番外編 その九 安全? 安心? なお化け屋敷
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「なんというかさ。そういうのもうやるだけ無駄だとは思うんだけどねぇ。で、結局あんたら何?」
海渡の周囲にはお化けやら殺人鬼やら落ち武者やら包帯まみれやらヒャッハーやらの格好をした集団が倒れていた。お化け屋敷らしく全員どこかホラー色が強いが持ってる武器は本物だった。
『ヒャッハーはホラーじゃないだろう!』
「怖いよ怖いよ~! お化け怖いヒャッハーこわい!」
『姐御を守るぜヒャッハー!』
ちなみに少し離れた場所では鈴木が怖い怖い口にしながらヒャッハーカード(UR)の具現化でヒャッハーにヒャッハーをぶつけていた。
モヒカン同士の闘いははたから見れば恐ろしく近づきがたい物があろうだろう。
『意味違う! その恐ろしいは意味違う! 後ヒャッハーカード無駄にレアリティ高すぎぃいぃいい!』
「怖い怖い怖いぃいい! ツッコミカード(C)で反撃よ怖いぃいいぃい!」
『これツッコミカード効果だったの!? てかツッコミのレアリティ低!』
こうして鈴木は怖い怖いいいながら見事に世間が大体怖がって近寄ろうとしないヒャッハーを倒していた。
「海渡くん。皆疲れてるのかなと思って料理を作ってみたら倒れちゃった……」
そんな中、委員長が海渡の前にやってきてションボリしていた。委員長がさっきまでいた場所にはアンデットの如く紫色に変色したオバケたちが倒れていた。
「委員長本当強くなったね。これからは委員長がナンバーワンだ」
「え! 何が!?」
「こらぁ! 委員長とベタベタするなぁ~!」
魔法少女として向かってくる連中を倒しながら光が叫んだ。海渡は特にイチャイチャしていたつもりはないんだがなぁと頬を掻く。委員長の顔は紅いが。
「委員長怖いよ怖いよぉ!」
「よしよし」
鈴木が戻ってきて委員長に抱きついた。委員長が鈴木の頭をなでてあげていて中々絵になるなと海渡は思った。
そして普段強気な鈴木もおばけとなると恐怖するあたり、やはり彼女もか弱い少女の一人なのだなと死屍累々のヒャッハー達を見ながら思う海渡だった。
「いやいやいや! こんなにヒャッハー狩り出来るか弱い少女なんてありえないし鳳極天氷!」
「「「「「「ギャァアァアアァアアァアアア!」」」」」」
突っ込みながら現れたシンキチは器用にも同時に必殺技を放った。いわゆるツッコミ必殺技だ。
「ツッコミ必殺技って何! せっかく久しぶりに格好良く登場できたのにそれなくない!?」
それでもツッコミを忘れないシンキチ。そもそも忘れてはいけない彼の必殺技はツッコミだ。
「だから嫌だよそんな必殺技!」
「はぁでもこのお化け屋敷どうなってるの? 菜乃華ちゃんと美狩ちゃんのおかげで助かったけどね」
「え? 僕は!?」
シンキチの後ろから真弓もついてきていた。どうやら彼らも途中でこの連中に襲われたようだが、大体美狩とオニイサマヨ(木刀版)を持った菜乃華によって倒されたため事なきを得たのだ。
「いや、だから僕」
「だってシンキチは殆どツッコミ役だったし」
「えぇ!」
『だから言ったじゃん』
結局のところシンキチは倒した数よりツッコミの数のほうが多かったのである。
「そ、それでもここぞという時にはそのツッコミじゃなくて、えと、ツッコミてぇよ? だったかな? それが役立ったと思うぞ」
「鳳極天氷だよ! もうさっぱりあってないよ! てしかあってないよ!」
「美狩ちゃんってば本当優しいよねぇ」
菜乃華と真弓はシンキチに気を使う美狩が可愛く思えてたまらないようで、キャッキャウフフ状態だ。海渡はそれを微笑ましいなと思ってみていた。相手がシンキチだったら無限地獄に叩き落としていただろうが。
「怖いよ! お兄ちゃん怖!」
「てか海渡達もここにいたのか」
杉崎と花咲も合流した。杉崎の周りにはゲームのキャラであるユニットがちょこまかと動き回っている。
「その力を使ってるということは杉崎も?」
「あぁ何か襲われた。ま、今更だけどな。瞬殺だったし」
「あはは、多分凄いことしてるのに慣れてる私がちょっと怖いかも」
花咲が苦笑した。確かに花咲はこの中で数少ない力を持たない存在である。ここまでくると逆にレアだ。
「お化けっつても全く歯ごたえなかったわね」
「もう! 何考えてるのよ! お化け屋敷でお化けをぶっ飛ばすなんて!」
「武器持って襲ってきたんだから仕方ないじゃん。てか教子も隠し持ってたおはじきで撃ち殺してたし」
「殺したの!?」
「殺してないから! 幾代も適当なこと言わないの! せいぜい額の骨が砕けたぐらいなんだから」
「あはは。そうだよね先生がそんな荒っぽいことするわけないもん」
「額の骨砕くの十分荒っぽいよね!?」
シンキチが律儀にツッコむが皆、やれやれそれぐらい大したことないのになという顔をしていた。
「やれやれ系の定義がぶっ壊れてるよねそれ!」
「見事なツッコミだね」
『やれやれシンキチのツッコミぐらい大したことないのになやれやれ』
「いやそれだと本当に大したことないみたいだから!」
「シンキチのツッコミはともかくもしかして全員揃ったのか?」」
「えっと……」
「お前ら大人しくしやがれ!」
「ふぇ~ん勇者様~」
何故か一箇所にぞろぞろ集まりだした一行に向けて狂気に満ちた声が響き渡る。全員が声の主を見るとホッケのマスクを被った男が女神様を拘束して拳銃を向けていた。女神様は涙目である――
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