番外編その三 デスジェットコースター
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『さぁそれでは早速ルールを伝えよう! これからこのコースターの安全装置が一つずつ外れていく。どれが外れるかはくじで決まるぞ。さぁ引いたぞ! 出てきた番号は眼鏡! つまり委員長だ!』
「また私!?」
「またって言っちゃったよ」
「いやそれ以前にくじが眼鏡って何!?」
佐藤委員長が驚いた。しかし本人も理解しているのか遂にまた、と思わず口にしてしまっていた。
そしてシンキチもツッコミを忘れることがなかった。
海渡も反応しつついつもどおり行動に移そうと考えるが。
――バキッ!
「え? と、虎ちゃん?」
何かが砕ける音がした。虎島の座席からだった。景の戸惑う声が聞こえるがその時には既に虎島がジェットコースターから飛び降りていた。安全装置は無理やり外されていた。
『さぁ委員長の安全装置をって! 何で別の奴が飛び降りてるんだーーーー!』
アナウンスの絶叫が響き渡るが構うこと無く虎島が着地しダッシュで係員の詰所に向かった。
『ちょ、何だお前は! ルール無視して何して――』
『うるせぇ! 折角の作戦を台無しにしやがってこの野郎が!』
『ギャァアアアアァアァアア!』
「はは、か、海渡の出番なさそうだな……」
「まぁ楽でいいけどね」
「あはは……」
「フッ、危なくこの鳳凰い」
『シンキチうるさい』
「何故に!?」
スピーカーを通して虎島が相手を叩きのめす声が聞こえてきた。杉崎も花咲も苦笑している。ドサクサに紛れてシンキチがまたあの名前を出そうとしたがそれは見事にダマスカスによって防がれた。世界の平和は守られたのだ。
「僕の名前そこまで!?」
『お前の名前はシンキチだろシンキチ』
シンキチが仰天するが確かにシンキチが本名なのだから仕方ないのだった。
なにはともあれ虎島の活躍でデスゲームなジェットコースターから全員救出された。ちなみに正規の係員はロープで縛られており、一緒に助けてあげたら随分と感謝された。
お礼にとただでアトラクションに乗れるチケットの束も貰えた程だ。
「虎ちゃんのおかげでフリーチケット貰えたね」
「そ、そうか? へへっ」
「調子乗ってるんじゃないわよタイガー」
「うむ。あの程度の相手、この私の剣でいくらでも切り伏せることができたのだ」
景に褒められ照れる虎島。告白できなかったことは悔しいだろうが、デスゲームから助けたおかげでこの笑顔で見れると思えば悪い気はしなかった。
だがいつもの三人は虎島に厳しい目を向けている。マックスなど剣を抜き鼻息を荒くしていた。
「いやいや! いくらなんでも斬り殺したら不味いってば!」
「大丈夫その後しっかり蘇生して差し上げますので」
当然のようにツッコミを入れるシンキチ。しかしまるでなんてことがないように笑顔でとんでもないことを言うキャラットである。見た目心優しい聖女のようであるが思考はわりと危険なタイプなのだ。
「それなら安心だね」
「それって安心なのか?」
「何か私達もだんだん感覚が麻痺していってる気がするよ~」
皆のやり取りを聞いていた菜乃華が笑顔を見せ美狩は小首を傾げていた。真弓はこの状況になれた自分に逆に戸惑っているようでもある。
「いや、そもそもあんなことがあったのに普通に営業続けるんだなここ……」
一方で杉崎も怪訝そうにそんなことを呟いた。どうやらデスゲームはこの遊園地そのものが舞台ということではなく勝手にやってる連中がいるようだが、だとしても普通に営業を続けているのに疑問があるのだろう。
「……この辺りはデスゲームが多いからな。仕方ない」
「いや、そんなちょっとこの町、殺人事件が多いんだよねみたいに言われてもな」
黒瀬の反応を耳にし、杉崎は殺人事件がよく起きる探偵物を思い浮かべて苦笑いした。
「でも確かにデスゲーム多いもんね。委員長もいつも狙われて私心配だよ!」
聞いていた鈴木が心配そうに委員長を抱きしめる。
「いやいや、二人共その程度どうにでもなるぐらい強いよね? というか私の委員長にそんなベタベタしないでよ!」
「私のって、委員長は私の親友だよ!」
「私は告白した!」
鈴木と光の間で場外乱闘が起きる。
「平和だな~」
「どこが! いやいやジェットコースターでデスゲームが始まった時点で平和とはかけ離れてるからね!」
『ツッコむなぁ~』
シンキチのツッコミを受けながらも今度は大観覧車に向かう一行であった。
「おお、死の大観覧車だって。これは安全そうだね」
「いやどこが!」
大観覧車を見上げながらほのぼの語る海渡に再びシンキチのツッコミが決まり雲ひとつない青空に広がるのだった。
いよいよ明日27日発売の月刊コミックREX9月号にて『異世界帰りの元勇者ですが、デスゲームに巻き込まれました』の連載が始まります!なんと表紙&巻頭カラーです!どうぞ宜しくお願いいたします!




