第百二十話 侵略は終わらない?
虎島が異星人を見事やっつけた。破壊光線も何のその、彼の盾の力で光線を跳ね返し完全に消し去ったのである。
「おーい、倒したぞー」
「おお、やるな虎島」
虎島がロボットを見上げながら手を振った。その戦いぶりを見た皆が彼を労う。一方あまり虎島達を知らない少年少女は顎が伸び切るほどに驚いていたが。
「お、おいおいマジかよーーーー!」
「異星人を倒したぞ!」
「何なの? 必殺技でないと倒せないんじゃなかったの?」
「思ったよりも弱かったとか?」
「いやいやだって光線とか出してたし!」
「きっとそれもヴァーチャルなんだよ。でないと説明つかなくね?」
あ~だこ~だと彼らの実力を知らない子ども達が話し始めた。本当の出来事だとは思えなかったようであり彼らにとってはそれぐらい信じられない出来事なのである。
「虎島今のでどれぐらいで返したんだ?」
「ざっと一万倍ってとこか。爆発付きで」
「それで倒せたのか? 意外と脆かったな」
虎島と杉崎がそんな会話をしていた。それを鈴木がどことなく冷めた目で見ていた。
「何か知らないうちに皆して人外になってきてるわね……」
「あはは、でも、これで解決だよね?」
『ふざけるな! これがそんな甘いものなわけないだろう!』
ほっと胸をなでおろす委員長だったが、しかしサクリファイスは語気を強め彼らに警告した。そのうえで虎島には一旦中に戻ってもらう。
『確かに今の異星人は倒したようだ。だが、戦いはこれで終わりじゃない。見ろまた異星人がやってくるぞ! 次こそは誰かに生贄になってもらう!』
「異星人ってそんな連続でくるものなの?」
『黙れお前らが余計なことをするから予定が、いやとにかく、誰か一人決めろ!』
「なら私が」
『ふむ、女かよもや最初に決める生贄が女とはね。男も情けないが覚悟決めたなら』
「私が戦います!」
『話を聞いていたのかお前は! 生贄を決めろと言ってるだろう!』
「生贄無しで倒せるならそれでいいよね?」
「そうよ何言ってるのよ」
海渡や仲間たちが文句を言う。サクリファイスがうめき声を上げた。
ちなみに声を上げたのは虎島と中々進展しない幼馴染の景である。
「何かそれほど興味ない情報来た!」
「興味ないとはなんだ!」
「あ、す、すみません……」
突っ込んでみるも虎島が切れたのですぐにシンキチは謝った。彼からしてみたら深刻なのである。
「景がいくなら私も出るわよ!」
「主を守ることこそが騎士の務め!」
「キラちゃんを危険な目には合わせません。ところで異星人って食べれます?」
「何か一人今しれっと怖いこと言ったーーーー!」
景の親衛隊とも言うべき3人もどうやら一緒に戦いたいようだ。キャラットに関しては食欲もあるようだが、異星人が食えるかはさだかではない。
「流石に4人は駄目じゃないか?」
『そういう問題じゃないんだよ! 4人でも女で異星人が倒せるか!』
「酷い偏見ですね」
「私は騎士になった時点で女など捨てている!」
「マックスちゃん美人だからそれは勿体ないよ」
「そうよあんたおっぱいあるくせに!」
「……おっぱいの話はやめようね?」
「「「は、はい――」」」
景の見えない威圧に3人が黙った。
『何だこの緊張感のなさ! そうかいそうかい。そんなに死に急ぎたいなら好きにすればいい。だがお前らが死んでも生贄にはカウントしないからな』
そして4人が外へ放り出された。
「あいつら大丈夫か?」
「キュッキュッ~」
虎島が心配そうにロボに設置されたモニターから景達を見守る。すると間もなくしてわらわらと大量の異星人が姿を見せた。
大きさこそ虎島が戦った相手より小さいが、とにかく数が多いのだ。
「お、おいおい! なんだよあの数!」
「そんな、こんなに沢山出てくるなんて聞いてないわ!」
周囲がどよめき出す。彼らの中では異星人は一匹ずつやってくるというイメージがあったのだろう。
『ば~か。だれがいつ異星人は一体ずつやってくると言った? 見ての通り大量の異星人が一気に押し寄せることもある。残念だったがあの女達も可愛そうに。きっと無残に殺されることだろう。だから言ったのさ。このロボの必殺技なら例え数がいようと――』
「うぉおお! いくぞ! 奥義! 次元断裂十字果断!」
マックスが剣を二回振り回す。高速の剣技によって空間に巨大な十文字が刻まれ次元が裂けやってきた異星人の大群が次々と飲み込まれていった。
「集え天の光、邪なる存在を打ち消し滅ぼさん――究極神聖魔法ジャッジメントデスノーツ!」
キャラットが天を仰ぎ両手を広げると天から無数の光が降り注ぎ、異星人達を飲み込み消し去った。
「消し炭になりなさい! 絶対焼滅ブルーフレアファイナルストライク!」
フォワードは剣に青い炎を纏い、そのまま異星人の群れに突っ込んだ。蒼炎の焔と化した彼女が駆け抜けた後には蒼い炎の爆発が続き、異星人があっというまに消し炭に成り果てた。
そして――
「降り注げ星の煌めき――ララーキコミクムイタ!」
景の超魔法によって億を超える星々が降り注ぎ残りの異星人を殲滅した。
『~~~~~~~~~~~ッ!?』
その光景に口をあんぐりとあけたサクリファイスが声にならない声を上げる。
そして結局苦戦もなく4人が戻ってきた。
「やったな景!」
「キラに近づくな!」
「主には指一本触れさせん!」
「キラちゃんの半径40,075 km以内に近づくことは許しませんよ」
「それ地球の外周の長さだよね! 半径ってもう近づけないよね!」
シンキチはツッコミを忘れない。そして3人に阻まれた虎島はぐぎぎと歯牙を噛み締め悔しがっった。
「な、なぁもしかして異星人って大したことないのか?」
「女の子にやられるようじゃね」
「だったら生贄ってなんだったんだ?」
「こんなの詐欺だよね。紛らわしいからあの機関に電話しないと」
さて、彼女たちの活躍によってロボットの中にいる他の少年少女達も段々と異星人の強さに疑問を持ち始めていた。もっともこれは海渡の周りが強すぎるから出来ていることであって、そうでなければとても対処できるものでもないのだが。
『黙れ黙れ! 異星人はまだまだ来るぞ! 見ろやってきたのは世界を食い荒らす暴食の暴君! 暴れ暴豚暴帝のバイオレンスエンペラーピッグだ!』
「暴の字多すぎだろう! おまけにバイオレンスってどんだけ暴力的なんだよ! そのわりにピッグってそこだけちょっと可愛らしいな!」
『突っ込むなぁ~』
シンキチのツッコミも炸裂したところで巨大な豚の化物が姿を見せた。二本足で歩く豚は見た目にはオークに近い。
『さぁどうする! 放っておいたら北海道ぐらいは片手でおつまみ代わりに食べてしまうぞ!』
サクリファイスが叫んだ。どうやらこの異星人にとってみると北海道はスナック感覚でバリバリいけるようだ。
「で、デケェ! あれはヤバイ豚だぞ!」
「大したことないなんて生意気なこと言ってごめんなさい!」
「ひぃ~おがぁぢゃーーーーん!」
さっきまで強気になっていた少年少女が恐怖に慄き叫びだした。忙しい連中だなぁと海渡は思う。
「ここは委員長の出番だね!」
「そうだな。何でも食べるなら委員長以外ありえないぜ」
「頑張ってな委員長」
「えぇええ! 私が!?」
暴食王となれば委員長の出番。皆の気持ちが一つになった瞬間だった。
『馬鹿か。奴は毒だろうとなんだろうと関係ない好き嫌いなく食べ尽くす悪食の豚だ。そんなおっぱい以外特徴のなさそうな地味な女に一体何が――』
「BUHOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!?」
だがしかし、世界を食い荒らす暴食の暴君。暴れ暴豚暴帝のバイオレンスエンペラーピッグは委員長の魔法料理を喰らって倒れ腹を壊して死んだ。
「委員長の料理どんだけだよ! もはや核以上の驚異だよ!」
『突っ込むなぁ~』




