっていた。


「……何だここは」


 目を開けた黒瀬が呟いた。肌の所々が焦げているが抱きしめられたキングは無傷だった。咄嗟に黒瀬が防御魔法を展開させたのである。


 自分の身より愛犬を守るその姿勢、まさに魔王の鏡であった。


『魔王のくせに優しすぎだろう! 感動した!』

「何だ今の声は?」

「クゥ~ン」


 どこからともなく聞こえてきた声に怪訝に思いながら黒瀬が立ち上がる。キングは黒瀬が無事だった事に喜び主の顔をペロペロしていた。


「あんれまぁ、なんだかデカい音が聞こえたから来てみれば、あんたぁこんなところで何してるんだっぺ?」


 ふと森の中から一人のおっさんが姿を見せた。麦わら帽子を被っていて鍬を担いだ男だった。


「――ちょっと支配に、いや旅の途中だ」


 黒瀬が答える。一瞬素直に目的を言うところだったが冷静に訂正した。流石出来る魔王である。


『出来る魔王なら先ず口にしないで隠し通すだろう!』

「あぁよそ者だっぺか。それでボンバウェーイを踏んじまっただな」

「……ボンバウェーイ?」

「ク~ン?」


 おっさんが口にした名称に黒瀬が小首を傾げた。聞き慣れない名前だからだろう。キングも疑問なのは一緒なようだ。そしてまた謎の声が聞こえたなと心で呟いた。

 

「このあたりの地面によう潜ってる魔物だべ」

「……こんなのがあっちこっちに埋まってるのか?」

「んだ。それでも昔に比べたらだいぶマシになったべ。勇者様が世界を救ってくれたおかげで随分と魔物も弱体化したからなぁ」

「……あれでか?」


 一応黒瀬もそこまでのダメージをもらってないが、支配するに手頃な世界と言うには無理があるのでは? と思わなくもない。


「昔のボンバウェーイなら半島ぐらいは軽く消しとだべ」

「……マジ?」


 黒瀬は結構焦った。しかも黒瀬の思う半島とこの世界の半島は規模が違う。北海道の十個や二十個程度は軽くあるのだ。


「……その勇者というのは強いのか?」

「それはもうとんでもなかったべぇ。勇者カイト様がいなければこの世界はとっくに終わってたべ」

「――カイト、だと?」


 おっさんの話を耳にし黒瀬の脳裏にあのデスゲームで生き残り存在感を披露した男の顔が浮かんだ。


 そう黒瀬が許せないと思ったあの男がまさか!


「……似た名前を知っている。偶然というものはあるものだ」


 とは、ならなかった。黒瀬は意外と気づかないタイプなのだ。


「そうなんだべか? 奇遇だべ~」

『いやいやおかしいだろう! 何で気づかないの!? 大体デスゲームを余裕で潰した時点でとんでもないんだし元勇者だと思えば納得じゃん! 右目が疼くとかいい出したら決定的だよ!』

『落ち着けシンキチそもそも右目がどうとか言ってない』

「……幻聴か」


 なんだかちょいちょい声が聞こえてくるが黒瀬はそれについて考えるのをやめた。


「とにかく気をつけるッペ」

「……わかった」


 そしておっさんが立ち去る。


「フンッ!」

と、思えば途中で鍬を振り下ろし地面から奇妙な顔の付いた化物を掘り出した。


「これがボンバウェーイだっぺ。なれれば子どもでも掘り起こせるっぺ。だけんどよそ者は気をつけるっペ」

「…………もしかしてあんた強いのか?」

「おらが? あっはっはだっぺぇ。おらはどこにでもいるようなたかだかレベル5の農民だッペぇ。んだべなぁ」


 おっさんは奇妙な顔のついた魔物を手に去っていった。何の変哲も無いレベル5のおっさんにしては強くないか? と黒瀬は思ったりもしたがメフィストが手頃な世界と言ったのだからこんなものなのか? と考え彼は再び移動を再開させた――

おかげさまで本作のコミック1巻の重版が決まりました!嬉しい!

これも偏に皆様の応援あってこそありがとうございます!

そして本作のコミック2巻が7月27日発売予定ですのでどうぞ宜しくお願い致します!

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