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可愛い〈衣装〉が僕の武器! ~現代ダンジョンのコスプレ攻略記~  作者: 旅籠文楽


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30/61

30. 《夏に薄い本が出るな……》

 



 僕が身につけている『白銀の鎧』。

 その全体が蒼い光を帯びて――僅かにだけ、その姿を変える。


 例えば、脛当て(グリーヴ)が覆っている脚の面積が減ったことで、それに(ともな)って太腿(ふともも)が露出している部分――『絶対領域』が今までよりも少し広くなったり。

 関節部にあたる、肩と肘の露出が少し増えたことで、より腕や脚を動かしやすくなったり。

 あと、ついでに――今まではちゃんと被覆されていたお腹の部分が、なぜか鎧で覆われなくなったことで、僕の(へそ)がちらっと見えるようになってしまったり。


 幾つかの変化を終えると同時に、鎧が帯びていた蒼い光は静かに収まった。

 共通して言えるのは『鎧で覆われている面積が減った』ということ。

 ひとつひとつの変化は小さいけれど、全体を見ればなかなかの変化だ。


《おお……。鎧って変化するんだ》

《露出度がアップ!》

《可愛さがアップ!》

《尊さがアップ!》

《エッチさがアップ!》

《おへそ! おへそが見えておられますわ!》

《★『アルア・アルナ』公式:ありがとう……! ありがとう……!》

《アルナお姉様がすっかり『ありがとうBOT』に》

《いやでも気持ちはわかる》

《☆貴沼シオリ:尊い……。お布施しないと……》

《シオリお姉様! もう今日は上限額までやりましたわ⁉》

《なぜ、なぜ『ConTube』は5万円までしか投げ銭できないのか……》

《もっと貢がせて……!》

《お前らみたいに生活を破綻させそうなヤツが出るからでは?》

《正論やめてください》


 なんだかコメントがとても盛り上がっているみたいで。読み上げるドローンが、とんでもなく早口になっている。

 そのせいで、殆ど聞き取ることができないんだけれど。でもまあ……なんとなくみんなが、この変化を好ましく思ってくれていることは伝わってきた。


「えっと……。一応説明しますと、僕の天職である〈衣装師〉は魔物を倒すことで自分だけでなく『衣装』もレベルアップするんです。今の蒼い光は《戦士の衣装》がレベルアップしたことを示すものですね」


《衣装もレベルアップするんだ》

《二重に成長できるのはお得やね》

《そのわりに、鎧の面積は減ったみたいだけど?》


「面積が減ったのは、衣装のレベルが上がったことで、新しく《面積削減》という異能が衣装に付いたからです」


 視聴者の質問に答えながら、僕はステータスカードを取り出す。

 そして意志操作により、《戦士の衣装》についての詳細画面を表示させた。




+----+

《戦士の衣装》/異能


 【現在の衣装レベル:1】


  ・最大耐久度:600

  ・防御力  :10

  ・能力値補正:筋力+1、強靭+1


  ・衣装異能 :《面積削減》

  ・衣装スキル:〈近接戦闘術Ⅰ〉〈盾術Ⅰ〉


  ・召喚可能装備:片手剣、片手槍、小盾


 いつでも『戦士の衣装』を召喚して瞬時に装着できる。

 衣装レベルに応じて様々な武具を召喚して装備できる。


-

《面積削減》/衣装異能


 【鎧の面積を10%削減中】


 衣装レベルに応じて鎧の面積を減らし、そのぶん重量を削減する。

 鎧の面積が減っても防御性能への影響はない。


+----+




 最初は『0』だった衣装レベルが、現在は『1』に成長している。

 衣装のレベルが上がると幾つかの変化が発生するんだけれど。今回はまず衣装の最大耐久度がほぼ倍増し、防御力も大幅に増えている。

 また《戦士の衣装》を着ている時にだけ、僕の能力値が少し増えるようになる。レベル1の時点でも筋力と強靭が『+1』されるので、あって嬉しい効果だ。


 次に《戦士の衣装》を着ている時に召喚できる武具の種類が増える。

 今回増えたのは『片手槍』。大体1mちょっとぐらいの長さがある槍で、片手剣よりもリーチに優れるのが特徴だ。


 あと最後に《戦士の衣装》の装着中にだけ適用される、異能がひとつ追加されている。

 それは《面積削減》というもので、文字通り『鎧の面積を減らす』効果のもの。

 説明文に『10%削減中』と書かれている通り、実際にレベルアップ前よりも、それぐらい鎧の面積が減っている実感があった。


 面積が減った分だけ肌の露出が増えるので、ちょっと恥ずかしくもある。

 けれど鎧の面積が10%減るというのは、鎧の重さも10%減るということ。

 20kgぐらいあった鎧が『18kg』まで軽くなるのは、結構大きい変化だ。


《面積削減かあ、面白いね》

《つまり衣装レベルが上がれば、より肌の露出が増えたユウキくんが……⁉》

《なんてことだ、我々はいつまで尊死せずにいられるか》

《大丈夫だ、俺はもう残機が2減ってる》

《☆貴沼シオリ:今度一緒にオーク狩りに行きませんか?》

《※注)オークは最低でもレベル15の魔物です》

《シオリお姉様が、ユウキくんをパワーレベリングする気満々に……‼》

《特に理由のある暴力がオークを襲う‼》

《パワーレベリング(性欲)》

《オークがエロ同人されるのか》

《ユウキくんを剥くための尊い犠牲やね》

《夏に薄い本が出るな……》

《正直、ユウキくんの薄い本は誰かが出しそう》

《お前ら! 出す時はコメントで告知してくれよ! 絶対買いに行くからな!》

《★『アルア・アルナ』公式:じゃあ久々にサークル活動もしようかな》

《(衣装の)プロがアップを始めておられる……》


 折角なので、僕は手に持っていた片手剣を床に落とす。

 召喚武器は僕の手から離れると、ものの数秒で消滅する。なので武器を持ち替えたい時は、地面に落としてから別の武器を召喚し直せば良い。


 片手剣の代わりに、僕が召喚したのは片手槍。

 穂先部分にしか金属が使われていないので、1mちょっとの長さがあるわりには意外と軽い。多分、片手剣よりも少し軽いぐらいだろう。


 ただし穂先の部分にしか刃がないわけなので、扱いは案外難しい。

 もちろん『突く』ぶんには何も考えなくて良いんだけれど。例えば『薙ぎ払う』攻撃をする場合には、ちゃんと穂先の部分で魔物を斬らないと駄目だ。


「実は《戦士の衣装》のレベルが『1』に上がったのは、今回が2度目でして」


《えっ、そうなん?》

《だから既に色々と把握してたんだ》

《もしかして、衣装のレベルって下がることもある?》


「あ、はい。そうなんです。実は〈衣装師〉と関係がない服を着ていると、徐々に全部の衣装のレベルが下がっていっちゃうんですよね」


《ずっと鎧を着てないとダメってこと?》

《いや別に『神官の衣装』のほうでもいいんじゃない?》

《そっか、〈衣装師〉と関係がある服なら大丈夫なんだもんね》

《レベルを下げないためには、鎧かシスター服で生活する必要があるのか……》

《……近所の人から、色々と噂されそうやね》


「まあ、それも問題ですけど……。そもそも僕はまだ高校生ですから。制服を着て学校に通っている間に、どうしても衣装レベルは下がっちゃうんですよ」


 前回は週末の日曜日に白鬚東アパートダンジョンへ籠もり、ピティ狩りをしていた時に《戦士の衣装》衣装のレベルが上がったんだけれど。

 週明けに学校に通っていると、火曜日にはもう《戦士の衣装》のレベルは『0』に戻っていた。


 それぐらいのペースでレベルが下がるので、少なくとも学校に通っている限り、衣装レベルはすぐに『0』に戻ると思っておいたほうがいいだろう。

 上げるチャンスがあるとするなら、夏休みぐらいだけれど……。


 ……レベルアップを狙うなら、常時《戦士の衣装》か《神官の衣装》のどちらかを着続ける必要があるから。それはそれで日常生活に支障が出そうだ。

 視聴者の人がコメントで言うように、近所の人から噂されるような事態には、できればなりたくないしね……。


《そっか、学生だとしょうがないよね》

《★『アルア・アルナ』公式:私が頑張って可愛くデザインする?》

《それは余計に噂されるんじゃない?》

《そもそも、可愛くても学校には着ていけないしな》


「……まあ、高校在学中の衣装レベルは諦めてます。そのあと本業の掃討者になるのか、それとも大学に通いながら掃討者をやるのかは、まだ決めてませんけれど。どちらにしても、その時には多少は服も自由にできると思いますので、衣装レベルを上げるのはそれから考えようかなって」


《なるほどなー》

《ちょっと残念だけど、しょうがないね》

《大学生になったユウキくんか……》

《背が伸びて、顔つきも凛々しくなるんかな》

《かっこかわいい感じになってそう》

《可愛いだけのままで居て欲しいな》

《ちょっとだけ男性的な雰囲気が出るのも良いかも?》

《おっきくなるなんて、ヤダー‼》

《☆貴沼シオリ:楽しみな気も、残念な気も……》


「あ、ごめんなさい。僕は夢魔(サキュバス)になった時点で『老化しない』身体になっちゃってるらしいので、今後も見た目は変わらないかもしれません……」


 種族異能としての[夢魔(サキュバス)]の説明文には『精気が不足していない限り老化せず、病気にもならない』とはっきり書かれている。

 現在5人の夢にお邪魔しており、毎晩充分な量の精気を貰っているので、精気が不足することはまず有り得ない。なので僕の身体が老化することもない筈だ。


《えっ、そうなん⁉》

《今後も小さいままなんですね、ヤッター‼》

《一生推します……!》

《★『アルア・アルナ』公式:一生服を作らせてください……!》

《永遠のちびっこ女装ショタ……!》

《もうテレビのアイドル男子とかどうでもいい》

《↑わかる。ユウキくんのほうがいい》

《なんなら女子アイドルよりも……》

《↑わかる。わかる……》


 それから暫く、僕は片手槍を使いながらヤケイと戦う。

 剣よりもリーチが長く、またヤケイが突進してくるのに合わせて槍を構えたり、あるいは跳躍攻撃をしてくるのを槍で迎え撃つだけで簡単に倒せるので、ほぼ無傷で倒すことができるようになってきた。


 余裕が出てくるようになると、単身(ソロ)なのでヤケイが1体ずつしか出てきてくれないことが、少し残念に思えてきた。

 今なら2~3体ぐらい同時に出てきても、問題なく対処できそうだからだ。


(……今度はアリサさんとマナさんを誘って来ようかな)


 2人を誘って3人パーティになれば、その1.5倍に相当する5体までのヤケイと一度に遭遇するようになる筈だ。

 魔力を収集してレベルアップを狙ったり、お肉を集めてより多くの収入を得たいなら、そのほうが良いのかもしれない。


(まあ、マナさんが本免許を取得したら、だけれど……)


 僕が受験したのと同じ日に、マナさんも本免許試験を受けたんだけれど。

 残念ながら受かったのは僕だけで、マナさん落ちちゃってるんだよね……。





 

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― 新着の感想 ―
老化は成人後に起こるものなので、成長とは別物ですよ。
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