番外編 その六 ソフトクリーム食べました
本日発売の月刊コミックREX10月号に本作コミカライズ版の2話目が掲載されています!
「タイトル適当すぎだろ! てか何の報告だよ!」
「さっきから大丈夫かシンキチ?」
「いつものことだよ美狩ちゃん」
急に叫びだすシンキチを心配そうに見ている美狩。彼女はとてもいい子なのである。一方でシンキチが変なのは今に始まったことではないので菜乃華も真弓も全く気にしていない。
「というわけで皆でソフトクリームを食べに来ました」
「何がというわけなんだ海渡」
海渡の発言に目を細める杉崎である。ちなみにソフトクリームは広場で食べることになる。東京ドーム一個分ある広々とした広場にぽつんっとソフトクリーム屋が一つだけ存在するというなんとも贅沢な作りなのである。
「いや広すぎだろう! ムダもいいとこだよ! しかも客僕たちだけだよ! まるで貸し切りだよ!」
『ツッコむなぁ』
シンキチはまるでノルマがあるようにツッコミを連呼する。
「まぁ異世界から見たら、このぐらい子ども用の小さな畑の一部ぐらいの規模だけどね」
「海渡のいた異世界どんだけだよ……」
虎島が呆れた目を見せていた。当然だが虎島が向かった異世界と海渡がいた異世界は異なる。当然より危険なのは海渡のいた異世界だ。
「皆さん驚きすぎですの。大体東京ドーム一個分なんて最小の単位の一つでしかありませんわ」
「流石だな金剛寺。棚ぼた財閥とは言え一応は金持ちだもんな」
「棚ぼたいうなですわ!」
金剛寺がむきぃと怒った。金剛寺は確かに金持ちのお嬢様だがリアクションなどが親しみやすい。一応金持ちキャラっぽいふるまいを見せるがなんちゃってぽくて残念なところが逆に可愛いと評判なのだ。
「何か誰かに馬鹿にされている気がしますの!」
「実際手厳しいからね! でも確かに親しみやすい!」
そう金剛寺はとても庶民的な金持ちなのだ。
「委員長何食べる~」
「じゃあいちご味にしようかな」
「じゃあ私はいなご味で。後でわけようね」
「うん!」
委員長と鈴木は相変わらず仲が良くて微笑ましい。
「いやちょっとまって! どさくさに紛れていなごって何!? いなご味のソフトクリームとか想像もつかないよ! いちごの間違いだよね!」
「おいおい、マジでいなごがあるぞ……」
「こっちには刺身味だって」
「フッ、大魔王味ソフトクリームではないソフトだ! とは興味深い」
「本当にあった! てか大魔王とか意味がわからないよ! というかどっちもソフトだろ!」
『ツッコむなぁ』
とにかく思い思いの味のソフトクリームを頼む一行であった。
「フッ、やっぱりソフトといえばバニラだよな。基本こそが究極ってね」
バニラ味のソフトを片手に変なポーズで得意がるシンキチである。
『シンキチ、またお前は大切なところを見誤ったな』
「何が!? 普通にバニラ頼んだだけだよね!」
ダマルクの発言にシンキチが驚く。だが究極とは常に何かを見誤っているものなのだ。
「フフッ、虎ちゃんって本当抹茶味が好きだよね」
「う、別にいいだろう」
そして虎島はいつの間にか景と二人になりソフトクリームを食べていた。どうやら虎島は抹茶味が好きなようである。
「でもそっちも美味しそうだよね。ね、一口いい? 私のも食べていいから」
「お、おう。別にいいぞ」
景に頼まれ照れくさそうに虎島が返す。そんな二人を見ながら杉崎がニヤニヤしていた。
「何かいい感じじゃんあいつら?」
「あの三人もいないみたいだね」
虎島と景の様子を海渡も確認した。確かにいつもならこのタイミングで邪魔が入りそうだが近づいてくる様子がない。
「うふふ。あっちで他の女の子と楽しくおしゃべりしてるんだよ」
「あぁ本当だ。あ、さては舞――」
「えへへ♪」
舞がいたずらっ子のような笑顔を浮かべた。どうやら花咲が上手いことやったようだ。ナイスアシストである。
そして虎島は景から受け取ったソフトクリームを眺めながらドギマギしていた。一度は景が口をつけたソフトであり、柄にもなく緊張しているようである。
「いや、お前小学生かよ」
「う、うるせぇ!」
杉崎に突っ込まれて虎島が顔を真っ赤にさせて叫んだ。見た目とは裏腹に随分と初な男である。
「虎ちゃんどうしたの?」
「な、なんでもねぇよ! じゃ、じゃあ貰うぞ」
「うん」
そして虎島がゴクリと喉を鳴らし景から受け取ったソフトに口をつけようとしたが。
『ピンポンパンぽ~ん。現在ソフトクリームを食べているお客様に大切なお知らせで~す! これからソフトクリームを利用したデスゲームを開始いたしま~す。なんと今皆さんが食べているソフトクリームの幾つかには猛毒が仕込まれております!』
「え? 毒だって虎ちゃん! これ食べられないよ!」
景が声を上げ虎島の動きがピタッと止まった。そして――
『ちなみに食べないって選択肢は、て、ちょ、何なんだチミは!』
『うるせぇ出来損ないのソフト食べさせやがって! 三日後にきやがれってんだ!』
『何をわけのわから、ギャァアアァアアアァアア!』
「今日はよく悲鳴が聞こえるね」
「呑気だな海渡」
「サマヨ先生それ毒が!」
「私は女神様だから平気なんです~て辛! なにこれ辛!」
「唐辛子わさびマスタードハバネロミックスソース味だしね」
「なにそれこわ!」
虎島の怒りとは裏腹にわりと皆呑気だった。しかしサマヨの食べているそれはある意味毒だぞ! そして頑張れ虎島! きっといずれ気持ちは届くさ。
「今届けたいんだよ!」
コミックREX最新号では菜乃華の姿も――本作のコミカライズ版もどうぞよろしくお願い致します!




