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第141話 魔族の国の成り立ち ~アグリサイド~

「とりあえず、黙って聞け!

 あの時、いったい何が起きていたのか。

 ことの真相をお前に聞かせてあげるからのぅ」


取り押さえたゼドを前にゾルダは先々代魔王、ゾルダやゼドの父の死について語り始めた。


「ゼド、お前が勘違いしているところがいくつかあるのじゃ。

 その1つとして、この魔族の国の成り立ちについてじゃ。

 お前はこの国が何故出来たのか知っておるのか?」


「それは……人族を根絶やしにするため……

 この大陸を魔族が支配するためだろ!」


身体は屈しているものの、顔を上げゾルダを睨んでいるゼドはそう吐き捨てた。


「そこからじゃ。

 このたわけが」


ん?

魔王はこの大陸の支配が目的じゃない?

俺も王からは魔王が攻めてきているからとは聞いているのだが……


「そもそもこの国は迫害から逃れるために、初代勇者がその者たちと立ち上げた国じゃ」


なんだと?

衝撃の事実……

この国に初代勇者が絡んでいた?


「勇者だと?」


ゼドも驚愕の事実に絶句する。


「そうじゃ。

 数千年前のことじゃ。

 ワシも父上からこのことを聞いておるし、この国の中枢に代々言い伝えられていることじゃ。

 当時、邪悪なるものの存在を倒すべく、勇者召喚が行われたのじゃ。

 その勇者がその邪悪なるものも打ち倒した……

 そこまではいいかのぅ」


「そうだな、その邪悪なるものが余たちの祖先のはず……」


明らかにうろたえ始めたゼド。

ヒルダやセバスチャンは顔を変えずにゾルダの話を聞いている。

この二人は真相を知っているのだろう。


「そうですわね、マリーもそう聞いておりますわ」


マリーはどうやら知らないようだ。

ゼドと同様に落ち着かない様子だった。

その様子をちらっと見るもゾルダはそのまま話を続けた。


「まぁ、そこからが問題なのじゃが……

 その邪悪なるものが、魔族と定義されてのぅ。

 当然、当時も魔族はいたが、人族と一緒に過ごしていた。

 その生活が一変したのじゃ。

 邪悪なるものと同列に扱われてのぅ。

 どこの街からも追い出される、暴力を受ける、挙句の果てには殺されたりということになったのじゃ」


関係ない者たちも一括りにされて差別を受ける。

前にいた世界でもよくあったことだ。

いわゆる「ラベリング」ってやつだな。

悪いのはその邪悪なるものであって、魔族ではないはずなのだが……

気分が悪い話だ。


「それを不憫に思った初代勇者が、荒れ果てた土地ではあったが、この場所にこの国を建国した。

 そういうことじゃ。

 勇者も勇者でその時いろいろあったからのぅ……」


どの時代の人が当時召喚されたかはわからないが、だいぶ慈悲深い勇者だったのだろう。

勇者の行動がそういう差別を助長してしまったという後悔もあったのかもしれない。

それに勇者に何があったというのか……


「……」


ゼドは絶句したまま話を聞いている。

自分が思い込んでいたこととあまりにも違う事実に言葉がないのだろう。

ゾルダはさらに話を続けた。


「勇者は邪悪なるものを倒した後、その力を恐れた人族の国の中枢から、追い出されていたのじゃ。

 必要な時だけ使って、脅威が無くなればお払い箱ということじゃ」


「えっ、そうなのですか?

 勇者様はその後幸せに暮らしていたのではないのですか?」


マリーは転移勇者の話が好きでいろいろと本を読んでいた。

まぁ、だいたいそういう話は倒して終わりということが多いのだろう。


「どの本もその後には言及していないんじゃないかな?

 なぁ、ゾルダ」


めでたしめでたしで終わらせるというハッピーエンドで書かれているんじゃないかと思った。

俺はゾルダにそう問いかけた。


「おぬしの言う通りじゃ。

 人族の中枢部は、都合の悪いことはこの世の歴史からすべて抹殺しておる」


やっぱり……

人は前の世界でも勝者の都合のいい歴史だけが残っていた。

それが当たり前と言えば当たり前なのだが、こっちでも同じようなものなんだな。


「さすがに初代勇者も表立って建国は出来ぬからのぅ。

 魔族のリーダーをたて、陰で支えておったというのが真相じゃが……」


陰で支えていた?

敵対したいわけじゃないから、表立って動けないのはわからなくはないけど……

でも、それだけだったのかな……


「あっ、もしかして、初代勇者はそのリーダーと……」


ゾルダはニヤニヤとしながらもそのことを否定も肯定もしなかった。


『それって禁断の恋……?』


思わず大声で突っ込もうかと思ったが、そういう状況ではなかったので、心の声で押しとどめた。

もしかして、初代だけでなく過去の勇者たちも、同じようにお払い箱になっていたのかもしれない。

その時、魔族の国の王族たちは見捨てなかったはずだ。


「まぁ、そういうこともあってじゃな、基本的にはワシらの国は人族の国を追いやることはしない。

 それが、大前提じゃ」


「あれ?

 でも魔王が攻めてきたから、先代の勇者は呼ばれたと……」


そう王様からは聞いた気がする。


「あぁ、あれはこのバカがそれを知らずに攻め込んだからじゃ」


ゼドの近くにいったゾルダは、ゼドの頭をゴチンと叩いた。


「痛いっ

 ……嘘だ。そんな、そんなはずがあるものか!」


涙目になりながらも必死に抵抗するゼド。

それをゾルダはそのまま見下すような目で見ていた。


「でも、その前もその前も……

 勇者は何度も召喚されているんだろ?

 国がピンチになって」


「そうじゃなぁ……

 たぶんその辺りも都合の悪いことは隠されておるのじゃろう。

 何度か勇者が攻めてきたことはあるが、こちらからは攻めたことはないのぅ。

 国がピンチなんていうのも……」


ゾルダは大きくため息をつき、話を続けた。


「どうせ、民から見放されそうになったり、暴動が起きそうになったりしたのかもしれぬのぅ。

 そういう時は外敵を作ると、話題を逸らせるしのぅ……」


ダメダメな政治家や独裁者が良くやりそうな手口だ。

国民の不満をそらすための外敵か……

魔族の国に対してはやりやすいのかもしれない。


「まぁ、父上の死の話からは違う話に聞こえるかもしれぬがのぅ。

 この大前提がゼドの中で間違っていたからのぅ。

 まずはそこを正さねばならぬ」


「何故、余の中でそれが間違っていたのか……」


愕然とするゼドは気落ちしたかのような表情を浮かべていた。


「父上もおいおい話すつもりでおったのじゃが、その前に死んでしまったかのぅ……」


「でも、お前が剣を持ち、その先に父上が倒れて血を流していた。

 余の見た光景はそうだったはず……」


ゼドは父が死んだその場を見ているということか。

だからゾルダのことを目の敵にしているのか。


「あぁ、それか……」


「それは言い訳出来ないだろ!」


また目の鋭さが戻ったゼドはゾルダに詰め寄った。


「あの一瞬を切り取ればそう見えなくはないから仕方がないがのぅ……

 でも、お前はあの場は誰に連れてこられたのじゃ?」


「誰って……」


ふと我に返ったような表情をしたゼドは、ある人物の名を口にした。


「それは、アスビモ……」


ゾルダはその名前を聞き、確信めいたような表情をした。

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