番外編② その七 カイト火炙りにされる!?
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そして本作のコミック1巻がいよいよ明日(12月27日)発売となります!
勇者カイトは王に捕らえられた。騎士に連行され処刑台に設置された十字架の前に立たされる。そして頑丈そうな鎖で縛り付けられた。
「ハッハッハ無様だな勇者カイトよ」
王が勝ち誇ったように笑った。一方カイトは無表情を貫き通している。
「どうした? 悔しくて何も言えぬか?」
「……別に――」
勇者はなんとも素っ気ない態度を見せた。その様子にぐぎぎと王が歯ぎしりしてみせた。
「ふ、ふん。強がっても無駄だ。余には判るぞ。心の中でお前はきっと恐れ慄いている筈だ。だが勇者よ私も鬼ではない。貴様がこれまでの悪行を反省しこの国に残り余の為に尽くすというのであれば解放してやってもいいぞ。今なら福利厚生もしっかりするし週休二日ぐらいやってもいい気がするし何なら有給も年間二十日ぐらいなら与えてやってもいいような気もしないでもないし賞与だって年二回やらんこともないような気もしないでもなく毎年慰安旅行で余のダンスが見れるおまけ付きだ」
『何か色々言ってるけどダンス以外ふんわりしすぎ! てか異世界意外としっかりしてる!?』
一見制度などしっかりしてそうな異世界だが、これらを広めたのは何を隠そう勇者カイトである。もっとも国王は私が考えたと他国にドヤ顔で語っているわけだが。
『国王、部下の手柄を横取りするブラック上司みたいなもんじゃん!』
「どうだ勇者よ。うちはアットホームで働きやすい職場だよ。パワハラもないし正社員登用制度もある」
「そうか断る」
「なぜだ!」
「この状況でパワハラがないと言われても説得力がない」
『確かに!』
現在進行系でパワハラを受けてるようなものなのでカイトの反応は至極まっとうであった。
「くっ、どうしても国に残るつもりはないというのか?」
「そうだ。逆に俺から聞くがこの馬鹿げた真似をやめる気はないのか?」
「ない! もういい勇者! 貴様はもう終わりだ! さぁ火をつけろ! 火炙りに処すのだ!」
「ほ、本気なのですか陛下?」
命令された兵士には戸惑いが見られた。王に言われここまで来たがやはり勇者を手に掛けるのは気がひけるようだ。
「ふん。当然だろう。陛下こちらは準備が出来ておりますぞ」
「おお! 待っていたぞパワーハーラ・ブラック・ハラグー・ロイ将軍!」
『長い上に名前からして怪しい!』
そんないかにも怪しく胡散臭い将軍が勇者カイトの前に立った。
「ハッハッハ。この世を騒がせた勇者カイトもこうなったらもう終わりだな。だが喜べ。お前の代わりにこの私が姫の処女を貰い受け幸せにしてやる」
「うわぁ~――」
ロイ将軍の言動に、こいつマジか? と軽く引いてみせるカイトである。
「フフフッ。今回の作戦を私に授けてくれたのはこのロイ将軍だ。まさかここまでまんまと引っかかるとは思わなかったがな」
「本気でそう思ってるのか?」
「当然だ。ま、強がりも今のうちだ。さぁ魔法隊前に火魔法で盛大に火炙りだ!」
そして集まってきた魔法使いによって四方八方から火球が飛んでいきカイトを縛り付けていた十字架が燃え上がった。カイトも炎に包まれる。
「アッハッハ! ザマァ見ろだ勇者カイトよ。何が勇者だ。貴様のせいでこの私の活躍の場が減ったのだ。魔王など本来なら私だけで倒せたのだ! 調子に乗りおって馬鹿め! そのバツだ黒焦げになって死んでしまえ!」
「いや、あんたじゃ魔王討伐は無理だな」
「――は?」
燃え盛る炎の中からカイトの声がした。かと思えば突風が起こり炎が消え、中から元気ピンピンのカイトが姿を見せた。
「な、なな、何だとーーーーーー!」
「ば、馬鹿ななぜ平気なのだ!」
「いや、寧ろ逆に質問だが、なぜこれで俺を倒せると思った?」
「「……はい?」」
火炙りになっても火傷一つ負ってないカイトが逆に質問した。王も将軍も怪訝そうな顔を見せる。
「――世界中の国が束になっても全く叶わなかった魔王を俺は倒した。一度は世界を滅ぼしかけた魔王をだ。その俺が火炙りごときで死ぬか馬鹿」
「な!?」
カイトは国王と将軍めがけ吐き捨てるように言った。国王も将軍も絶句している。
「くっ、だとしても貴様の力は封印した筈だ」
「また逆に聞くが、魔王を倒した俺を封印できる程の魔法があるならなぜ魔王やその配下に使わなかった?」
「「え?」」
カイトの問いかけに王も将軍も目を丸くさせた。互いに顔を見合わせる。その後後ろで控えていたこの国で八番目に凄いという魔術師に答えろと目で訴えた。
「いやいや! 封印といっても魔物相手ならともかく魔王とか無理無理! 四天王最弱にだって通じませんよ!」
「だったらなんで勇者にこれを使おうといい出したんだ馬鹿が!」
「お言葉を返すようですがそれを言ったのはロイ将軍です!」
「ぐっ!」
魔術師がやけくそ気味に答えた。ロイ将軍の顔が歪む。
「そ、そもそも魔王やその配下相手だと封印の術式に入らせるのが大変だろうが!」
「そんなことはないと思うが? 魔王なんて長編漫画のセットを敢えて途中の一冊だけ抜いた状態で送っておき、魔法陣の上に残りの漫画置いとけば勝手に引っかかる程度でしかない」
『魔王様チョロすぎませんかね!』
あまりに不甲斐ないので逆に不憫に感じてしまう。それが魔王だ。しかしあくまでカイトからすればであり国王や将軍が退治に行ったところで魔王の鼻息一つでこの世から消滅してしまうことだろう。
ただしチョロい。
『もうやめたげて!』
「全く呆れたものだな。本気でこれで俺を倒せると思ってたとは」
残念なものを見るような目を二人に向けるカイトであった。
「くっ、つまり貴様最初から封印など効いてなかったというにわざと捕まったというのか! 火炙りまで受けて! 何だ貴様ドMか!」
カイトに向けて指をビシッと突きつける国王だが、途端にカイトの冷え切った視線が注がれた。国王の顔から血の気が失せる。
「チッ、もういい! あぁそうだ。私だってこの作戦が絶対に成功するとは思ってなかったさ。だから万が一の為にもう一つ手を残しておいたのだ!」
国王を一瞥し舌打ちした後、ロイがカイトに向けて言い放った。バサッとロイ将軍がマントを翻し腰に帯びられた剣の柄に手を掛ける。
「な! ロイ! 貴様それは地下に封印されていた魔剣ダラク!」
国王が叫ぶ。ロイ将軍がカイトに目を向け不敵な笑みを浮かべた。剣からは禍々しいオーラが噴出している。
「クククッ、これが私の切り札だ。この魔剣の力さえあれば私はあの魔王にも匹敵した力が扱える!」
「いやだったら最初からそれつかって魔王討伐に向かえよ」
もっともな意見なのだった。
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