番外編④ その三 久しぶりのあの子
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「たくよぉ。何で今更ゾンビなんだろうな?」
虎島が鬱陶しそうにゾンビを盾で弾き飛ばしながら愚痴を言った。数メートル離れた場所では杉崎がゾンビ相手にライフルで応戦している。
「さぁな。だけど海渡が何とかしてくれるんじゃないか? 何か命は奪わないでおいてって話だったし」
そう。突如町にゾンビが現れたが、二人は前もって海渡からメッセージを貰っていた。ゾンビは後で何とかするから命は奪わず適当にあしらっておいてという物だ。
故に杉崎は異能でゾンビサバイバル系のゲームを起動させ銃を具現化させて相手しているが、使用している弾丸は殺傷力の低いゴム弾である。
「ちょ、ちょっとあんたら何さっきからのほほんとしてるのよ! ゾンビよ! ゾンビが出たのよ!」
電柱の影でビクビクしている鈴木が二人に怒鳴った。鈴木はホラー系が苦手であり当然ゾンビなんて以ての外なのだ。
「てか何で鈴木もここに?」
「いつもどおり委員長と遊びに来たんだと」
「あぁそれで――」
杉崎から説明され、虎島が横目で確認した先では彼の想い人である景がゾンビを相手に魔法をぶっ放していた。
なお相変わらずの三人も一緒である。
「みんな殺しちゃ駄目だからね」
「むぅ。しかしゾンビを殺すなとは難儀な」
景にそう言われるもマックスは非常にやりにくそうである。
「もぅ男なら頭ぐらい爆散してよくない?」
「駄目に決まってるだろう」
「虎島うっさい! あんたには聞いてないし!」
フォワードが剣に炎を灯して物騒なことを口にすると虎島が目を細めて彼女を諌めた。
だがフォワードは虎島の言うことなど聞かない。いや、そもそも男の話に耳を貸さない。
「あ、あの、殺すのは駄目です!」
委員長はやはりいい子だ。ゾンビ相手でも殺さず済むならそれにこしたことはない。故に委員長はゾンビの心を取り戻そうとこの状況にも関わらず心を込めて料理しゾンビに振る舞った。
その結果ゾンビの心は壊れた。
「見てくださいゾンビも料理で大人しく! きっと心が通じたんですよ!」
「……キュ~――」
ミラクが鍋を見ながら微妙な顔を見せた。ちなみにゾンビは鍋の中身を積極的に食べたわけではなく、鍋の中身が勝手に蠢きまわりゾンビの口に飛び込んでいったのだ。
「あ、ミラクちゃんも食べる? 今よそってあげるね」
「キュッ!? キュ~キュキュッキュキュキューーーー!」
ミラクが大慌ててバウンドし虎島の頭の上に乗りガクガクブルブルと震えだした。
「委員長、その、何だ。ミラクはゾンビを見たからかちょっと食欲がわかないみたいでな」
「え? そうなんだ……うんそうだよね。ゾンビだもんね。あ、でもキャラットちゃんさっきお腹すいたってあれ?」
委員長がキョロキョロと姿を探す。だがキャラットは既に光の速さで逃げ出していた。その後は遠くで消滅しない程度の浄化に務めたという。
「フフフッ、ゾンビの溢れた世界まさに僕の出番! そう! この鳳凰い――」
「シンキチ。もうこっちは片付いたぞ」
「ズコ~~~~~~~!」
『昭和なコケ方だなシンキチ』
格好を付けて名乗ろうとしたシンキチだがそうは問屋がおろさなかった。そしてとっくに美狩がゾンビを死なない程度に打破しており、シンキチはなんとも大げさで懐かしい感じのするコケ芸を見せた。
「それにしてこれまでずっとデスゲームだったからゾンビってのも逆に新鮮に感じるもんだな」
「だけど虎島。思ったんだがゾンビ系も壮大なデスゲームみたいなもんじゃないか?」
「あ~確かにわかる! 噛まれたらゾンビになるし、生き残りを掛けてるって意味だとデスゲームみたいなものだよね! そして僕の名前は鳳凰いn」
「そんなどうでもいい名前よりこいつらいつまで足止めしておけばいいのよ!」
どさくさにまぎれて異名を名乗ろうとするシンキチだがやっぱり途中で阻まれた上、扱いが雑だ。
「どうでもいいとか酷くない!」
『泣くなシンキチ』
ダマルクの言うように確かにシンキチは半泣きになっていた。一方で文句を言っているのは魔法少女の光である。
「全く本当なら今日は委員長とのデートでウフフ……」
「わ、私もいるし、て、だから何とかするなら海渡もさっさときなさいよもう!」
鈴木が叫んだ。ちなみに鈴木の周りにもゾンビは集まってきてるが鈴木がカードで呼び出した骸骨騎士に返り討ちにされていた。
「お前、ゾンビ怖いのに骨は大丈夫なのか?」
「これは私がカードで出したキャラクターなんだから怖いわけ無いでしょう!」
鈴木が声を張り上げ答えた。どうやら自分の力で出す分には平気らしい。
「やぁおまたせ。さぁゾンビはこの世界から解雇しちゃうぞ♪」
するといよいよ海渡、いや魔法少女カイコが参上した。ちゃっかり決めポーズつきでだ。
「「ちょっと待てーーーーーー!」」
虎島と杉崎が叫んだ。海渡が魔法少女になって現れたらそうもなるだろう。
「お兄ちゃん本当に魔法少女になれるんだねぇ」
そして後からオニイサマヨに跨った菜乃華がやってきた。
「いや何で木刀に跨ってるの! 普通箒じゃないの!」
『つっこむなぁ』
「私も最初そうおもったけど何か行けそうと思ったらいけたの」
どうやら菜乃華はわりと直感で動くタイプらしい。
「菜乃華が見てみたいって言うから今日は魔法少女になってみました」
「いやなってみましたと言われてもどう反応すればいいんだ?」
カイコになった海渡の回答に虎島が顔を引くつかせる。
「はぁはあ、カイコちゃんきゃわわ~!」
「光の目が何だかヤバいぞ」
言って杉崎がたじろぐ。光が一番好きなのは委員長であることに変わらないが、実は魔法少女になったカイコもどストライクらしいのだ。
「まぁとにかく処理するね。えっと、ゾンビデス・クサリマス・シンデマス――アンチアンデッド!」
「詠唱適当すぎない!?」
カイコが魔法を行使。しかし詠唱に関してシンキチのツッコミが炸裂した! なお効果は変わらない。
「ま、そもそもで言えば詠唱なんていらないんだけどね。解雇しちゃうぞ♪」
「辞めてこのご時世転職なんて厳しい!」
「きゃーカードローンが残ってるのに~!」
「嫁にまたゴミを見るような目で見られる!」
カイコの決め台詞で今までゾンビだった人たちが正気に戻り別な意味で顔色が青くなった。
なにはともあれカイコの登場でゾンビが次々と元の姿に戻っていくのだった――
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