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可愛い〈衣装〉が僕の武器! ~現代ダンジョンのコスプレ攻略記~  作者: 旅籠文楽


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60. [夢渡り]:猫屋敷ハル - 1

なんだか上手く書けなくて1日遅れました。すみません。

 



「こんばんは、初めまして!」

「――ひゃう⁉」


 気がつけば、とても可愛らしい女の子の顔が目の前にあったから。

 驚きのあまり、思わず悲鳴が漏れてしまった。


 慌てて周囲を見回すと――そこは間違いなく、自宅の私の部屋だ。

 隣の部屋にはお兄ちゃんが、そして下の階にはお父さんとお母さんが眠っているハズだけれど……。

 もしかしたら、今の私の悲鳴で起こしてしまったかもしれない。


「驚かせちゃってごめんなさい。最初に言っておくと、ここは夢の中(・・・)です」

「ゆ、夢の中……?」

「はい。僕の来訪を許可してくれたと思いますが……違いますか?」


 少し心配そうな表情で、こちらを覗き込んでくる女の子。

 とても近い距離にある顔に、ちょっとドキドキしながらも――。

 その顔に、とても見覚えがあることに、今更ながら気づいた。


「あれ……? も、もしかしてユウキくん?」

「はい、そうです! 良かった……たぶん配信を見てくださったんですよね?」

「う、うん。配信は見ました」


 私は暇な時に自室のベッドでゴロゴロしながら、掃討者の人達がダンジョンから配信している動画を、よく視聴しているんだけれど。

 お気に入りの掃討者みたいな人はいなくて。大抵は『ConTube』でリアルタイム配信が行われていて、人気急上昇ランキングに入っているものから、適当に選んで視聴していたりする。


 今日もお昼ごはんに素麺を食べたあと、食後すぐに横になるのは良くないかなあと思いつつ、ランキングで1位の配信を視聴し始めたんだけれど――。

 そこに映っていたのは、よく知っているクラスメイトの姿だった。


 ――高比良ユウキくん。

 私と同じ『陰キャ』属性の生徒で、クラスではとても目立たない男子だった。

 その容姿が大きく変化してしまう前までは――の話だけれど。


 クラスに数人だけいる仲の良い友達から聞いた話だと、彼はダンジョンで『祝福のレベルアップ』というのを経験したらしい。

 その影響で、種族が人間ではなく『夢魔(サキュバス)』に変化して。

 背が随分と縮み、髪や肌の色も普通の人とは全然違うものになってしまった。


 以前はやや中性的に見えはしても、ちゃんと男子だと判る容姿だったのに。

 今ではどう見ても……8~9歳ぐらいの美少女(・・・)にしか見えない。


 正直を言って、私よりもユウキくんのほうが、遥かに魅力的な女の子だった。

 というか、較べるのも烏滸(おこ)がましいレベル……。


「ユウキくん。私の顔に、見覚えない?」

「えっ……? 見覚え、ですか……?」

「うん。具体的には同じクラスで、ユウキくんから後ろに2つ、右に1つずれた席で見た覚えとかないかな?」

「ええっ⁉」


 ユウキくんが、私の目を覗き込むようにしながら、更に顔を近づけてくる。

 彼は何も意識していないんだろうけれど――まさかのガチ恋距離(・・・・・)

 長い睫毛までよく見えて、私の心臓がバクバクと跳ね上がった。


「ああっ……! ね、猫屋敷さん⁉」

「は、はい。猫屋敷です。よかった、認識されてなかったらどうしようかと」

「いやいや、流石に認識してますよ! 中学生の時なんて3年間ずっと同じクラスだったじゃないですか‼」

「うん。3年生の時は、一緒に図書委員会もやったよね」


 私たちは趣味が完全なインドア系で。

 漫画とか小説とかゲームとか、そういったものにお互い詳しかったから。

 図書委員会の仕事の傍らに趣味の話を交わすだけでも、とても楽しい時間を過ごせたのを覚えている。


「はい、もちろん覚えてます。漫画は今でも描いてるんですか? もし描いてるようでしたら、是非見せて欲しいです!」

「あああああ……! そ、そのことは、忘れてください……!」


 まさか急に漫画の話になると思わなかったから――思わず顔が熱くなってくる。

 中学生の頃の私は、わりと健全な日常モノの漫画を描いていて、仲の良い友達によく見せたりしていた。

 3年生の時には同じ委員会になって話す機会が増えたユウキくんにも、しばしば見せていたぐらいだ。


 ……でも今は、ちょっと見せられないかな。

 漫画自体は今でも――むしろ高校生になってからのほうが、ずっと精力的に描いてるぐらいなんだけれど。

 今は、その……えっちな内容の漫画ばかり、描くようになっちゃったから……。


「ま、漫画は恥ずかしいから、絶対に見せられないけれど……。い、イラストでも良ければ、ちょうどユウキくんのことを描いたのがある、よ?」

「えっ⁉ み、見たいです!」

「う、うん。ちょっと待ってね」


 ベッドから立ち上がり、自分の机のほうへ行く。

 そこには昨晩、眠る前まで描いていたイラストが――あるハズなんだけれど。

 どこへ仕舞ったかな……。


「それにしても、本当に夢の中で逢えるなんて……」


 机や棚の引き出しを調べながら、私が半ば無意識にそう零すと。

 ユウキくんが「あはっ」と笑って、楽しげな表情をしてみせた。


「やっぱり、普通は信じられないですよねえ」

「ユウキくんが嘘をつく人じゃないことは知ってたけれど。でも現実問題として、こんなことが可能だとはなかなか信じられないよ」

「無理もないですよ。僕自身も最初は、この能力に随分と戸惑っていましたから。でも――これからは毎晩、こうしてお話ができますね?」

「ま、毎晩……⁉」

「はい。猫屋敷さんが僕の来訪を望んでくれるなら、ですけれど」


 今みたいに――明日も、明後日も、それ以降も。

 ベッドで眠る度に、ユウキくんと会うことができるのか。


 高校生になってから、ユウキくんは親友の一条ダイキくんといつも絡んでいて、私とはあまり話す機会がなくなってきてたんだけれど……。

 毎晩逢えるなら、その時間を一気に取り戻すことだって、できちゃいそうだ。


「ごめん、イラストどこに置いたんだろ……。探しても見つからないや」

「あっ。ごめんなさい、僕から先にお教えするべきでした。夢の中の世界は現実を()してはいても、完全に別物の――作り物の世界なんです。なので現実世界でどこかに置いたものが、同じ場所にあるとは限らないかもしれません」

「え、そうなの?」

「はい。ですが夢の中の世界は基本的に、その夢を見ている人が自由に改変できますから。猫屋敷さんが『イラストを出したい』と念じれば、すぐに世界が(こた)えてくれると思いますよ」

「……ふふ。『世界が応えてくれる』って言い回し、ちょっと中二病っぽいよね」

「そ、そういう指摘しないでくださいよ……。なんだか恥ずかしくなってくるじゃないですか……」


 くすくすと私が笑ってみせると、ユウキくんも少しばつが悪そうな表情をしながら笑ってみせた。


 とりあえず、言われた通りに心の中で(昨晩配信のアーカイブを見ながら描いたユウキくんのイラストよ出てこい!)と念じてみると。

 その瞬間――私の目の前に、数枚の用紙が出現する。

 それは間違いなく昨晩、眠る前に私がユウキくんを描いた紙だった。


「ど、どうぞ。あんまり上手くないけど……」

「ありがとうございます! わ、以前に較べてすごく上手くなってる……!」


 高校生になって、えっちな絵を描くことにドハマりして以降、私は毎日欠かさず10枚以上のイラストを描いている。

 なので流石に中学生の頃に較べると、画力が上がっている自負はあった。


「わぁ……! 僕が着ている各『衣装』のイラストですね! 配信を視聴しながら描いてくださったんですか?」

「う、うん。流石に生配信じゃなくて、あとでアーカイブ動画をもう一度見直しながら描いたヤツだけどね。……こういうの描かれるの、嫌じゃない?」

「全然嫌じゃないです! っていうか僕もオタクなんですから、こういうのを描いてもらえるの、嬉しいに決まってますよ!」


 何度も繰り返し「ありがとうございます!」と口にしつつ、満面の笑みを浮かべながら、イラストに見入っているユウキくん。

 その反応が――オタである私に、刺さらない筈がなかった。


 絵を書いただけで、その対象がリアルに目の前で超超超喜んでくれるんだぞ?

 こんなの、絶対『推し』になるに決まってるじゃないか――。


「わ、《使用人の衣装》のイラストまである! 今回の探索では殆ど着てなかった筈なのに、凄い……!」

「えっと、ごめんなさい。使用人の衣装って、どれのことだっけ?」

「メイド服のことです!」

「ああ、あれって凄く可愛いよね……! スカートも超ミニで」

「そ、そうですね……。短すぎて、結構恥ずかしいです……」


 そう告げながら、もじもじと恥ずかしそうにするユウキくん。

 なんだこの可愛すぎる生物。女神かな? ああ、女神だったわ。


「あはは……。僕が恥ずかしがってたからなのか、イラストに(えが)かれている僕も、すごく顔を赤らめていますね」

「……? 私、そんな風に描いたんだっけ?」


 コピックで(カラー)を入れたこと自体は覚えているんだけれど。

 衝動のままに描いていたので、どんなイラストを描いたかはうろ覚えだ。


 確認すべく、ユウキくんの脇から、自分が描いたイラストを覗き込むと。

 そこに描かれていたのは――。


(やっべ……)


 メイド服を着てはいても、間違いなく『えっちな絵』だった。

 彼の太ももにベルトが足されていて、そこにピンク色の機械(・・・・・・・)が挟まっている。

 その機械からはケーブルが出ていて……彼の短いスカートの中に入っていた。


 つまり、この絵は『ユウキくんが恥ずかしがっているイラスト』ではなく。

 私の趣味が大いに反映された『ユウキくんがえっちな機械で責められ、顔を赤らめているイラスト』なわけだ。


「この、僕の太ももにある、ピンク色のヤツって何ですか?」

「な、なんだろーねー……」


 ――それはね、『ピンクローター』って言うんだよ。

 ダイヤルを回すと振動が強くなる、不思議な大人のグッズなんだ。


「ケーブルが僕のスカートに繋がってますが、これは……?」

「き、きのせいだよ……」


 ――そのケーブルの先にはね、ぶるぶる振動する不思議な何かがあるんだよ。

 私の脳内のユウキくんをとっても気持ちよくする、魔法のアイテムなんだ。





 

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― 新着の感想 ―
主人公がピュア過ぎて脳が焼かれる(笑)
夢からBANされそうなクラスメイトは草
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