31. ドロップアイテムの精算
私事で忙しくしておりますため、本日投稿分は短めです。ゆるして。
(そして今週末はもっと忙しいので、たぶん次回も短いです)
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およそ3時間に渡っての探索を終えた僕は、両国国技館ダンジョンの第1階層を脱出し、階段を上がる。
討伐したヤケイの数は……多分、全部で60体ぐらいかな?
戦闘にはそれほど時間を掛けていないつもりだけれど、単身での探索だと魔物も1体ずつとしか遭遇しないので、討伐数は多くない。
とはいえ、アイテムドロップはなかなかに良好。
ヤケイが落とす各種のお肉も、満足がいく量を回収できたと思うし。
ネットで調べた際にレアドロップだと書かれていた『ヤケイのトサカ』も、1個だけではあるけれど、手に入れることができている。
……正直、トサカに何の利用価値があるんだろう? とも思うけどね。
これはレアなだけあって、嵩張らないわりに売値はそこそこするらしい。
『石碑の間』まで戻ってくると、3人組でくつろいでいる女性の姿があった。
ひとりは椅子に座って、片手剣のメンテナンスをしているようだ。
様子から察するに、ダンジョンの探索を終えて休憩しているところだろうか。
(普通は武器も、ちゃんとメンテしないといけないんだよねえ……)
僕の場合は、武器は衣装に応じて『召喚』するものなので、召喚する度に新品同様の状態で出現する。
メンテが全く必要ないわけなので、こうして改めて考えると……結構楽をさせて貰っているなと思う。
「ごめんなさい。一旦ミュートにしますね」
《ほーい》
《了解です》
《気にしないでー》
ドローンに指示を出して、視聴者からのコメント読み上げを行わない、ミュートモードに切り替えた。
掃討者は『自衛のためにドローン撮影をする』ものなので、ドローンで撮影していても、映り込んだからといって怒る人というのは基本的に居ないんだけれど。
とはいえ魔物と遭遇する危険性がない『石碑の間』は、ダンジョンの手前で唯一気を休められる貴重な空間でもあるから。コメント読み上げ機能で騒がしくして、休憩している人たちの気分を阻害するのは良くないからね。
というわけでドローンはミュートモードで稼働させたまま、僕は『石碑の間』の隅に設置されている、コインロッカーのほうへ。
一度ここに戻ってきた際に、コインロッカーの中に収納していた全てのゴムボールを取り出し、誰も使用していないテーブルの上に広げる。
また、今リュックサックに入っているゴムボールも全てテーブルの上に出した。
ゴムボールは半透明なので、ある程度は中身が透けて見える。
とりあえず、明らかに『ヤケイの卵』が入っていると判るゴムボールを選んで、全てリュックサックの中に詰め込み直す。
ヤケイの卵の買取値は、ゴムボール1個あたり500円。
ボール1個の中には大体20個前後の卵が入っているので、買取値はスーパーで普通に売っている卵よりも安い。だったら売らずに持ち帰り、自炊に活用するほうが賢明というものだ。
ヤケイの卵は普通の鶏卵よりも一回り大きいし、ゴムボール状の膜から出さない限りは絶対に割れず、鮮度が落ちることもないのでとても便利だ。
卵が入ったゴムボールは、全部で6個。
これで120個分の――12パック分の卵代が浮くのは、なかなか嬉しい。
……まあ、卵を入れた時点でリュックサックが結構重くなっちゃったけどね。
普通の鶏卵より大きいから……卵1個あたり80グラム程度と考えて、120個だと9600グラム。つまり、ほぼ10kgだ。
そりゃ重いはずだよな、と内心で僕は苦笑してしまう。
次に僕は、ステータスカードを取り出して、テーブルの上に残っている各種お肉が入ったゴムボールに、ひとつひとつカードを接触させていく。
ぱっと見ただけだと、どの部位のお肉が入ったゴムボールなのか判別が付かないからだ。
ドロップアイテムはステータスカードに接触させると、その名称や詳細の情報を知ることができる。これはゴムボールの上からでも有効なので、目視でひとつひとつ確認するより、カードで確かめたほうが正確だし時間も掛からない。
というわけで――調べたところ、胸肉と腿肉、笹身肉、鶏皮、尻尾肉、手羽元、心臓の6種類のお肉が確認できた。
確かヤケイのお肉は15種類以上あった筈だから……思ったよりも種類が取れていなかったんだな、と思う。
割合としては、胸肉が入っているゴムボールが圧倒的に多かった。
やっぱり安い部位のお肉ほど、落ちやすくなっているんだろうか?
とりあえず獲得できた6種類のお肉のゴムボールも、1個ずつだけリュックサックに回収する。
この時点でリュックサックが満杯になったので、残りは全部コインロッカーの中に戻した。
「――すみません、買取をお願いします」
『石碑の間』を出た僕は、両国国技館地下の受付窓口に居る自衛隊員のお兄さんに、今回の探索で得たアイテムの買取を依頼。
窓口にはステータスカードとコインロッカーの鍵だけを提出する。
こうすると、先方側の手でコインロッカーから中身を回収して貰えて、そのままアイテムの査定と買取まで行って貰えるのだ。
「コインロッカーでの買取ですと、後払いになりますので報酬は振込になります。えっと――タカヒラ様はまだ、振込先の登録をされておられませんね。お手数ですが、こちらの用紙に振込先の記入をお願いできますでしょうか」
「あ、はい。判りました」
自衛隊員のお兄さんに促されるままに、僕は書面への記入を行う。
その間に自衛隊員のお兄さんも、僕が提示したステータスカードの裏面を確認していた。
ステータスカードの裏面には、僕が『どこのダンジョンのどの階層に入ったか』や『どの魔物を何体討伐したか』といった履歴が自動的に記される。
その情報を確認して、お兄さんはコンピュータにデータを入力しているようだ。
「書けました」
「ありがとうございます。買取金は原則として翌銀行営業日の振り込みとなりますので、週末の金曜日以降は特にご注意下さい。何かしらの事情で早めに買取金額を受け取りたい場合は、窓口まで持ち込んで頂いたほうが良いと思います」
「なるほど、了解しました」
つまり金曜・土曜・日曜に狩りをした場合、アイテムの買取額を受け取れるのは翌週の月曜日になるわけだ。
もし月曜日が祝日の場合には、更に受け取りが遅くなることもあるだろうから、即金が欲しい場合はちゃんと窓口までアイテムを持ち込んで、その場で現金報酬を受け取ったほうが良いってことだね。




