表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
可愛い〈衣装〉が僕の武器! ~現代ダンジョンのコスプレ攻略記~  作者: 旅籠文楽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/61

25. 《現実です……! ユウキくんは男の子……!》

今回は短めです。ゆるして。

 



《初見、頑張ってー》

《初見っす》

《こんな小さい子が掃討者になってるのか……》

《いま何歳からなれるんだっけ》

《一応12歳。でも女性でそこまで若い子は滅多に居ないけど》

《角が生えてるってことは、この子は亜人では?》

《あ、じゃあ結構若返ってるのかも》


「えっ、えっ……? な、なんで、最初からこんなに人が?」


 思わず僕は、おろおろとその場で凄く戸惑ってしまう。

 今『石碑の間』に誰も居なくて本当によかった。もし誰か居たなら……きっと、かなり恥ずかしくて、そして滑稽な姿を見せてしまっていたと思う。


 コメントの量から察するに、もう視聴者が10人ぐらいは居そうだ。

 僕も別に詳しいわけではないけれど――こういうライブ配信をすぐに見てくれるのは普通、予めチャンネル登録をしてくれてる人ぐらいのものだと思う。

 僕みたいに登録者数が当然まだ『0』の人間の配信が、いきなりこんなに沢山の人の目に留まるというのは、ちょっと信じがたいものがあった。


《あー、それ新人さんはよく驚くんだよ》

《一種のお約束みたいなもんだよねー》

《ConTubeでは初めて配信を開始した人がいると、サイト利用者全員に通知が出るんよ》

《だから新人配信者さんを応援したい人は、一斉に集まるのさ》

《こんにちは! 僕たちは新人に(たか)るアリです!》

《おめでとう、いま視聴者数50人超えてるゾ☆》


「――50⁉」


 10人ぐらいだと思ってたら、現実はまさかの5倍。

 脳が事実を受け入れられなくて、僕は軽くめまいがした。


 『ConTube』は掃討者ギルドが運営している配信サイトなので、当然ライブ配信を行うのは全員が掃討者ということになる。

 掃討者は社会に不可欠な職業エッセンシャル・ワーカーのひとつであり、地域住民の治安を守る重要な役割を担うもの。なので新人が居れば応援したくなる人の気持ちも、それはそれで判らなくはなかった。


《そこ『石碑の間』だよね? いまから潜るとこ?》


「そのつもりです。あ、でも潜る前にお姉さんたちに連絡しないと……」


《お姉さんたち? ご家族?》


「えっと、家族ではないんですが、とてもお世話になってる方々です。初めて配信する時には連絡するって約束してるので、すみません、中に入るのはちょっとだけ待ってください」


《ええんやで》

《ゆっくりしいや~》

《約束は大事にせんとな》

《お世話になってる人なら尚更やね》

《おねロリの予感! ハァハァ》

《↑コイツさぁ……》

《お姉さんに挟まれるロリとか最高やない?》

《それはそう》

《イイハナシダッタノニナー》


 せっかく視聴してくれている人たちを、あまり待たせるわけにもいかないから。アプリを立ち上げて、シオリさんとアルナさんに手早くメッセージを送信する。

 土曜日とはいっても、まだお昼だから。お二人にも色々と予定があるだろうし、配信を見てもらえるとは思わないけれどね。


《ねえねえ。その服って『アルア・アルナ』の新作じゃない?》


「あっ、そうです。新作かどうかは判りませんが、アルナさんの服ですね」


《俺は知らないけど、その服すごい可愛いよね》

《服だけじゃなく中身もすごい可愛いけどな……》

《その『アルア・アルナ』ってのは有名なやつなのか?》

《↑超有名。男は知らなくても無理はないけれど》

《女の子向けのブランドだからね。しゃーない》

《男の読む雑誌とかには載ってないからねえ》

《そうなんか……。恥ずかしながら全然知らんかったわ》


「わかります。僕も男なので、ついこの間まで知りませんでしたし」


《は?》

《え?》

《はあッ⁉》

《男ォ⁉》

《嘘でしょ⁉》

《その見た目で⁉》

《えっ、嘘やん……。普通に『好き!』と思ってたわ》

《あっあっあっ、性癖が壊れる》

《新しい扉が開けちゃう……》

《いやいや、流石に冗談だと思うぞ》

《ここまで可愛い子で、男はちょっと無理があるやろ》

《そやね、みんなちょっと冷静になったがいいぞ》

《おお、なんだ、嘘か……。ガッツリ期待しちゃったわ》

《本当か? 女の子って信じてええんやな? トラップじゃないんやな?》

《大丈夫だ。もうガチ恋してしまった視聴者の魂を賭けよう》

《↑やめてさしあげろ》


 なんだか『男』だって告げると、反応が凄かった。

 コメントが一気に沢山押し寄せてきたせいで、ひとつひとつを読み上げてくれているドローンが、凄く早口になっているのがなんだか面白い。


 うーん、本当に男なんだけどなあ。

 流石にこんな可愛い服を着てちゃ、信じては貰えないか。


《★『アルア・アルナ』公式:ところがどっこい、嘘じゃありません…………! 現実です……! ユウキくんは男の子……!》


「――えっ⁉ アルナさん、ですか?」


《★『アルア・アルナ』公式:そうだよー。ユウキくん初配信おめでとー! 予め企業アカウントを申請しておいて良かったっ》

《うわ、ほんとや。これマジで『アルア・アルナ』の公式アカやん》

《えっ⁉ ま、まさか、赤羽アルナさんご本人ですの⁉》

《お店の服、毎日着てます!》

《★『アルア・アルナ』公式:もちろん本人ですの! 愛用ありがとー!》

《☆貴沼シオリ:私も見てますよ。頑張ってくださいね、ユウキくん》


「わ、シオリさんも見てくださってありがとうございます!」


 どうやらアルナさんだけでなくシオリさんも、僕からのメッセージを見てすぐに視聴を開始してくれたらしい。

 きっと忙しいと思うのに。わざわざ時間を割いてくれたことを、ちょっぴり申し訳なく思いつつも……やっぱり、とても嬉しくもあった。


《シオリお姉様だ!》

《トップランクのソロ掃討者やん……!》

《いつも配信見てます》

《俺も見てます! お陰で〈戦士〉に誇りを持ってます!》

《☆貴沼シオリ:ユウキくん。設定画面の『投げ銭』をオンにしてみてください》


「投げ銭、ですか?」


《☆貴沼シオリ:はい、お願いします》


「えっと、ちょっと待ってくださいね……」


 シオリさんに促されるままに、僕はスマホで配信の設定画面を開いて操作する。

 この時の僕は『投げ銭』というのがどんなシステムか、まだ知らなかったんだ。





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ついに初配信ですね 新しい性癖に目覚める人が続出しそう……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ