番外編④ その五 ゾンビが溢れなかった世界
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「……これはこれで結構な罰だな」
海渡が見せた仮想画面を眺めつつ、虎島が感想を述べた。
「ま、でも本人ゾンビ好きなんだろう? だったらある意味幸せじゃねぇの?」
「えっと、そう、なのかな?」
杉崎が笑みを浮かべつつ口にし花咲は微妙そうな顔を見せていた。
画面の中では木崎がゾンビに追いかけられていた。武器も一切持たずナイフだけという状況。しかも難易度はスーパーデンジャラス。元々のゲームにはなく海渡が勝手に設定した鬼畜モードだった。
「えっと、少し気の毒な気も……」
「う~ん。でもほら、クリアーさえすれば戻れるから」
委員長は心優しい。相手がゾンビだらけにしようとした元凶であっても同情してしまうのだ。
ただ海渡のクリアーすれば戻れるの一言で納得してくれたようでもある。
もっともナイフ一本しか使えないこの状況でしかも死ねばスタート地点からやりなおしという状況でいつクリアー出来るかは神のみぞ知るといったところだが。
「お姉さんもこれなら問題ないですよね?」
海渡が叶に聞いた。最初に注意を受けていた暴力は一切海渡は行使してなかった。やったことと言えば魔法でゲーム世界に転移させた、ただそれだけである。
「えっと――やってることが常識外すぎるけど、直接暴力振ったわけでもないし何度でも生き返るなら殺人でもないし、魔法は駄目って法律もないし、何より本人が好きなゲームをやってるってだけなら……問題、ないかしらね?」
「そうですよ! 勇者様に問題なんてあるわけないのです。もしそれで勇者様に危害を加えるなら女神の権限で世界を消滅させます!」
「女神様怖いこといいだした! いやそれより警官それでいいの! いや、確かに法的に何とかできる話じゃないけどさ!」
『シンキチ細かいことを気にしたら負けだぞ』
「え~」
結局ダマルクに言われ納得するシンキチであった。
「そもそも女神様は今の体じゃポンコツだし何も出来ないだろう」
「ひどい!」
虎島に指摘され半泣きになるサマヨ。しかし事実でもある。
「もう、わかったからそのゲーム見せるの止めなさいよ!」
電柱の陰から鈴木が叫んだ。ホラーゲームもとことん苦手なようで見るのも嫌なようだ。
「鈴ちゃん相変わらずだね」
「うぅ、本当怖いのは嫌なのよ」
叶が苦笑いだ。そして鈴木はガタガタ震えている。
「デスゲームとか散々巻き込まれてるだろうに……」
杉崎が目を細めた。しかしデスゲームの多くは現実の人間がやっていたので問題なかった。鈴木はオカルトやホラー系でなければなんとかなるのだ。
「とにかく色々助かった~鈴ちゃんいいお友達を持ったね」
「悪いとは思わないけど無茶苦茶だと思ってるわよ。委員長は可愛いけどね!」
「それは同意するわ! はぁ尊い委員長尊い」
鈴木の意見に同意する光であった。
こうして海渡やカイコの活躍もあってソンビパニックもその日の内に解決しあっという間に収束した。
一週間も経てばなんかそんなこともあったよねぇや、ゾンビ今思えば全てが懐かしい、などと言われるぐらいには皆の思い出の彼方に消えていったのである。
『いや風化するの早すぎない!? ゾンビだよ! もうちょっと何とかあるよね!』
「……出番なかった」
シンキチの突っ込みが響き渡る中、一人空を眺めながら呟く少年黒瀬の姿があった。なんだかんだで彼は今回あまり活躍はしておらず。
「おいおいパーフェクトかよすげぇな黒瀬」
「ふっ……」
だが、皆で遊びに行ったアミューズメントパークでガンシューティングをパーフェクトクリアーしご満悦な様子でもあった。ちなみにゾンビゲーでもあり木崎を撃ってボーナスもゲットしていた。
その後――叶からの情報を受け木崎の家に警察の調査が入った。
だが儀式に使われた道具も無く裏サイトで購入した履歴も全て消え去っていたようであり結局これといった証拠は見つけられなかったのだった――
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