第百二十三話 修学旅行でデスゲームに巻き込まれるなんてあるわけないよね?
最終章のスタートです。
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いよいよ修学旅行の再開の日がやってきた。海渡は友人たちと駅に向かった。以前はバスを利用したが前回の修学旅行で色々あり学校側も賠償金をたんまり貰ったため、何と遥かに旅行の質がグレードアップしていた。
「よ~しお前ら皆いるか~? だったらリニアに乗るぞこら~」
「先生、その手に持ってるのビールだよね?」
「それがどうした~先生は大人だからビールを呑んでもいいのだ(グビグビ)」
「いや良くはねぇだろう。どんな先生だよ」
鮫牙が眉を顰める。以前の鮫牙なら寧ろ自分も呑むぜぐらいのことを言ってもおかしくなかったが最近は寧ろ真面目であり、驚いたことに勉強の成績も上がっている。
「よし乗り込むぞ! リニアだー」
そして矢田先生が音頭を取って乗り込んでいく。だがその時鮫牙が、おい! と前を進む委員長や鈴木に声を上げ。
「鈴木はレモンティー、委員長はお茶でいいんだったな。虎島はメロンソーダ、杉崎は缶コーヒーブラック、海渡は――」
鮫牙が次々と皆にジュースを渡していった。
「悪いな。でも、まだ頼んでないよな?」
「フッ、なめるなよ。今の俺はお前らが飲みたいと思ったタイミングに飲みたいものを買ってこれる程までに成長したのさ」
そう。これまでのパシリ生活で鮫牙は最高のタイミングで自らパシれるようになっていたのだ。
「何か変われば変わるものね」
海渡が感心したように言った。ちなみにパシリと言っても皆しっかり代金は払ってるし、最近はその真面目なパシリぶりに釣りはいらないからと言われるパターンも増えていた。
そんなわけで彼らはリニアに乗り込む。時代が進みリニアもすっかり当たり前になっていた。今やハイパーループを利用したリニアは当たり前であり音速で快適な旅行が楽しめる。
もっとも海渡であれば音速などは余裕で引き出せるしやろうと思えば転移魔法だろうと瞬間移動だろうと可能だが、こういう乗り物にのって移動するのも旅行の醍醐味と知っているのでそんな無粋な真似はしない。
「でもまぁリニアならあっさり目的地につくんだろう?」
「東京から大阪でも20分あればつくぐらいだしな」
「ふむ、20分か」
リニアに乗り込み席につくと全員でトランプを始めながらそんな雑談を始めたわけだが。
「なぁそれって速いか?」
「いや十分速いだろう」
虎島の疑問に呆れ顔で杉崎が答える。
「虎ちゃん。ちょっと感覚が常識からずれて来てるから気をつけた方がいいよ」
「そ、そうか。言われてみればそうかもな」
「そうよ。確かに20分も掛かるのは遅く感じるかもだけど、その分惑星破壊レベルの魔法が打ち込まれても平気なバリアーぐらいは搭載してるんだろうし」
「いや、星彩もその思考、かなり常識から欠如してるぞ」
「はは、流石にバリアーはないよね」
「え! ないの!?」
「鈴木……お前もか……」
鈴木の発言に杉崎が目を細めた。なお杉崎は身近に花咲がいるので辛うじて常識は保っていられた。
「勇者様、旅行楽しみですね!」
「うん。でも、俺達と一緒の席にいていいの?」
女神サマヨは海渡たちに混じってトランプをしていた。だが、女神サマヨは一応は教師なのだ。
「大丈夫ですよ。ほら矢田先生もそこで酩酊してますし」
「先生、流石に酒のんで眠るのは不味いですって」
「う~ん、鬼瓦ー酒かってこーいおごりで」
「えぇぇええぇええ!?」
矢田先生は既にかなり出来上がっていた。しかしまだまだ呑む気なようだ。鬼瓦のおごりで。
「矢田先生自由すぎだな! だけど酔っ払う先生はエロいぜ!」
矢島が鼻息を荒くさせる。女子の視線が冷たい。
「黒瀬~ポッキリ食う?」
「……ありがとう」
トランプを楽しみながら海渡が黒瀬にポッキリを差し出した。それをポリポリと摘みながら海渡から引いたカードは魔王だった。
「あ、今、黒瀬魔王引いただろう?」
「……引いてない」
「いやいや絶対黒瀬が魔王だって」
「…………」
そんな感じで和気あいあいとした空気で修学旅行が始まった。鮫牙も輪の中に加わっていたがふと思い出したように言う。
「そう言えば前は旅行の途中でデスゲームに巻きこまれたんだったな。でもこの調子なら今回は大丈夫そうだな」
「「「「「…………」」」」」
その発言に周囲の皆から微妙な空気が流れてきた。
「うん? どうしたんだよ皆?」
「いやいやどうしたじゃないだろう」
「お前、今すげーフラグ立てたぞ」
「は? いやいやフラグってこの状況でそんな馬鹿なことが起きるわけ――」
「お、おい見ろよ! 何か窓の外おかしくないか?」
誰かが突如叫んだ。虎島や杉崎が眉を顰める。嫌な予感がしながらも窓の外に目を向けると何だか良くわからない空間が広がっていた。
やたらとぐにゃぐにゃしていて時計みたいな物体があっちこっちに浮かんでいる。
「あぁもうだから言ったんだよ鮫牙!」
「お、俺のせいかよ!」
「はぁ、ま、どうせこうなるとは思っていたよ」
「いやいや、でも修学旅行でデスゲームに巻き込まれるなんてあるわけないよね?」
「「「「「海渡がそれ言うかよ!」」」」
全員の総ツッコミを受ける海渡であった。
そしてリニアが動きを止め、乗車口が開いた。
「え? 何? 着いたの?」
「でも何か変じゃない?」
「……仕方ないな」
「あぁそうだな。おーいここは先に俺達が出るから皆はちょっと待機していてくれ」
杉崎と虎島が皆に呼びかける。この状態で誰も彼もが外に飛び出たら危険だと判断したのだろう。
「私はご一緒しますわ! 勿論アカオも一緒に!」
「ガウ!」
「主が出るなら私も出るぞ」
「キラちゃんを一人には出来ませんからね」
「いや、俺が付いてるぞ?」
「だから心配なのよ」
「何でだよ!」
「キュッ、キュッ~」
マックス、キャラット、フォワードは相変わらず虎島に塩対応だった。スライムのミラクだけは虎島の頭を器用にポンポンっと撫でて励ましている。
こうしてとりあえず腕に覚えの有る面々がリニアの外に出た。
「なんだこりゃ。まるで宇宙だな」
外に出て、虎島が思ったことを吐露する。確かに辺り一面空は黒く星々が輝き続けていた。海渡達が出た時間で考えればまだ昼間の筈だが、太陽の光は感じられず、その代わりに周囲には様々な惑星が確認できた。
「地球じゃないのは確かなようだな」
「地球と言うより月みたいよね」
「でも太陽は見えないね」
『どうやら来たようだな』
それぞれが思ったままを口にしていると、どこかから威厳のある声が降り注いだ。見上げると上空に王冠をかぶったいかにも王様か皇帝かといった雰囲気のある男が浮かんでおり。
「おい、あんたか俺達をここに連れてきたのは?」
「ふん、随分と頭が高いことだな。まぁ良い。折角の参加者だ見逃してやるとしよう」
「参加者? 見逃す? 一体何を言ってる?」
杉崎が訝しげにその男を見た。すると王冠を被った男がどこからともなく杖を取り出し言い放つ。
「ようこそ各世界より選ばれしツワモノどもよ。さぁそれではこれより始めようとしよう。世界の命運を賭けた神々のデスゲームを!」
本作は最終章を迎えておりますが、同時に新連載も始めました。
『前世がサムライとニンジャだった俺の天職が『サムジャ』だった~不遇職と馬鹿にされたが実は互いの長所を引き出した最強の天職なのです~』
刀や黒装束がないと役に立てないとされた侍と忍者。しかしサムジャならばその欠点はなくなり最強の長所だけが残る!そんなサムジャとなった主人公の話です。剣と魔法の世界を侍の技と忍法で無双します。
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