番外編④ その二 ゾンビが伊勢家にやってきた
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時は少し遡り、伊勢家では朝の朝食タイムが始まっていた。
「もう菜乃華。パジャマぐらい着替えたら?」
「えぇ~だって折角の日曜だしのんびりしたいよ~」
母の伊勢 真夜に注意されると菜乃華は唇を尖らせた。平日なら制服に着替えているところだが日曜であればだらけたいという気持ちもわかるものだろう。
「海渡は何か予定あるのか?」
「うん。皆と遊びにね」
食卓に座っている父、伊勢 海老尾が尋ね海渡が答えた。海渡は杉崎や虎島といういつもの面々と遊びに行く予定だ。ちなみに黒崎も誘ったが彼は予定があるようだ。
「あぁ、そういえばシンキチも誘ってもらったって言ってたよ」
「そうだね。杉崎とよくネトゲやってるみたいでその繋がりで一緒に遊ぶことにね」
「ネトゲってファイブルだよね~」
「そうそう」
ファイブル――正式名称はファイナルブルークエスト。世界初のフルダイブMMORPGとして鳴り物入りで発売された大作、の予定だったが正式サービス初日からAIが暴走した不遇なゲームである。
それも海渡の手で解決したがだからといって問題はなかったことにされず、結局開発元はゲームの無料開放及び向こう五十年間は何があってもサービスを継続させるという約束でなんとか世間から許してもらえた形だ。
ちなみに現在はAIのニエクスも正常起動しておりユーザーフレンドリーなサービス提供を目指し一生懸命稼働中である。ユーザー第一主義な為か開発スタッフには鬼のようだと恐れられてもいるようだが、結果的に他のゲームの開発にも口出すようになり問題が減ったのはユーザーからすれば喜ばしいことだろう。
それはそれとして、菜乃華が食パンをぱくつきながら海渡にお願いする。
「いいなお兄ちゃん。そうだ私も一緒にいい?」
「何だ菜乃華。暇なのか?」
「うん。今日は真弓ちゃん、嫌々ながらも田中と会うらしいし、美狩ちゃんは教子先生とショッピングだしね~」
「なるほど――」
海渡が頷く。同時に田中は菜乃華からも呼び捨てにされてるんだななんて思ったりもした。
「うん? ちょっと待て、何か妙な事が起きてるようだぞ」
ふと、海老尾の顔色が変わった。食卓の上にはタブレット端末が置かれていた。伊勢家は新聞は取っておらず海老尾は朝のニュースなどネットの記事で見るタイプだった。
「テレビテレビ」
そして海老尾がリモコンを取りテレビの電源を付けた。画面では緊急ニュース速報が流れていてキャスターが真剣な顔でニュースを読み上げている。
『大変なことが起こりました。各地にゾンビが現れ人々を襲って回っております。被害は全国に拡大しており今現在局内でもゾンビが暴れております。緊迫した状況が続いておりますが大量のゾンビはバイトの田中一人を追いかけ続けているため助かっております』
「なんてことだ! 誰かは知らないが田中は大丈夫なんだろうか?」
「田中は大丈夫だよ」
「うんうん田中はしぶといからきっと大丈夫だよね。あ、でも真弓ちゃんが心配ちょっとメッセージ送ってみよう」
「あらあら。晴れのちゾンビだなんて。お買い物に行っても大丈夫かしら?」
「いやいや! ゾンビが溢れているというのにちょっとのんき過ぎない!?」
海老尾が一人驚いていた。伊勢家の中ではわりと常識人なようである。
するとピンポーンと玄関のチャイムがなった。
「あらあらお客さんかしら?」
パタパタと真夜が玄関に向かった。
「待てママ! 外は危険が危ないんだ!」
「パパ混乱してるね」
「忘れがちだけどこれが普通の反応なんだよなぁ」
海渡がしみじみいった。確かにゾンビがリアルで出てきたとなればパニックにぐらいなるだろう。
「あら町内会長さん。どうしましたか? そんなに青い顔して?」
「粥、ウマ――」
海渡も玄関に向かったが、真夜の前に青い顔した町内会長が立っていた。どうやらお粥を食べてる状態でゾンビ化したようで口からドロっとした粥が零れ落ちている。
「ウ、ウォォォォオォオォ!」
「ま、ママ!」
「アンチアンデッド」
ゾンビ状態の町内会長が真夜に襲いかかったが冷静に海渡が魔法を行使。それはアンデッド化解除の魔法だった。
「オ――お粥美味い!」
「は?」
「あらあら会長さん。お粥が口から零れ落ちてますよ」
会長の顔色はすっかりもとに戻っていた。海老尾が一人目を丸くさせる中、後にのこされたのは粥が口から漏れたお茶目な町内会長だけなのだった――
新連載始めました!
「ハズレスキル【合気】を授かり冒険者を諦めた筈がいつのまに最強の【道先案内人】として知れ渡っていた~極めた【合気】は世界の概念を覆しあらゆるフラグを受け流す~」
がタイトルとなります。
主人公が合気で無双し活躍するお話です!海渡の活躍やシンキチのツッコミを見守ってくれて頂けた方ならきっと楽しんで頂けると思います!
『いや俺関係なくない!?そもそも合気どんだけ~~~~!』
『シンキチうるさい』
というわけで新連載の合気を宜しくお願い致します!
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