番外編 その五 その後
今月発売のコミックREX10月号には本作のコミカライズ版第2話が掲載されます!
「タイトルがダジャレかよ!」
「どうしたのシンキチ?」
突然叫ぶシンキチに真弓が不思議そうな顔を見せてた。とにかくジェットコースターのその後、なんやかんやで店員からソフトクリームのサービス券を貰って得した気分になった一行である。
「どこが!? 明らかに釣り合ってないよね! デスゲームに巻き込まれたお詫びとソフトクリームって!」
「黄金のソフトがおすすめらしいよ楽しみだね美狩ちゃん♪」
「う、うむ。ソフトクリームかフフッ」
そんな会話をしながら移動を開始する。ソフトクリームという響きに微妙にテンションが上ってる美狩が微笑ましくもあった。
なにはともあれ危なくジェットコースターでデスゲームに参加させられそうになった一行だったが見事海渡、は特に何もせずとも虎島の力であっという間に危機は脱せられたのだった。
その程度で済んだのにソフトクリームまでただで食べられるのだからそれは当然お得というものだろう。
「駄目だこの人達! 感性が斜め上をいってるよ! もしかしてまともなの僕だけ!?」
『私は思う。いつもツッコむシンキチがボケた場合一体誰がシンキチにツッコむのだろうと』
「そんな正義の味方は一体誰が守るのかみたいな話をされるようなこと言った!?」
シンキチとダマスカスはいつもどおりの平常運転である。
「てかなんなんだこの遊園地は!」
こうして皆が和気あいあいとする中、虎島は一人憤っていた。一世一代の大勝負とばかりに清水から飛び降りるぐらいの気持ちで景に告白しようと思っていた。
そのために杉崎も知恵を振り絞ってくれた。作戦は完璧と思われた。
だがデスゲームはそれを阻んだ。憎むべきはデスゲーム。思えば虎島は常にデスゲームと共にいた。実はデスゲームに巻き込まれたのも海渡が最初ではなく虎島なのである。
にも関わらず主人公にもなれず好きな相手も一度は失い取り戻したかと思えばとんだおまけがついてきていざ告白ともなればデスゲームに阻まれるのである。
「全くやれやれだぜ」
「いや、それどちらかというと俺のセリフじゃね?」
海渡がため息まじりに吐き出したセリフに虎島がツッコミを入れた。シンキチの出番はない。
「いやいやあるよ! そもそも今回はみんなと一緒だし今さっき散々突っ込んだし、なんなら実はさっきもジェットコースターで巻き込まれていたからね! となりで木刀持った菜乃華を押さえつけるのに苦労したんだからね」
『菜乃華、だと?』
「ごめんなさい! 菜乃華さんです! てかなんでこのダマスカス海渡さんの妹の時だけこんなに怖いの!?」
シンキチも突っ込んだり怯えたり大変である。
「それにしてもデスゲームの野郎。一体俺に何の恨みがあるってんだ!」
「まぁ結果的に俺たちも巻き込まれてるんだけどな。すぐに片付いてるけど」
杉崎もやれやれと肩を竦めた。隣では花咲が苦笑いである。
「もうこの際だから海渡。遊園地でデスゲームを仕掛けそうなの全員倒しとくとかどうだ? 海渡ならそれぐらい出来るだろう?」
杉崎が海渡に提案した。だが海渡はあまり乗り気ではない様子である。
「う~ん。でも今の所、虎島が全部片付けてるからあまり実害ないしね」
「不本意なんだけどなそれ」
虎島がムスっとした顔を見せる。
「でも先輩。デスゲームなんて始まる前から潰しちゃった方が早いような」
隣で聞いていた長島が海渡に意見を言った。ジェットコースターの後、彼らも一度合流している。
「ま、それいい出したら切りがないしね」
海渡の答えは素っ気ないものでもあった。だがそれも事実だ。海渡は別に正義の味方気取りをするつもりもない。勿論身近な親友や大事な人がピンチになれば助けるし場合によっては組織ごと何なら神だろうと潰す。だからといって積極的に自分から叩いて回るつもりもない。
そういうのは異世界での出来事もあり懲り懲りだった。世界に干渉しすぎてもろくな事にならないのは異世界で暮らした十年間で身にしみてわかっている。
「女神様。あの海渡くんって異世界で一体どんな暮らしをしていたんですか?」
海渡と虎島達とのやり取りを聞いていた委員長が女神に聞いた。海渡が異世界を救うために召喚された勇者であったことは既に知っているが異世界で海渡がどうやって過ごしていたかまでは当然わかっていないし、そこまで踏み込んで本人に聞いていいかもわからなかった。
故に女神に聞いてみたわけだが。
「う、うん。そうだね海渡は勇者様としても強くて素敵だったの! 皆からも頼りにされてたと思うし。だけど……」
そこで口ごもるサマヨ。委員長はなんだかそれ以上聞くのは申し訳ない気持ちになり――
「ご、ごめんなさい。やっぱりいいです。それに大事なのは今の海渡くんと私達がどう過ごすかだもんね」
「へぇ。それで委員長はどう過ごしたいのかなぁ?」
「な、ちょ鈴ちゃんってば!」
「くっ、海渡には助けられたこともあるが複雑だ!」
委員長の頬を突っつきながら鈴木がからかった。それを見ていた光が文字通り複雑そうな顔を見せている。
「虎ちゃん。もうそんな怖い顔して。折角だし楽しもうよ」
「う、そうしたいのは山々なんだが……」
景が近づいてきてそんなことを言った。ポリポリと頬を掻く虎島。すると景がむにゅっと虎島の頬を引っ張りニコッと微笑んだ。
「ほら笑顔笑顔。ミラクちゃんも笑顔の虎ちゃんの方が好きだよね?」
「キュ~♪」
景に話しかけられミラクは虎島の頭の上でポンポンっと跳ねた。
「それに、ほら。さっきのお詫びにってソフトクリームのサービス券貰ったわけだし。せっかくだから食べにいこ?」
「お、おう――」
頬を朱色に染めつつ景の差し出した手を見る。そして虎島が手を出したその時、一振りの剣が割って入る。
「うぉ!」
「はいそこまで!」
それはフォワードの剣だった。しっかり魔法も掛かっているのか紫電が迸っていた。
「主。大丈夫でしたか?」
「え、? う、うん」
「浄化魔法で手を消毒しますね~♪」
更にマックスが景の手を取り、キャラットが魔法で消毒した。
こうして結局キャラット、マックス、フォワードの三人に阻まれ手を繋ぐまでもいえなかった虎島であった。
「う~ん。青春だなぁ」
「青春、なのか?」
そんなやりとりを微笑ましそうに見ている海渡。杉崎は苦笑いだが。
「黒瀬くんその猫耳すごく似合ってるよぉ~」
「…………」
こうしてそれぞれの青春を謳歌する一行であり黒瀬など貴子に猫耳のアクセサリーまでつけられる始末だ。だがちょっとだけ嬉しそうだぞ。
『貴子は怖い女だっぺ! 黒瀬きゅん騙されちゃ駄目だッペ!』
月刊コミックREXにて本作のコミカライズ版の連載が始まってます。さて漫画版の海渡とクラスメート(委員長)の運命は!どうぞコミカライズ版も宜しくお願い致しますm(_ _)m




