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可愛い〈衣装〉が僕の武器! ~現代ダンジョンのコスプレ攻略記~  作者: 旅籠文楽


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35/61

35. 多すぎる精気と夢の記憶。

 


     [1]



「いやいやいや、多い多い多いよ……」


 翌朝、目を覚ました僕が最初に吐き出した言葉がそれだった。

 『夢魔(サキュバス)』である僕は、普通の人間とは違い、生きるためには睡眠を必要としない。やろうと思えば何日でもずっと起きたままでいられるし、そもそも眠くなること自体が無いのだ。

 もちろん活動時間に応じて疲労は溜まるから、身体を横にして休むこと自体は必要だけれど。それだけなら1時間もベッドの上でゴロゴロすれば充分だ。


 とはいえ、生きる上では必要なくても、睡眠は『夢魔(サキュバス)』にとって重要な役割を果たすものでもある。

 睡眠中に『記憶の整理』が行われるからだ。


 と言っても、僕自信が得た記憶を頭の中で整理する、というわけじゃない。

 僕の分体(ぶんたい)が――つまり、他の人の夢へと出向した僕が、相手の夢の中で見知ったことや経験したこと。

 そうした情報が『睡眠』している間に、本体の僕に共有されるのだ。


 というわけで、今日の僕の睡眠時間は朝の8時から9時までの1時間ほど。

 敢えて夜ではなく朝、それも早朝をもう過ぎた頃に眠っているのは、夢の記憶が共有される都合上、他の人たちが起きた後のタイミングのほうが好ましいからだ。


(……ぜ、全部で98人? なんでこんなに……?)


 1時間の睡眠中に、僕の分体から共有されてきた『夢の記憶』。

 その数――実に98人分。


 昨日までは5人分だけだったのに。その20倍近い量の記憶が、一気に頭の中に押し寄せてきたものだから。多すぎる情報量に、僕は軽いパニック状態に陥る。

 新しく増えた93人分の記憶は全て、昨日僕が両国国技館ダンジョンから行った配信を見てくれた視聴者の人たちと過ごした時間のものだった。

 つまり僕にとって、完全に初対面の――いや、本体の僕からすれば『まだ一度も会ったこともない人たち』と、夢の中で一緒に過ごした時間の記憶だ。


(と、とりあえず、怖かった2人は除外しちゃおう……)


 ――流石に98人ともなると、中にはちょっと困った人もいて。

 例えば、何度も何度も僕のスカートを(めく)ってきた挙げ句に、男同士のエッチに興味はあるかと執拗に問いかけてきた男性とか。

 ハァハァと荒い息をしながら、何も言わないままに問答無用で僕のことをベッドに押し倒してきた女性とか。


 もちろん僕の分体は、すぐにその夢から逃げたようだ。

 夢の中の世界は、基本的には相手の領域だから。そこがどういう空間で、どういう物があって――みたいなことは、全て相手が決めることができるんだけれど。

 まあ、夢魔(サキュバス)だからね。相手の夢に入ったり、あるいは抜け出たり。そういうことぐらいなら、僕の分体には簡単にできるのだ。


 というわけで、ヤバいことをしてきた2人は『出禁』に指定。

 いや、僕の側が相手の夢に入らなくなるわけだから、出禁じゃなく……入禁?

 とにかく、僕の分体はもう二度と、彼らの夢を訪問することはない。




+----+

タカヒラ・ユウキ

 夢魔(サキュバス)/17歳/男性


  〈衣装師〉 - Lv.2 (1735/1836)


  [筋力]  4

  [強靱]  4

  [敏捷] 10


  [知恵]  8

  [魅力] 13

  [幸運]  8


  精気:589


-

異能(フィート)


 [夢魔][夢渡り]

 《衣装管理》《戦士の衣装》《神官の衣装》


◇スキル


 〈剣術Ⅰ〉〈盾術Ⅰ〉


+----+




 ステータスカードを取り出して確認してみると、精気の保有量が『589』まで増えていた。

 確か、昨日確認した時には『286』だった筈だから……。これまでの蓄積量をたった一晩の獲得量で上回り、一気に倍以上にまで増えたようだ。


 溜まった精気は、魔法や魔術の行使時に、魔力の代替として消費できる。

 僕は《神官の衣装》を着用している時になら、幾つかの魔法を使うことができるから、幾らあっても無駄にはならない。

 今後も毎日、これぐらいの量の精気を貯めることができるなら――回復魔法などをかなり気軽に利用することができそうだ。


(いつの間にか、次のレベルアップも近いなあ)


 現在の僕の魔力が『1735』で、次のレベルに必要な魔力量が『1836』。

 あと『101』ぐらいなら、それこそ白鬚東アパートダンジョンで最弱の魔物であるピティを狩るだけでも、問題なく1日で貯められるだろう。


 もちろん昨日に続いて、また両国国技館ダンジョンに行くという手もある。

 今日はどこに行こうかな――と考えるのは、なかなか楽しい。


 良さそうなダンジョンはメモしてあるので、それを見ようとスマホを手に取った僕は――スマホに大量の『通知』が来ていることに気づいて、びっくりする。

 その殆どはLINEの通知のようだ。

 『○○さんがあなたを友だちに追加しました』というものと、友だちに追加された後に受け取ったものと思われるメッセージの通知が、とにかく大量にあった。


(なるほど――僕の分体が、仲良くなったみんなにLINEの登録を勧めたのか)


 記憶の共有が済んでいるため、その記憶が僕の脳内にもある。

 とはいえ、分体はあくまでも分体であり、本体ではない。

 なので僕は、みんなとそういうやり取りをした『記憶』はあっても、『実感』は無かったりするんだけれどね……。


 とりあえず、友だちが増えるのは嬉しいことなので、早速返信を書く。

 ちょっと簡潔気味な返信になるのは許して欲しい。人数が多いんだ……。


(あ、サツキお姉さんからも友だち登録されてる)


 LINEをチェックしていた僕は、今更ながらそのことに気づく。

 サツキお姉さん――房崎(ふさざき)サツキさんは、今回から新しく夢に訪問するようになった人たちの中で、唯一の現役掃討者だ。


 しかもレベルが『31』という、疑いようもない超一流の掃討者。

 きっとまだ新米の僕が知らないようなことも、沢山知っているんだろう。


(どうせなら、サツキお姉さんにオススメを訊いてみようかな?)


 そう考えた僕は、サツキお姉さんから届いていた挨拶のメッセージに返信したあとに、続けて『まだ初心者の僕でも戦えそうな、どこか良いダンジョンをご存知ありませんか?』と質問を送ってみた。


『もちろん色々知ってるよ! お金を稼ぎたいとか、どういうアイテムを拾いたいとか、魔力が集めやすい場所が良いとか、何か希望はある?』


 1分と経たないうちに、サツキお姉さんから返信が来た。


 希望かあ……と、僕はその場で腕組みをして考え込む。

 次のレベルアップが近いとはいえ、流石に100点ちょっとの魔力ぐらいなら、どこのダンジョンでも集められそうだから。

 特に魔力を集めやすいダンジョン、である必要はなさそうに思える。


 だとするなら、やっぱり重視するのは……お金かな?

 あとは神奈川県や東京都から、あまり遠すぎないダンジョンだと嬉しい。


『だったら、日本銀行本店ダンジョンなんてどうだい? お金に関係がある施設のダンジョンだけあって、なかなか良い現金収入が得られるよ』


 その2つの希望を伝えると、サツキお姉さんからそう返信が来た。


日本(にっぽん)銀行……」


 日本人なら誰だって知っているその名前を、思わず僕はつぶやく。

 言わずと知れた紙幣、つまりは『日本銀行券』を発行している国の銀行だ。


 僕も当然、その施設は知っていた。

 中学生の頃に公民の授業で習ったし、建物の写真も見たからね。

 でも……よく考えてみれば、どこにあるのか具体的な場所は知らないなあ。


 ネットで検索して軽く調べてみたところ、一番近いのは東京メトロの三越前駅。

 でもJRの神田駅か東京駅で下りても、徒歩10分も掛からないようだ。


 教科書の中で見たことがある施設に実際に行ってみるのは、ちょっと面白そうな気がする。

 それに、日本銀行券を発行している施設の地下に出来たダンジョンなら、確かにサツキお姉さんの言う通り、お金がなんとなく稼げそうだなとも思えた。


『ありがとうございます、早速今日行ってみようと思います!』


 興味が湧いたので、早速サツキお姉さんにそう返信を打つ。

 すると、思ってもいない返事がかえってきた。


『暇なんでアタイもついて行っても良いかい? 別に分け前は()らないからさ』


「ええ……?」


 予想外の提案に、思わず僕は戸惑ってしまう。


 分体から共有されている記憶によれば、サツキお姉さんは昨日までどこかのダンジョンに、6泊7日にも渡って籠もっていたばかりの筈だ。

 当然、身体的にも精神的にも疲労が溜まっている筈なので、きっと今日は充分な休息を取るための休日にしてあったんだと思う。

 わざわざ『暇なんで』と言ってくれているのは、たぶん僕が遠慮しないように、気を遣ってくれたからなんだろう。


 それに、サツキお姉さんはレベル『31』のトップランク掃討者。

 間違ってもレベル『2』の僕が、好き勝手に連れ回して良い相手ではない。


『ダメではないですが……。僕はまだレベルも初心者同然ですし、きっと楽しくないですよ? それに、できればお姉さんには充分な休みを取って欲しいのですが』


『アタイにとっては、棲息する魔物のレベルが15以下のダンジョンに潜るぐらいなら、休んでるのと大差ないよ。それに1人のファンとして、ユウキくんの勇姿をこの目に焼き付けておきたいのさ』


 う、うーん……。

 ファンのくだりは、間違いなくお世辞で言ってくれたんだろうけれど。

 とはいえ、これだけ言ってくれるのに、断るのは却って申し訳ない気がする。


 それに、初めて行くダンジョンや施設には、やっぱり同伴してくれる人が居るほうが心強いのも事実。

 ここは初心者として、サツキお姉さんに甘えてしまっても構わないだろうか。


『じゃあお世話になります! JRで行こうと思うので、東京駅か神田駅辺りでの待ち合わせでも大丈夫でしょうか?』


『だったら東京駅は流石に広すぎるから、神田駅のほうが良いだろうね。神田駅の南口で待ち合わせるってことでどうだい?』


『判りました! じゃあ待ち合わせの時間は――』


 それから何度かメッセージをやりとりして、今日の詳しい予定を立てる。

 熟練の掃討者であるサツキお姉さんが同行してくれるなら、初めてのダンジョンでも危険はほぼ無いと考えて良さそうだ。

 頑張って、今日はまずレベルを『3』に上げることを目標に頑張ろう!





 

-

評価やお気に入りなどを下さり、ありがとうございました。

お陰様で日間ローファンタジー25位に入っておりました。

当面は投稿を継続させて頂くつもりです。頑張ります。


こっちも、あらすじを早く書かないと……。

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