番外編その一 虎島の悩み
ご無沙汰しております!番外編投稿いたしました。
またあとがきに大事なお知らせがありますので読んで頂けると嬉しく思いますm(_ _)m
楽しかった修学旅行も終わりを告げ、日常が戻った学園生活。そして放課後虎島が景に声をかけた。
「景、今日の帰りちょっといいか?」
「あ、虎ちゃんごめんね。今日女子会の約束があって」
「そうです~キラは今日は私達と約束があるんだからね!」
「主君の身を守ることこそが騎士の務め。カフェで一緒にパンケーキを食べるのも、うふふ……」
「マックスすっかりこっちのパンケーキを気に入ったようですね。まぁ私も美味しくてついついペロッと二百枚ぐらい食べちゃうんですが」
「食いすぎだろ!」
『先に突っ込まれたよ!』
「キュ~♪」
思わず突っ込む虎島の頭の上でミラクがポンポンっと跳ねている。あと誰かの悔しがる声も聞こえた気がした。
「本当ごめんね虎ちゃん。次こそ埋め合わせするから」
「そういえば委員長も来るんだよね」
「金剛寺殿もだな」
「花ちゃんもですね。女の子が多いのはいいことよね~」
景が手を合わせて謝罪し、そして女の子たちとキャッキャウフフと去っていった。後に取り残された虎島の背中はどことなく哀愁に満ちていた。
「そんな虎島の頭の上では一匹のスライムがポンポンっと飛び跳ねていた。夕焼け色に染まるスライムと虎島の背中がどことなく物悲しげに思えたのだった」
「て、海渡! 何勝手にモノローグ入れてるんだよ!」
勝手に心の代弁者みたいな語りを入れた海渡を虎島が振り返り叫ぶ。どこか不機嫌そうなのはやはり景のことがあったからなのだろう。
「ごめんごめん。なんとなくそんなことを呟きたい夜もあるよね」
『まだ太陽は昇ってるよ! あ、間に合った!』
相変わらずのツッコミに安心しつつ、それじゃあ、と別れを告げる海渡。だが海渡の肩を虎島がぐっと掴み真顔で言った。
「海渡、折り入って相談があるんだが――」
◇◆◇
「で、女の子が女子会でカフェでパンケーキを食ってる時に俺たちはお好み焼きか」
「別にいいだろうお好み焼きも!」
「このドラゴン玉ください」
「あいよ~」
『ドラゴン玉って何! なにそれ七枚食べると願いが叶うとか!?』
『突っ込むな~』
「……この漆黒暗黒邪帝炎黒流玉というのを一つ」
『また凄いの来たな! 黒すぎだろ!』
「ごめんねそれ今日完売したんだ」
『完売! こんなに怪しいのに完売したの!? どうしてホワイ!』
「ツッコミ玉ならあるけど」
「ならそれ一つ」
『なにそれ! 食べたらツッコミ体質になるとか!? てか一つとして定番のメニューなくない!』
『ツッコむなぁ』
「でもなんだか久しぶりな気がする。ツッコミも」
しみじみと語る海渡なのだった。そして現在お好み焼き屋には虎島と海渡の他、杉崎と黒瀬更にスライムのミラクとツッコミがいた。
『名前すら与えられないの!?』
『まぁその場にいるわけじゃないし』
というわけで姿が見えないツッコミは一旦置いておいてやってきた店長に注文する。
「俺はオークとクラーケンのミックス玉かな。無難なとこで」
「虎島って意外とそういうとこ手堅いよな」
「フッ……」
『いやいやいやいや! クラーケンもオークも普通に大冒険だから! 特にオークは人の言葉喋るのに食うのはちょっとと言われる代表格だから!』
「でも意外と旨いんだけどね。オークもミノタウロスも」
「食ったのか……」
「まぁ普通は食うよな」
「……フッ――」
杉崎は若干の疎外感を感じた。虎島も海渡も異世界にいったことがあるから仕方ないが。
「で、虎島の相談って何なんだよ?」
「いや。俺そもそも海渡に話したんだが」
注文も終わりニヤケ顔で杉崎が問うが、確かに虎島が相談したのは海渡だ。
「キュッキュ~」
「ミラク。鉄板は熱くなってるから」
「キュッ!」
そしてミラクは机の上に移動しソ~っと触手を鉄板の上に伸ばしていた。海渡に言われて驚いて引っ込めたがそんな姿が妙に愛らしい。
そしてなにげに黒瀬がひんやりとしたミラクの頭を撫でていた。
「て、和んでる場合じゃないんだよ! 俺にとって一大事なんだ!」
虎島がテーブルを叩きつけて叫んだ。どうやら今日の相談はかなり深刻な悩みなようだ。
「そうなんだ。じゃあいまここで吐いてスッキリしちゃいなよ」
「……お前がやったんだな?」
「いや何で取り調べみたいに……まぁいいや。仕方ない本当は海渡にだけ打ち明けようと表ったんだけどな」
虎島は嘆息し、そして決意のこもった顔で皆に向けて語る。
「実は――他の皆には黙っていて欲しいんだが――実は俺、俺、け、景のことが好きなんだ!」
そして虎島から語られたその真実は、まさにこれまで誰一人として知らなかった、思いも寄らない真実であり、この時の彼らはまさかこれが後の大事件に繋がるとは考えてもいなかった。
『……て、知ってるよーーーーー! なんなら墓参りの話があった時からもうわかりきっていた周知の事実だろうがいぃィィイイイ!』
「ツッコむなぁ」
と、一足先にツッコミが入ったがそんな虎島の告白を聞いた海渡の顔は――無だった。
黒瀬は既にお好み焼きの生地を焼いていた。杉崎はスマフォをいじっていた。
「――いや聞けよ!」
「聞いてたよ」
「てか今更だろう。先にツッコミ入ったけど」
「……知らなかった」
「キュ~」
虎島の話を聞いた三人と一匹の反応はどこか淡々としていた。本当今更何をというぐらい皆わかっていたことだった。
『いや普通に話進めてたけど一人知らなかった人いるよね! 鈍いの一人いたこれ!』
「……フッ」
「いや黒瀬知らなかった割に自身満々な顔してるな」
「まぁ大魔王だしね」
そう実は黒瀬は大魔王の転生体だった。もっともだからといって今更何をするわけでもないが。
「まぁ正直うちには勇者もいるわ大魔王もいるわ女神はいるわで、そんな中今更な告白だよな」
「クッ! 俺はこれでも決死の思いで言ったつもりなのに! てかいつから知ってたんだよ!」
「出会った瞬間、五秒ぐらいかな」
「お前凄いな!」
「出会って五秒ですぐバレてるってことだな」
杉崎が上手いこと言ってやったみたいな顔をした。
『いやそこまで上手くないから!』
「よし。シンキチ後でちょっとお話しようか」
『こわ! て僕は鳳凰――』
「それで今日の話というのは虎島が景ちゃんを好きって話?」
海渡からは絶対にもうその名前は言わせないという強い意志が感じられた。
『なんで! いやいやかっこいいよね鳳凰い――』
「シンキチのことはともかく、勿論それだけじゃない」
そう虎島にとって大事なのはシンキチのツッコミではなかった。
「お前たちは知らなかったと思うが、俺はこれまで何度も景にアタックしようとして、失敗してたんだ!」
「知ってた」
「知ってた」
「キュ~」
「……そうだったのか――」
深刻そうに語る虎島だがごく一人を覗いては知っていたようだ。何ならスライムにもバレバレである。
『大魔王鈍すぎ! スライムより鈍感!?』
「――我が手に宿え冥界の炎よ。その漆黒の暗禍を以て我に仇なすツッコミを燃やし尽くしたまえ」
『こわ! それ絶対僕のことだよね! ごめんなさい許して!』
「お客さん。店の中で冥界の炎を出されると他のお客さんに迷惑だから」
「……ごめんなさい」
『素直! というか普通に冥界の炎って認識しちゃってるよ! 何このお好み焼き屋!』
ついつい右手に冥界から炎を召喚した黒瀬だが、注意されたら素直に謝るあたり根はいい人なのだ。
「とにかくだ、まさか知ってたとは思わなかったがだったらわかるだろう。俺が景を誘おうと思うと思うとだ! いつも邪魔が入るんだよ! あの三人からうがぁああぁああ!」
何かを思い出したように立ち上がり頭を抱えて発狂する虎島である。
「ここのドラゴン玉美味しいな」
「おお、確かにこれはいける」
「新鮮な竜の肉をつかってるんでさぁ。今日一狩りしたばっかですぜ」
「……ツッコミ玉も上手い」
「新鮮なツッコミ肉ですぜ」
『新鮮なツッコミ肉って何!? というか竜肉ってどこで狩ってきたの!?』
「勿論ぐんm――」
「お前らもっと俺に興味持てよぉおぉおおお!」
虎島がムキになって叫ぶのだった。
「あ、そういえばコミカライズ決定だって」
「マジかよ海渡!?」
「いや、だから俺の話にもっと興味を、てコミカライズって正気かよ!」
「……フッ、知らなかったさ」
『知らなかったのかよ! て、えぇええコミカライズ! ということは遂に僕の活躍ぶりが漫画に! そうこの鳳凰い――』
『シンキチうるさい』
はい、というわけで勿論ネタではありません。事実です!この度『異世界帰りの元勇者ですが、デスゲームに巻き込まれました』のコミカライズが決定しました!掲載雑誌は現在『魔力0で最強の大賢者』を連載しております一迅社様の月刊コミックREXで来月7月27日発売予定の9月号から連載開始です!そうです同誌でなんと私原作のコミカライズが2作載ることになったのです!嬉しい!
いや個人的には本当驚きですけどね。まさかこの作品に目をかけて頂けるとは……そしてこれも偏に応援して頂いている皆さまがいてこそ!本当にありがとうございます!本編は完結しましたがコミカライズ記念に番外編を載せていけたらと思っておりますので改めて今後ともどうぞ宜しくお願いいたします!




