番外編その四 死の大観覧車でドキッ?
はたして虎島の運命は!
そしてコミカライズ版が月刊コミックREXにて連載中です!
海渡達は死の大観覧車に乗ることになった。見るからに安全そうで死に関わるような事故など起きるわけもなさそうな安心安産な大観覧車だった。
「いやいやもう名前からして危険臭が凄いからね!」
『そんなにツッコミいれて疑り深いなシンキチ太くんは』
「シンキチ太って何!? 普通にゴロ悪いし! だったら助けてダマえもんと呼んじゃうよ!」
「シンキチさっきから何一人で叫んでるんのだ?」
「今更だよシンキチは常にそういう感じだもん」
「だねぇ美狩ちゃんと違ってそういう設定だったしね」
「いやいや今は設定じゃないからね! 実現したからね! 皆も知ってるよね僕のダマスカス!」
「おい、あれが中二病って奴か」
「凄いわ。あそこまで極度の子初めてみた」
「君、ちょっと記念写真とっていい?」
「何故に!? 一体何の記念に!」
「シンキチ太くんは大人気だなぁ」
中二病という理由で取り囲まれるシンキチを見て感心したように海渡が言った。
「まぁ海渡に関しては中二を具現化したような存在だけどな」
「う~ん自分ではあまり意識してないんだけどね」
「ですが勇者様ならラノベやアニメやゲームから漫画までどれも完璧に再現出来ますからね」
「ピクッ」
女神サマヨの発言に黒瀬が反応した。黒瀬 帝は完璧な男だった。スポーツや勉強は勿論格闘ゲームの技でさえひと目見れば完璧にいや元以上の精度にしての再現が可能だった。
右下から始まり右で終わるブラッディなパトラッシュというややこしいコマンドの超必殺技も弱攻撃から余裕で繋げ、なんなら一度もミス無く百回連続で成功させる程の完璧さだった。
だからこそ黒瀬は海渡が許せなかった、わけではないが何となく悔しかった。
「ブラッディなパトラッシュ!」
「ワンワンワンワンワンワン!」
「おお、あれはまさにブラッディなパトラッシュ!」
「再現度たけぇなおい」
「何をやってるんだ黒瀬は?」
何やら対抗心を燃やして必殺技を出す黒瀬に小首を傾げる虎島である。
「それより杉崎。その、これを選んでくれたのは嬉しいがちょっと難しくないか?」
死の大観覧車の順番待ち途中、前に並ぶ杉崎に虎島が耳打ちした。
「大丈夫だ。まぁ任せとけって」
「だけどな……」
「キュ~?」
隣の景が?顔である。そして虎島のすぐ後ろにはいつもの三人が立っていた。
この大観覧車はゴンドラ一つにつき四人まで乗れる。どうやら死と四を掛けてるようだ。
「益々不吉だな!」
そんなツッコミもあるがとにかく四人しか乗れない以上、このままいくときっとマックス、キャラット、フォワードの三人がでしゃばり景と四人で乗り込み虎島を追い出すに決まってるだろう。
これでは告白どころではないのだ。
しかしどうやら杉崎には秘策があったようであり――そしていよいよ杉崎の出番が回ってきたわけだが。
「あ、痛ッ! 急にお腹が!」
「え? 杉ちゃん大丈夫?」
「いやぁ、ちょっとキツいな。だから俺の代わりに先ずお前ら二人が!」
「え?」
「お、おおぉおお!」
「「「あぁああぁああッ!?」」」
それはナイスアシストであった。さすがサッカー部主将の杉崎である。まさに見事なパス回し、いやなんならシュートと言って良いだろう。杉崎は腹痛の振りをして虎島と景をゴンドラに押し込んだのである。セットでミラクも一緒だったがそれぐらいなら問題ないだろう。
勿論三人からはクレームが来たが、杉崎は上手いこと笑って誤魔化しておいた。
「そういうことだったんだ。凄いアシストね杉ちゃん」
「フッ、これでも俺はここ最近の大会でハットトリックを連発した男だからな」
杉崎ドヤ顔である。
「てか、サッカーやってたんだね」
海渡が感心した。確かにサッカー部所属とは聞いていたがいつ練習してるのか不明なぐらい一緒に遊んだり事件に関わったりしていたからだ。
とにかくこうして無事虎島は景と二人っきりで観覧車に乗ることが出来た。虎島も涙しながら杉崎に向けて親指を立てる。
ちなみに腹痛は嘘だったのでその後普通に杉崎と花咲も含めて全員がゴンドラに乗りこんでいった。
「キュッキュッ~♪」
「ふふ、ミラクちゃん楽しそうだね」
「お、おぉそうだな」
杉崎のアシストもあって見事に景と二人っきりになれた虎島。この状況はジェットコースターよりも更に完璧だ。正確に言えばミラクもいるがむしろミラクのおかげでいい感じに和んでもいる。
景もミラクを撫でて笑っていた。そして虎島は柄にもなく緊張していた。
景は幼馴染だが元々虎島は口下手な方だった。今までもそこまで積極的にアプローチしたことはなく、更にここ最近はあの三人のおかげでなかなか二人っきりになれず話しかけるのにも苦労していたのだ。
だが今まさにチャンスが来た。ミラクを理由になんてことはない話を続けるが、虎島の心臓はドキドキだった。
「その、ひ、久しぶりだよな。こうやってその、なんだ」
虎島が視線をそらし、くそ、と髪を掻き毟る。
「うん。そうだね。確かに二人だけは久しぶりだね」
「キュッキュ~」
「あ、ごめんねミラクちゃんと三人だね」
「キュ~♪」
景が撫でるとミラクが嬉しそうにプルプルと震えた。雰囲気は間違いなくいいと感じた。これが間違いなくチャンスだと虎島は意を決する。
(このゴンドラが頂上に達した時に、俺はお前に告白する!)
ジッと景に視線を向けて拳を握る。
「……虎ちゃん、どうしたの? 何かすごく真面目な顔して」
「そ、それは――実は俺はお前に伝えたいことがあるんだ!」
「虎ちゃん……」
虎島の訴えを景も姿勢を但し聞こうとしてくれた。
そして――いよいよ頂上まであと50センチ! といったところでガタンっとゴンドラが止まった。
「景、俺は! て、は?」
「あれ? 何か止まったね?」
「キュ~?」
景とミラクも不思議そうにしていた。虎島の顔が歪み。
『ピンポンパンポーン! は~い死の観覧車をお楽しみ中のお客様に、【幻想死団】より死の宣告をおつたえしま~す!』
バキッ! と虎島の席から異音が聞こえた。
『皆さんにはこれからデスゲームに参加してもらうよ! この観覧車のゴンドラには爆弾が仕掛けられてます! これからくじ引きを引き、引いた番号のゴンドラが爆発するってゲームさ! そして最初に出た番号は――眼鏡!』
「……ちょっと行ってくる」
「ちょ、虎ちゃん!」
「キュ~ッ!」
全てを聞く前に虎島が扉を蹴り壊しゴンドラから飛び降りた。
『さぁ最初に爆発するのは眼鏡の委員長、て親方空から虎がーーーー!』
「虎島だ馬鹿野郎ーーーーーーー!」
『待って待ってぎゃぁぁあ!』
「う~ん、虎島荒れてるねぇ」
『いや、てか親方って誰さ! あとさっきもだけど何故眼鏡ーーーーーー!』
こうして虎島の、大観覧車でドキッ! 愛の告白作戦! は杉崎のアシストも虚しく見事失敗に終わるのだった――
本作のコミカライズ版が月刊コミックREXにて連載開始となりましたが、なんと!コミカライズ版では遂に委員長の名前が!勿論漫画になって海渡を含めてキャラが活き活きと動き回っております!
どうか皆様コミカライズ版もどうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m




