表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/137

第136話 おいどんも活躍したのにの ~シータサイド~

ゾルダ様も人使いが荒いというかなんと言うかの……

おいどんも頑張ってあのラファエルとクラウディアを追い詰めて捕まえたのにの。

すぐに転移魔法使えとおっしゃる。

少しぐらいはおいどんを気づかってくれてもいいのにな。

心の中でそんなことを考えていたら、坊ちゃんがおいどんの方へと近づいてきた。


「シータ、ごめん。

 一緒に戦うはずが、途中からあの二人任せっきりになっちゃって」


「いや、お気遣いなく。

 もともと一人で相手するはずだったからの」


「ゾルダも弟のことが気になるんでしょ?

 せっかくラファエルとクラウディアを捕まえたシータに、さらに無理言って」


坊ちゃんはおいどんのことを気づかってくれておるのかの。

それともおいどんに顔に出ておったかの。

そうであれば気をつけないといけないの。


「ゾルダ様はいつも通りだとは思いますがの。

 それでも坊ちゃんだけにでも気づかってもらえたのは嬉しいですの。

 ところで……おいどんの戦いぶりはどうだったですかの?」


「ごめん、こっちもいろいろとあったので、しっかりと見ていなかった」


「ならば、おいどんがどうやってラファエルとクラウディアを捕らえたかをお聞かせしましょう」


おいどんは見ていなかった坊ちゃんのために二人との戦いを振り返り始めた――


『ゼド様は私たちに何をお渡しになったのですか……』


『あれー?

 またおばさんが増えたじゃん

 ウケるー』


ラファエルとクラウディアはどうやらあの仕掛けを知らなかったようですの。

おいどんたちも封印されていたのであれば、ヒルダ様も当然こうなっているのはわかるがの……


『おい、お前らはこのことは知らなかったのかの?』


『知る訳ねーじゃん。

 ゼド様が勇者に渡せっていうから持ってきただけだって』


『何かしらゼド様が考えていらっしゃることは分かっておりましたが……』


どうやら策があるというぐらいの事しか知らなかったようですの。

しかし、あのヒルダ様の様子は少し違う感じがするの。

ゼド坊ちゃんが何か考えていると言うのであれば、何もないってことはなさそうですの。


ヒルダ様と坊ちゃんの心配をしていたおいどんに対してラファエルは


『余裕ですね。

 今は私とクラウディアの相手をしているはずですよ』


と言い、連続で火炎魔法を唱えてきた。


『余裕ではないがの。

 気になって見ていただけなのにの』


無数の火の玉がおいどんに降りかかってきたがの。

そんな攻撃はお見通しでしたの。

転移魔法でさっと避けたんだの。


――おいどんが気分よく坊ちゃんに武勇伝を話しているとマリーが話の腰を折ってきたんだの。


「何が『お見通しでした』ですわ。

 マリーが教えてあげてギリギリで避けていたんじゃなくて?」


「そんなことありましたかの。

 マリー殿は戦いたくて入ろうとしていたのを、

 セバスチャン殿に止められていただけじゃなかったかの」


「マリーが入っていればすぐに終わったのに」


マリー殿はやっぱり戦いに参加できなかったことを根に持っているんだの。

セバスチャン殿もおてんばな娘を持つと大変だの。


それはそれとして……

再びおいどんは坊ちゃんに活躍の話を続けるかの――


華麗に避けたおいどんだったが、その先にはクラウディアが待ち構えていたんだの。

両手から繰り出される素早い剣戟を見事に交わしたおいどんは、すかさず反撃にでたんだの。


『ウインドストーム』


おいどんの手のひらから嵐が巻き起こり、離れた位置にいたラファエルを襲っていったんだの。

ラファエルは必死に防御魔法を重ねたように見えたが、まるで紙のように剥がされていただなの。


『くぅ……』


ラファエルはその暴風に囲まれたかと思うと、耐えきれなかったのか、大きく空中に飛ばされてしまったんだの。

少しは手加減したのに、もう少し耐えて欲しいんだの。

その様子を見ていたクラウディアは


『えーっ!

 あいつ、「私より魔法に秀でた者などこの世にいない」なんて言っていたのに、やられてやんの。

 ウケる~』


そう言うと笑い転げていた。


『あいつは仲間なんじゃないのかの?

 そう笑っていたら失礼ではないかの?』


行動を窘めたおいどんでしたが、クラウディアは笑顔を止めて、殺気を表に出したんだの。


『仲間っちゃー仲間だけど、気に食わないのも確かだしね。

 そもそも、あーしは一人の方が力をだせるんでね』


短剣を持ち帰ると再びおいどんにその刃を向けてきたんだの。

クラウディアの動きは鋭さを増し、このおいどんでも避けるのが精一杯でしたんだの。

それでも、おいどんの敵ではござらん。

避けた短剣を持つ腕を掴むとそのまま相手の力を利用して、地面に叩きつけたんだの――


「どこが、『避けるのが精一杯でした』ですわ。

 全然避けてなかったじゃないですか」


またここでもマリー殿が話に入ってきたんだの。

もうせっかくいい気分で話しているのにの……


「おいどんがギリギリで避けていたじゃないですかの。

 だってあいつも何度も何度も短剣を振り回していたじゃないですかの」


「確かに振り回してきていたのは事実ですわ」


「それなら……」


「『それなら』じゃないですわ。

 全部当たっていたし、それが全然効いていなかっただけじゃないですか。

 アグリに嘘はつかないでいただきたいわ」


「そうだったんだの。

 なんか少し風があたった感じがあったからの。

 風圧がかかるぐらいで躱していたんだと思っていたんだの。

 でも、本当にマリー殿は細かいの。

 そんなことはどうでもいいんだの。

 結果さえあっていれば……」


「全っ然っ、合ってないですわ!」


しかし、マリー殿はうるさいの。

あともう少しなのだから、黙って聞いて欲しいの――


クラウディアを地面に叩きつけて抑え込んだおいどん。


『どけ、このおっさん!

 重たーい、邪魔ー』


押さえつけられながらも必死に抵抗をするクラウディアでしたの。

それをさらに力を入れて抑え込む。

クラウディアの力も四天王の一人のはずだから相当なものがあるはずだと思ったんだがの。

おいどんが片手で軽く力を入れただけで


『く……苦しいから……

 や……め……てー』


なんだ、もうギブアップですかの。

戦意を喪失させたクラウディアの首根っこを捕まえて、次は飛ばされたラファエルを探しに行ったんだの。


おいどんの魔法で思いのほか高く舞い上がってしまったのか、地面には大きな穴があったんだの。

その中心にラファエルは倒れていたんだの。

こっちももう戦えなさそうでしたので、とっ捕まえて穴から引きずり出したんだの――


「と、言う感じで、あの二人を見事捕まえたんだの」


どうですか、おいどんの活躍は!

自分でも誇らしいと思っているだの。


「……が……頑張ってくれてありがとう、シータ……

 二人を引き付けてくれたから、ゾルダもヒルダとの戦いに集中できたようだし……」


少しはにかんだような顔で坊ちゃんはおいどんのことを労ってくれたんだの。

坊ちゃんは褒め上手ですの。


「真剣に聞いていただけて嬉しいですの」


嬉しくなり坊ちゃんに手を差しだし握手をしたんだの。

坊ちゃんも笑顔で答えてくれたんだの。


「あのね、シータ。

 アグリは困っているんだって!

 この顔見てそれがわからないの?」


マリー殿はおいどんがうらやましいのかの。

またおいどんに文句を言ってきたんだの。

本当に何を言っておるのかの。

坊ちゃんだってこんなに喜んでおるのにの。


「それじゃ、だいぶ前の話になりますが、おいどんの武勇伝をさらに……」


気持ちが乗ってきたので、昔ばなしでもしようかの。

と思った矢先に、背後から殺気が……

振り返ると、そこにはゾルダ様がニヤリと不気味な笑顔で立っていたんだの。


「シータ……

 ワシは急いでおるんじゃ!

 さっさと転移しろ!」


その殺気は身の毛もよだつものだったんだの。


「はい!

 今すぐやりますの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ