第百十三話 カード対決
「わ、わかったわよ! だったらこのゲームに乗ってやるわよ!」
鈴木は覚悟を決めた。カドダスの言っていることは滅茶苦茶だが、勝負に乗らなければ委員長を助けられない。
「でも、これは公平な勝負なんでしょうね? 聞いてるとゲームを作ったのはあんたなんでしょう?」
「はは、勿論それは保証するよ。必ず勝てるゲームなんて面白くないだろう? 僕のカードも数あるカードからランダムに選ばれるようになっている。本来ならデッキを組むところだろうけど、それだと不公平だもんね」
それは当然そうであった。なにせ鈴木にしてもデッキを組ませてもらえず、あるのは最初に与えられたカードセットだけだ。
「それに有利か不利かで言えば君のほうがそれなりに有利だよ。完全にカード化したものよりまだ意志が残っているカードの方が効果も大きいし強いんだ。だから君の知り合いの五枚を引き当てる事ができればかなり有利じゃないかな?」
カドダスが楽しそうに教えてくれた。つまり的確なタイミングで委員長や美狩など強力なカードを引き当てることができれば勝てるかも知れない。
「さて、では勝負を始めるとしようか。ルールは大丈夫かな?」
「――一応ひと通り見たからね」
「オッケー。それじゃあ先ずはカードを引くとしよう」
場に置かれたデッキから五枚を先ず引き先攻と後攻を決めてバトルを開始する。
それからは確かにカドダスも特に卑怯な真似をしてくる様子はなかった。一進一退の攻防が続き。
「来たわ! マジックドール美狩! リッチ小林にアタックよ! 特殊効果アンデッド特攻で撃破!」
「あちゃ~やられちゃったねぇ」
美狩によってカドダスのマジックドールが粉砕された。ちなみにゲームではマジックドールというカードとトリックカードで構成される。マジックドールは直接相手を攻撃したり相手からの攻撃をガードするカードだ。特殊効果が備わってるカードもある。
そしてトリックカードはマジックドールを支援したり、トラップとして機能するカードとなる。
「どう。これで私が有利ね」
「うん、ではトリックカードオープン。怨念発動。アンデッドを倒したマジックドールはこれで動きは封じられたよ」
「な、そんな――」
そしてその後のカドダスのアタックで美狩が倒されてしまう。ライフが減り鈴木が押され始めた。
このライフがゲームの命運を決める。攻撃を受けマジックドールが倒されるとライフが減ってしまう。そしてライフがゼロになった後、更に一撃受けると負けだ。
「ならこれよ! 委員長にフルコース、それを相手に振る舞うわ!」
鈴木はこのターンで一気に勝負を決めようとした。委員長の料理でカドダス側のマジックドールが消えライフが減った。
「へぇやるじゃないか」
「ふふ、委員長の料理は無敵よ!」
鈴木は勝利を確信しているようだった。手札にもまだまだ料理系のカードが残っている。
「あの鈴ちゃん!」
「何、委員長?」
「どうして、私の料理で相手のカードが全滅するの?」
委員長が疑問の声を上げた。そう、彼女は自分の料理の破壊力にいまだ気づいていない。
「……た、ターンエンドよ!」
「鈴ちゃん!?」
しかし、鈴木は委員長の質問には答えなかった。そしてコストがゼロになった為、ターンを終わらせる。プレイヤーが行動できるのはこのコストが残ってる間だけだ。コストがなくなったらターンを終わらせ相手にターンが移る。
「マジックドール。悪食マイウをセットだ」
カドダスがフィールドにマジックドール設置。更に何枚かのカードを伏せた状態で設置しターンが終わった。
「どんなことをしても無駄よ! 委員長の料理を振る舞うわ!」
マイウに料理で攻撃を試みる。だがなんと、悪食マイウは委員長の料理を食べてしまった。
そしてゲフッ、とゲップをし爪で歯をほじりながら言った。
「糞不味い」
委員長の心が砕け、カードが消えた。
「い、委員長ーーーーーー!」
「ははは、これでまた主力となるカードが消えたようだね」
鈴木がくっ、と呻き声を上げた。このバトルで勝つには鈴木の知りあいのカードが大事になる。だがその内の二枚を失ってしまった。
これはまずい。しかも相手にはまだ余裕がある。
「何かいいカード!」
鈴木がカードをドローした。そして出てきたのは。
「や、やぁ」
「田中かよ!」
鈴木が叫び、頭を抱えた。どうしたものかと考えるが他に使えそうなカードもない。フィールドにカードを起き、田中でアタック!
だが全く通じなかった。そしてターンが終わり相手の攻撃。田中は死んだ。
「弱すぎーーーー!」
そして鈴木のターンが来た。カードをドロー。
「や、やぁ」
「また田中かよーーーー!」
鈴木が吠えた。ちなみに田中のカードの特殊効果はこうであった。
・無限の田中
例えやられても消えることはなくデッキに戻る。
・不運の田中
出てほしくない時に限って出てくる。
・空回りの田中
全てが空回りする。攻撃面でも防御面でも役に立たない。
・しつこい田中
手札に入った田中は破棄出来ない。
・娘ラブ
娘のカードがフィールドに出ていれば能力が上がる。
※現在娘のカードが存在しないため未実装。
「クソカードだぁあああああ!」
鈴木が絶望した。
「僕のターンだね。ならここで増殖のカード。君の田中を増殖するよ」
「へ?」
なんとカドダスはどうやら田中を増殖させデッキに戻したようだ。そしてターンが移る。
「くっ、ドロー! た、田中! これも田中、あれも田中! 何でよぉおおお!」
気づいてみれば田中のフォーカード状態であった。
「はは、どうやら頼もしい仲間が手札に揃ったみたいだね。さて、どうする? 君のライフはもうゼロだ。次の一撃でもう僕の勝利だよ」
そう。鈴木のライフはもうゼロである。ルール上、ライフがゼロでもすぐには死なないが、当然この状態で一撃でもダメージを負えば鈴木の負けだ。
「ど、どうしよう……」
鈴木は迷った。手札には田中が四枚。だが、こんなものを出したところで勝てるわけがない。そして残りの一枚はイージスの盾。どんな攻撃からでも一度だけでも守ってくれる。鈴木はこれをいざというときまで残しておきたかった。
だが田中がいる状態ではこんなもの持っていたところで意味はない。そうなると手はもう一つしか残ってなかった。
「カードを一枚破棄してデッキからドロー! お願い良いカード来て!」
願いを込めてカードを引いた。そして出てきたのは。
「やぁ」
「海渡ーーーーーー!?」
出てきたのは海渡であった。これには鈴木も驚きである――




