番外編② その一 異世界での海渡
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これは海渡が勇者として異世界で活躍していた頃の話。
「神様と修行?」
「そうですよ勇者様。この異世界で生き残るためには絶対に修行が必要なのです!」
外で野宿していた海渡に突如女神サマヨの念が直接脳内に飛び込んできた。丁度夕食を取り終えた後の話だ。
ちなみに食材はグレートヘルワイバーンの肉。本来地獄の最下層にしか存在しないとされる漆黒のワイバーンであり日本列島程度なら鼻息一つで軽く太陽まで吹き飛ばす程の力がある。
「う~ん確かに安請け合いしちゃったかなと思ったけど。ボンバウェーイとかいた時点で」
「そうよねそうよね!」
何故かサマヨが嬉しそうだ。そもそもそこまで危険な異世界とは海渡は思ってなかったわけだが。ボンバウェーイにしても海渡の知り合いの自衛隊員から地雷の対処法を聞いていなかったらヤバかったことだろう。
「というわけで今日はこれから皆さんに神様の修行を受けてもらいます」
「俺しかいないよね?」
結局一旦天界に行くことにした海渡。サマヨが何だかこれからデスゲームでも始まりそうなノリで話してきたが海渡一人なので皆様ではない。
「ところで修行って女神様がつけてくれるの?」
「私が? ハハハッまさか~。私は女神の序列でも底辺で圧倒的最下位なんですよ。そんな私に勇者様を育てる力があるわけないじゃないですか~」
「言ってて虚しくならない?」
あまりに得意げに自虐的な答えを見せる女神を見て、逆に心配になる海渡であった。
「いいんです~その分私は見た目で得してるからいいんです~」
口を尖らせて言い返してくる女神サマヨ。しかし得していると言う割にとんでもない世界を押し付けられてるわけだが。
そうこうしていると女神様の後ろから屈強な男が近づいてきた。
「さ、それではご紹介します! 今回快く勇者様に修行をつけるのを引き受けてくれた武神ヘラス様です!」
「お前が勇者候補か? ふむ。随分となよっとしてるものだな」
女神に紹介されヘラスという武神が姿を見せた。ジロリと海渡を値踏みするように見ながら期待はずれみたいな顔をする。
体型についていうだけあって確かにヘラスは筋肉ムキムキの神様である。
「ま、この俺に任せておけば大丈夫だ。大船に乗った気でいるといい」
「は、はい宜しくお願いします!」
女神サマヨに頼りにされヘラスはまんざらでもなさそうである。
こうしてヘラスの特訓を受けることとなった海渡であるが。
「ふふっ、ここでいいところを見せればサマヨの俺を見る目も――あっはっは!」
「う~ん」
だらしない顔を見せるヘラス。明らかに下心ありきなようだ。もっとも海渡への修行を条件に女神様に無理やり要求するようなこともしてないようで、どちらかといえばまどろっこしい手にも思えた。
「さて早速お前に修行を付けてやる、といいたいところだが実力を知っておきたい。とりあえず剣の腕でも見てやるか」
そしてヘラスが二本の剣を現出させた。それを見ても海渡が驚くことはない。次元に干渉して収納程度する魔法程度は既に海渡にも出来ることだ。神様ならそれぐらい余裕だろう。
そしてヘラスは剣の一本を海渡の足下に寄せる。
「さぁまずはそれを持って構えてみろ」
「はい」
返事をし地面に置かれた剣に手をかける。その姿を見ながらヘラスがニヤリと不敵な笑みをこぼした。
「これでいいですか」
「は?」
そして海渡は片手で剣を持ち上げそのまま構えに移行した。ヘラスが意外そうな顔を見せる。
「……その、なんだ。無理してないか?」
「? いえ別に」
ヘラスが難しい顔を見せる。実は海渡に持たせた剣は北海道より重い。それほどまでの剣を軽々持ってしまう海渡を怪訝に思ったのだろう。
「……ま、まぁいい。なら好きなだけ打ち込んでくればいい。いいか? 本気で来い。遠慮はいらん。神である俺様に掛かれば貴様ら矮小な人間の剣など目をつむってても躱せるのだからな!」
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