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可愛い〈衣装〉が僕の武器! ~現代ダンジョンのコスプレ攻略記~  作者: 旅籠文楽


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22/61

22. 1ヶ月ぐらい経ちました。

 


     [3]



 ――それから約1ヶ月が経過して、一気に季節感は夏らしいものになった。

 まあ1ヶ月が経つ前から、二十四節気の『立夏』は迎えていたので、暦の上ではとっくに夏ではあったんだけれど。

 やっぱり体感として、夏の訪れを感じるのは、6月に入ってからになるよね。


 夏休みがもう、すぐそこにまで迫っている。

 学校が長期休みに入ることで、自由にできる時間が飛躍的に増えるだろうから。僕はこの夏休み一杯を使って、本格的に掃討者として活動してみるつもりだ。


 もし夏休みを終える頃に、自分に掃討者が向いていると思えるようになっていたなら。その時には大学に進まず、高校卒業と同時に掃討者を本業にしようと考えている。

 あるいは逆に、夏休み一杯頑張ってみても、掃討者一本でやっていくことに自信が持てなかったら。その時にはとりあえず大学に進むことで、将来を選択するまでの猶予期間を確保するつもりだ。


 なので当面の僕の目標は、大学進学も選択肢のひとつにできるよう、今のうちに入学金や授業料を稼いでおくことだ。

 大学に進んだ場合に、両親がそのお金を出してくれる保証はないからね。必要なお金は事前に確保しておかないと、必要になってからではもう遅いのだ。


 というわけで――取ったよ! 掃討者の『本免許』!

 流石に仮免許の時と違って、試験は普通に難しかった。

 掃討者として憶えておくべき心得から始まり、危険性が高い魔物や世の中に高い需要がある素材などの情報の暗記、ダンジョン内での他の掃討者に対する自衛の方法、掃討者として活動で得られる特典の話や、受付窓口以外にアイテムを売却した際に発する税金関連の内容、等々――。

 これでも世の中に数多ある他の資格試験に較べると、難易度は『そこそこ』程度のレベルらしいんだけれど。僕には普通に難しかったんだ……。


 シオリさんが言うには、掃討者の本免許試験の難易度がそれなりに高く設定されているのには、『ならず者が掃討者になるのを回避したい』という政府の意向があるんだとか。

 本免許を所持していると、街中での武器の携行が認められちゃうからね。不良や破落戸(ごろつき)みたいな悪人に、武器を用いた犯罪とかをやられると困るわけだ。

 簡単に悪事に手を染めてしまう人というのは、往々にして勉強が嫌いだったりもするから。試験の難易度を一定以上に保つことで、ならず者をそれなりの割合で排できる、という考えらしい。


 そんな試験に僕が一発合格ができたのは、(ひとえ)にシオリさんとアリサさんが頻繁に勉強を見てくれたお陰だ。

 ギルド職員として働いているシオリさんは、とにかく知識の量が凄くて、しかも教え方まで上手いから、知識がするっと頭の中に入ってくる。

 そしてアリサさんはつい最近『本免許』を取得したばかりなので、試験の要点を纏めるのが上手い。マナさんに教えるついでということで、僕にも試験対策ノートをコピーしてくれたりと、本当に助けられた。

 このお礼は、いつかちゃんと2人に返したいところだ。


 無事に本免許が取得できたので、今後は日本全国に沢山あるダンジョンの、どこにでも自由に立ち入ることが可能となった。

 なので今後は、白鬚東アパートダンジョンに(こだわ)る必要はない。たとえば自宅から通いやすいダンジョンばかりを利用する、というのもそれはそれでアリ。


 ただし、その場合には問題がひとつ。

 僕がピティの肉を頻繁に提供したことで、ダイキの親父さんがやっている町中華のお店では、現在ピティの肉を使った料理の提供が開始されている。

 暫くは僕の自宅に保管してある、ゴムボール入りの肉を提供すれば大丈夫だとは思うけれど。ピティの肉は白鬚東アパートダンジョンに行かないと手に入らないので、たまにはそちらにも足を運ぶ必要はある。




+----+

タカヒラ・ユウキ

 夢魔(サキュバス)/17歳/男性


  〈衣装師〉 - Lv.2 (1491/1836)


  [筋力]  4

  [強靱]  4

  [敏捷] 10


  [知恵]  8

  [魅力] 13

  [幸運]  8


  精気:286


-

異能(フィート)


 [夢魔][夢渡り]

 《衣装管理》《戦士の衣装》《神官の衣装》


◇スキル


 〈剣術Ⅰ〉〈盾術Ⅰ〉


+----+




 現在ステータスカードに記載されている、僕の情報はこんな感じ。

 レベルは結構前に1つ成長して『2』になった。レベルが上がったのは本免許を取るより前の話なので、これはピティ狩りだけで達成した成長だ。

 武器さえあればピティ狩りでも結構稼げるからね。ちょっとしたバイト感覚でやれてストレスの解消にもなるので、週末にはほぼ確実に、平日でもたまに学校を休んで入り浸っていたのだ。


 レベルアップにより、能力値は[魅力]と[幸運]が1ずつ増えている。

 シオリさんの話によると、大体どんな人でも、レベルが上がるたびに2種類の能力値が1ずつ増えることが多いんだとか。

 各能力値の成長のしやすさは『天職』によって決まるらしい。例えば〈戦士〉の天職を持っている人なら[筋力]と[強靱]が成長しやすく、[知恵]や[魅力]などの成長は殆ど期待できないそうだ。

 僕の〈衣装師〉の場合は……どれが上がりやすいんだろうね? ちょっと天職の名前からは想像しにくいや。


 僕は新しく〈剣術Ⅰ〉と〈盾術Ⅰ〉のスキルを習得しているけれど、これはレベルアップとは無関係で、いつの間にか自然と習得していたものだ。

 剣と盾は《戦士の衣装》に着替えている時は常時使っているようなものだから、多分そちらでの経験がスキルという形で反映されたのかな。


 僕がレベル『2』に成長した際に新しく得たのは、スキルではなく異能(フィート)

 それは《神官の衣装》というもので――名前から分かる通り、これは僕がいつでも召喚し、装着できる『衣装』のひとつだ。




+----+

《神官の衣装》/異能


 【現在の衣装レベル:0】


  ・最大耐久度:200

  ・防御力  :0


  ・衣装スキル:〈棍棒術Ⅰ〉

  ・衣装魔法 :【軽傷治療】【浄化】【衝撃波】


  ・召喚可能装備:鎚矛(メイス)


 いつでも『神官の衣装』を召喚して瞬時に装着できる。

 衣装レベルに応じて行使可能な魔法が増えていく。


-

〈棍棒術Ⅰ〉/衣装スキル


 鎚矛(メイス)や棍棒を用いた攻撃の技術が向上する。


-

【軽傷治療】/神聖魔法


 消費魔力:100

 対象の怪我を僅かに回復させる。


-

【浄化】/神聖魔法


 消費魔力:50

 術者が好ましくないと考える汚染や毒性を取り除く。


-

【衝撃波】/神聖魔法


 消費魔力:100

 対象に強い衝撃を与えて大きく(はじ)き飛ばす。


+----+




 《戦士の衣装》ほど耐久が高くないし、盾も使えないなどの欠点はあるけれど。

 戦う魔物によっては、《戦士の衣装》で召喚できる『剣』よりも、こちらで召喚できる『鎚矛(メイス)』のほうが有効、というケースは普通にありそうだ。

 それに何より――こちらは『神官』というだけあって、『神聖魔法』が行使可能なのが最大の特徴になる。


 本来なら、魔法を使うためには魔力を、つまり経験値(EXP)を消費しなければならないわけだけれど。夢魔(サキュバス)である僕は、魔力の代わりに『精気』を消費することでも魔法や魔術を行使できる。

 現在の僕は[夢渡り]でアリサさんとマナさんだけでなく、シオリさんとアルナさん、そして親友のダイキの夢にもお邪魔させて貰うようになっていて。そのお陰で毎日『13』前後の精気を稼ぐことができている。

 精気は僕にとって、生命維持に必要なエネルギーなわけだけれど。かといって、必要以上に溜め込んだからといって恩恵があるものでもない。

 ある程度は魔法の行使のために、使ってしまっても問題ないだろう。


 ――ちなみに。

 新しく追加された《神官の衣装》なんだけれど、これはいわゆる修道服のこと。

 それも女性用(・・・)の修道服、いわゆる『シスター服』みたいなものだったりする。

 最初は神父さんみたいな服なのかな、と予想していただけに。ダンジョンの中で初めて着替えた時には、予想外過ぎて思わず目が点になってしまった。


 いや、まあ……《戦士の衣装》に着替えた時の格好も、鎧というわりに明らかにスカートっぽいパーツがあったり、絶対領域があったりと、色々と突っ込みどころが満載ではあったから。

 なんだか召喚する前から、ちょっと嫌な予感はしてたんだよね、うん。


 ――とはいえ。

 実は、近頃の僕は2日に1日は普通に女装しているので、女性物の衣装を着ることにもすっかり抵抗が無くなっていたりする。


 えっと、ほら――アルナさんから沢山の服を貰っちゃったし、シオリさんからもメイク道具をプレゼントされたから、ちゃんと使わないと勿体ないしね?

 それに、『アルア・アルナ』の専属モデルの話も引き受けちゃったわけだから、今のうちにアルナさんの服を着こなせるようになったり、女装に慣れておくのも大事なことだしさ?

 つまり、仕方がないこと。これは仕事上、どうしても必要なことなんだよ。


 なので、もはやシスター服ぐらいなら、普通に抵抗感なく着れちゃったりする。

 ……とはいえ《神官の衣装》の修道服って、なぜかワンピースのスカート部分に大胆なスリットが入っていたりするから。

 周囲の人たちの劣情を駆り立てそうなこの衣装を『シスター服』と認めていいのかどうかは、大いに疑問だったりもするんだけどね。


(これを着ている僕を見た人は、一体どう思うんだろう……)


 そのことが、ちょっと怖くて。

 けれども――ちょっとだけ、楽しみでもあったりする。


 ところで、僕は今日、新しいことにひとつ挑戦するつもりでいる。

 それは白鬚東アパートではない、別のダンジョンに単身(ソロ)で挑むことだ。





 

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― 新着の感想 ―
西洋鎧でスカート(名前は違うと思うけど)みたいな部位は普通にあると思うけど。
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