第百二十四話 神々のデスゲーム
修学旅行行きのリニアが突如異空間を渡り、地球とは全く異なるどこかに飛ばされることとなった。
そして表に出た海渡達を出迎えたのはどことなく偉そうな雰囲気の漂う王冠を被った男。
そして男は彼らを見下ろし世界の命運を賭けた神々のデスゲームを始めるなどと言い出した。
「神々のデスゲームって、あんた何なんだ?」
「我は全神皇。全ての世界の神を束ねる神の中の神」
「ひ、ひえぇえええええぇええええ! 全神皇~~~~~~~~!」
その言葉に女神サマヨが飛び上がらんばかりにびっくりした。
「何? 凄いの?」
「凄いなんてものじゃないですよ勇者様! お姉ちゃんが所属する大神界を治めるまさにこの世のあらゆる存在の皇なのです!」
「ま、マジかよ……」
「何かスケールがでかすぎて想像もつかないんだが……」
虎島と杉崎が目を白黒させていた。すっかり人外になったと思われた二人でさえこれなのだから他の皆も心境的には似たようなものなのだろう。
「それで? その全神皇とやらが何でそんなデスゲームなんかに俺達を巻き込んだんだ?」
しかし、そんな中でも海渡だけは特にいつもと変わらず神に問いかける。
「お前のせいだぞ海渡」
「……俺の?」
「そうだ。この神々のデスゲームは全ての世界から力のある物が選ばれそれぞれが世界を賭けて戦うというものだ。本来なら地球などどの世界であっても大した星ではなくゲームに選ばれるようなことはなかったであろう。だが、その地球には貴様がいた。そして貴様一人のせいで地球を含めた世界の格が上がった。貴様さえいなければこのデスゲームに巻き込まれることはなかっただろうにな。だが今更そんなことを嘆いても仕方あるまい。私が全神皇の権限で決めたこと。それが全てだ。誰にも逆らう事はできない」
「海渡のせいだと?」
「神々に目をつけられたのも海渡がいたからだというのか?」
「そんな、海渡くんが?」
「海渡――」
虎島や杉崎や委員長や鈴木、これまで海渡と行動をともにした仲間たちが全神皇と海渡を交互に見る。
「失望したか? そもそもその男はあまりに異端だった。貴様らの世界にいるのがバグみたいなものだ。どうだ恐ろしかろう? そのような化け物が一緒にいたのならそう思って当然のこと。だがいくら恨んだところで」
「は? 何ふざけたこと抜かしてんだこのすっとこどっこい!」
「全神皇だか何だかしんないけど、そんな程度で俺達の海渡を見る目が変わるかよ」
「あまり馬鹿にしないで欲しいですわ!」
「ガウガウ!」
「例えどれだけ強くても海渡くんは海渡くんです!」
「そうよ。大体海渡のおかげで助かった人だって一杯いたんだから!」
しかし彼らの反応は寧ろ神に対して否定的だった。全神皇が顔を顰める。
「ふん。まぁ良い。どちらにせよゲームへの参加はしてもらう」
「そうだそうだビビってんじゃねぇぞ」
「辺境の田舎の惑星連中に負けるかよ」
すると全神皇の発言に合わせて周囲に来ていた他の世界の連中からガヤが飛んだ。
「それで、俺達はあいつらと戦えってことか?」
「そうだ。ルールは単純だ。お前たちの世界から八人を選び、他の惑星の連中とその中央に見える星で戦うが良い。勝負はバタイユロワイヤル方式だ」
「何バタイユロワイヤルって?」
「バトルロイヤルの事だろう」
「ならそう言えばいいだろう」
「カッコつけてちょっと違う感じで言いたかったんだろう」
「全神皇ってわりに俗っぽいわね」
全員からの総ツッコミに全神皇の肩が震えた。
「え~い! とにかく貴様らのうち代表を八人とっとと決めるがいい! みろあの神の時計の炎が全て灯ると同時に試合は開始するからな」
全神皇の示した先には巨大な時計台があり、数字が刻まれている場所に蒼い炎が灯っていた。
灯っていないのは三箇所であり、それが完全に灯る前に決めなくてはいけない。
「どうやらこのデスゲームは避けられないようだな。しかし、あらゆる世界の最強達が揃っている。俺達も慎重に八人選ぶ必要がある」
「海渡はまず決まりだな」
「それは勿論だ。そして俺も出させてもらうぜ」
虎島は自ら出ることを宣言した。だがこれに文句を言うやつはいない。
「虎島の盾は防御にも反撃にもうってつけだ。出ない理由がないだろう。そして俺も当然出るぜ」
杉崎も名乗りを上げる。彼のゲームマスターは敵対者が多いほど効果が高い。自分の強化はもとより数多くの兵隊を生み出すことも可能だからだ。
「虎ちゃん。私も出る!」
「あぁ、景の強さなら納得だ」
景は虎島に助けられたことはあれど、その魔法の破壊力は戦力として十分余りあるものだ。
「それなら我らも」
「いや、マックス、フォワード、キャラット、お前たちは駄目だ」
「は! どうしてよ! さてはあんた! キラに気に入られようとして一人で!」」
「そうじゃない。寧ろ逆だ。お前たちは景の大事な友達だ。だからこそ出させるわけにはいかない」
「……それは、私達では力不足ということですか?」
「残酷なようだがそうだ。お前らは景より弱い。それに景に執着し過ぎなところがある。それは致命的な弱点にもなり得る。それに景だってここは同じ気持ちだろう」
「……ごめんなさい。今回は虎ちゃんの言うとおりにして欲しい。皆を失いたくないから」
「……キラ――くっ、騎士なのに主を護れないとは!」
「あんた、絶対にキラを護りなさいよ!」
「当たり前だ! 二度とあんな目に合わせてたまるかよ……」
「虎ちゃん……」
虎島は思い出していた。かつてサバイバルロストで幼馴染の景を失ったことを。だからこそ、今度こそは同じ目にあわせない。そう誓っている。
「これで四人は決定したな。あとは……」
「私と委員長も出るわ」
「え? しかし委員長はいいのか?」
「う、うん! それに私が魔法少女になったのは守られるだけなのが嫌だったから。だから皆の力になりたい!」
「私もよ。それにこれでもカードの力はちょっとしたものなんだから」
鈴木がカードを指に挟み、委員長は和の料理人の姿になった。どちらもかなり強力な戦力なのは間違いないだろう。
「キュゥキュ~……」
「悪いなミラク。お前も今回は見守っていてくれ」
寂しがるミラクの頭を虎島が撫でた。
「後は二人、なら女神の私が!」
「いや駄目だろう!」
「女神様は論外だ!」
「そんな~~」
女神様が涙目だ。しかし女神様は置いていくと決めた彼女ではこの戦いについていけない。
「俺にも参加させてくれ」
「赤王様!」
いつの間にかアカオが人化しており金剛寺が興奮した。
「俺も皆を護りたいんだ」
「あぁ、アカオ、いや、赤王なら文句なしだ」
「後は一人か……」
「それなら、私が……」
「待って。ここはやっぱり私が」
美狩と光が前に出て名乗りを上げた。だが、虎島や杉崎の表情は険しい。この二人は確かに下手な人間よりは強いがこの面子の中では見劣りしてしまうのだ。だがその時意外な人物が名乗りを上げた。
「……僕が出る」
「な! 黒瀬、お前がか!?」




