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可愛い〈衣装〉が僕の武器! ~現代ダンジョンのコスプレ攻略記~  作者: 旅籠文楽


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42/61

42. 新しい衣装はとても見慣れて。

 


     *



「わっ」


 それから更にパペットドッグを相手に、もう1戦したところで。

 戦闘後に突然、僕の身体が強く光り輝いた。


 ――レベルアップの演出(エフェクト)だ。

 僕にとっては3度目の経験だけれど、何度でも相変わらず嬉しい。


「おめでとう、ユー!」


《おめ!》

《おめでとー‼》

《おめでた!》


「ありがとうございます!」


 すぐに祝ってくれたサツキお姉さんと視聴者の人たちに、感謝から頭を下げる。

 ドローンに向かってお辞儀するのは、まだちょっと慣れないけれどね。


「ちょっと確認しても良いですか?」

「もちろんだとも、アタイのことは気にしなくていいよ」


 サツキお姉さんがそう言ってくれたので、その場で足を止めて、一旦ステータスカードを確認させて貰う。

 すると今回も、しっかり新しい『衣装』が増えていた。




+----+

タカヒラ・ユウキ

 夢魔(サキュバス)/17歳/男性


  〈衣装師〉 - Lv.3 (1855/4120)


  [筋力]  4+2

  [強靱]  4+2

  [敏捷] 11+2


  [知恵]  8+2

  [魅力] 13+2

  [幸運]  9+2


  精気:593


-

異能(フィート)


 [夢魔][夢渡り]

 《衣装管理》《戦士の衣装》《神官の衣装》《学士の衣装》


◇スキル


 〈剣術Ⅰ〉〈棍棒術Ⅰ〉〈盾術Ⅰ〉


+----+




 追加された衣装は《学士の衣装》というらしい。

 あと能力値も……多分[敏捷]と[幸運]が1ポイントずつ増えたかな?


「新しく増えたのは《学士の衣装》というものみたいなんですけれど。学士って、大学を卒業したら貰えるやつですよね?」

「そうだね、大学卒業者に与えられる学位を指すことが多いかな。あるいは学者のことを指したり、単純に『学ぶ人』って意味でも使う言葉だけど」

「学ぶ人……。じゃあ僕みたいな高校生も学士ってことですか?」

「もちろん。高校生でも小学生でも、立派な学士だとも」


 そうなると、意味の幅が結構広めの語句になりそうだけれど。

 じゃあ《学士の衣装》って、一体どんな『衣装』なんだろう?


 ちょっと予想がつかないけれど……。

 まあでも、とりあえず実際に着てみれば判ることかな。


「――《学士の衣装》!」


 試しに宣言してみると、僕の服が一瞬で別の衣装へと変わる。

 それは『新しい衣装』である筈なのに――なぜか僕にとっては、生地の色合いとか質感とかが、非常に見慣れたものであるような気がした。


「んー……?」


 見覚えは確かにあるのに、それが何なのか思い出せない。

 鏡でもあれば、自分の姿をしっかり見確かめることができるから、思い出せそうなんだけれど……。着用中の服って、当事者視点だとちょっと確認しづらいよね。


 とりあえず、下半身に履いているのはスカートみたいだ。

 僕の膝よりは少し上ぐらいまで丈がある、気持ち短めのプリーツスカート。

 これも区分としては一応ミニスカートになるのかな?


 スカートより下側を見ると、黒のハイソックスも履いているようだ。

 靴は普通に革靴。防御性能は無さそうだけど、履き心地は良い。


 上半身に着用しているのは……なんだろう、これ。

 結構しっかりとした縫製の服で、礼服っぽさもあるような気がする。


「可愛いすぎる。天使か」

「ふえっ?」


 僕の姿をまじまじと見つめていた、サツキお姉さんが唐突に零した言葉に。

 驚かされると同時に――言葉の意味を理解して、なんだか僕は、ちょっと恥ずかしくなってきてしまった。


 ほのかに顔が熱くなってくる。

 ……可愛いって言われるの自体は、とても嬉しいんだけどね。


《いや、マジで可愛すぎる》

《そら赤鬼も呆然としますよ。だって天使が降臨してるんだもん》

《どっかの制服かな? 流石にデザインで判別はできないが》

《普通にお洒落な服だし、実際に使われてる制服じゃないのでは?》

《いや、最近はこれぐらい洒落てる制服も珍しくない》

《制服に詳しい有識者はいらっしゃいませんかー!》

《都内の学校には結構詳しいけど、これは見覚えないなあ》

《↑おまわりさん、このひとです》

《なんでや⁉ まだ何もしとらんやろ⁉》

《まだ、って言ってる時点でもうね……》


「サツキお姉さん」

「………………」


 どこかぼんやりとした表情をするばかりで、サツキお姉さんの返事はない。


「サツキおねーさーん‼」

「――うおっ⁉ な、なんだい?」


 僕が大きな声で呼びかけると、ようやくお姉さんから反応(リアクション)があった。

 ダンジョンの中なので、集中を欠き過ぎるのは危ないと思うんだけどな。


「サツキお姉さんって、いまスマホ持ってます?」

「あ、ああ、もちろん持ってるけど……」

「ちょっと僕のこと、撮ってみて貰えませんか?」

「へっ⁉ い、いいのかい?」

「ぜひお願いします。自分の格好がどんなのか、見てみたいので」


 というわけで、サツキお姉さんにスマホで写真を撮ってもらう。

 カシャッと小気味良い電子音が、ダンジョンの中に響いた。


「どうですか?」

「最高に可愛いね」

「……あ、ありがとうございます。いえ、そうじゃなくて……撮った写真を見せて貰っても良いですか?」

「も、もちろんだとも」


 サツキお姉さんから手渡されたスマホを確認してみると。

 そこに映っている、僕が着ていた衣装は――。


「ああ――これって、僕が通っている学校の、女子の制服ですね」

「えっ、そうなのかい?」

「間違いないと思います。道理で見覚えがあったんだ……」

「ユー、あまり配信でそういうのは言わないほうが良いんじゃないかい?」

「あっ」


 そういえばコレ、リアルタイムに配信されてるんだった。

 確かに、個人情報に繋がるようなことは、あまり言わないほうが良かったかも。


「……すみません、軽率でした」

「思わず訊き返しちまった、アタイも悪かったよ……」


《大丈夫大丈夫、俺らゼッタイ悪用はしないから》

《ユウキくんが嫌だと思うなら、俺らは誰も調べたりしないよ》

《毎回楽しみにしてるのに、配信が減ったら嫌だしな》

《夢で逢えなくなったら人生の潤いが無くなるし……》

《もし悪さするヤツがいたら、特定するかんねー?》

《そうだな、間違いなく視聴者2000人を敵に回すことになるぞ》

《この配信見てるのは、ユウキくんの熱心なファンばかりだからね》

《ファン(信者)》

《何かあれば、マジで聖戦が始まることになるぞ……》


 うっかりやってしまった僕のミスを、すぐに配信を視聴してくれている人たちがフォローしてくれる。そのことが、とても嬉しい。

 まだ配信初めてそんなに日数も経ってないんだから、ファンなんている筈がないのにね。

 本当にみんな優しくて、とても僕のことを気にかけてくれている。


「あっ、スマホありがとうございました。画像はもう消しちゃっていいので」

「有難く待ち受けにさせて貰うよ」

「そ、そうですか……?」


 いや、サツキお姉さんが良いなら、別にいいんだけど……。

 女装してる男の写真を待ち受けにして、何が楽しいんだろう。


「そういえば結局、その制服にはどんな効果があるんだい?」

「あっ――すっかり失念してました。確かにそれは重要ですよね」


 改めて僕は、ステータスカードに書かれた《学士の衣装》という文字列に注目しながら、心の中で(詳細を知りたい)と意識してみる。

 すると、いつも通り衣装の詳しい情報がカードに表示された。




+----+

《学士の衣装》/異能


 【現在の衣装レベル:0】


  ・最大耐久度:200

  ・防御力  :0


  ・衣装異能 :《体験学習》《選別射撃》

  ・衣装スキル:〈銃撃術Ⅰ〉


  ・召喚可能武器:IP45


 いつでも『学士の衣装』を召喚して瞬時に装着できる。

 衣装レベルに応じて様々な銃器などを召喚して装備できる。


-

《体験学習》/衣装異能


 見て学んだ様々なものを一時的に修得できることがある。


-

《選別射撃》/衣装異能


 味方と認識している対象には射撃が命中しなくなる。


-

〈銃撃術Ⅰ〉/衣装スキル


 銃器を用いた射撃の技術が向上する。


+----+




「……へ?」


 思わず、あまりの驚きが軽く声に出てしまった。

 でも、それも仕方のないことだと思うんだ。


 ――様々な『銃器』を召喚して装備できる、って一体なに?





 

-

ローファンタジー日間12位、週間26位に入っておりました。

日間総合でも300位ギリギリに入っててびっくり。


いつも応援くださり、ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
ファンタジー銃も有りなんかなあ ビームライフルで無双しよう
こんにちは。 >様々な銃器を召喚可能 これは強そう! いきなりデザートイーグルやM500(両方マグナム弾を使う銃器)みたく素人が撃つには難しいやつはアレですが、UZIやMP5みたく軽量なサブマシンガ…
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