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第110話 カルムからのお土産 ~アグリサイド~

シルフィーネ村の騒動が落ち着いた翌日――

俺たちは次の目的地へ向かって出発した。


シルフィーネ村に着いて早々、フォルトナの愚痴から始まった。

どうなることかと思ったが、雨降って地固まるかな。

フォルトナも騒動で改めて自分の村が大事だということがわかったのかもしれない。

それはそれでいいことだとは思う。


「ようやく目的の東方の街ジョードへ迎えるのぅ」


いつもと違い真面目な顔でゾルダが言う。


「ようやくってさ……

 首都で時間かかったのはだいたいゾルダのせいなんだけど」


ゾルダがそもそも武闘大会なんか国王に薦めるから、滞在が伸びたのだし。


「そうだったかのぅ……

 ワシは何もしておらんぞ。

 のぅ、セバスチャン」


俺から目を背けたゾルダはあくまでも白を切るつもりらしい。


「お嬢様、その言い分は無理がございます」


セバスチャンはゾルダの言うことばかり聞くものだと思っていたけど、言う時は言うようだ。


「セ……セバスチャン!

 そんなことはないのじゃ」


「いいえ。

 厳しいかと。

 素直に認めるときは認めないといけません」


「うぬぅ……」


セバスチャンに言われたゾルダは顔を膨らませていた。

よく言ってくれた、セバスチャン!!


「ところでアグリ殿。

 どこかで速度を上げ、早々にジョードへ向かいたいのですが……」


「俺も早く行けるならそうしたいけど、何か手があるの?」


遅れた分を取り戻したいのはやまやまだけど、転移とか使えないし難しいと思っていた。


「少しお時間をいただければと……

 何かいい手がないか考えさせていただきます」


そういうとセバスチャンは俯きながら考え始めた。

俺が浮遊魔法使えれば、道なりじゃなくても行けるのだろうけど……


「ねぇ、アグリ。

 そう言えば、カルムからいただいた物って何でしょうか?」


マリーはずっと気になっていたらしく、そわそわしながらその包をまじまじと見ていた。

出立の間際にカルムさんが持ってきた包。

時間もなかったからお礼だけ言って中身の確認をしていなかった。

カルムさんも


『時間がある時でかまいませんので』


と話していたこともあって、そのままにしていた。


「お菓子とかでしょうか?

 お菓子だったらマリーがいただきたいですわ」


目をキラキラさせながら話すマリー。

いや、それほどの物ではないんじゃないかな。


「いや、ワシ用の酒じゃ。

 あの村ではほとんど飲めなかったしのぅ」


「どこかだ。

 昨晩、さんざん飲みまくっていたのは、どこのどいつだ」


「あれぐらいの量、飲んでないのも同じじゃ」


ドヤ顔で言われても困る。

俺と旅を始めたころは飲んでも二日酔いになっていたのに、今は翌日ケロッとしている。

徐々に体も慣れてきたのだろう。

最近は飲みっぷりが良すぎて大変だ。


「俺も気になっていたし、開けてみるか」


カルムさんからいただいた包をはがすと、中にはたいそうな箱が入っていた。


「立派な箱に入っていますわね」


マリーは箱の外見から、さらにワクワクが止まらないようだ。

ゾルダも何故か目を輝かせている。

箱の状態からして、期待したいのはわかるが……


そう考えながらも、少し期待しつつゆっくり箱のふたを開けた。

そこにあったのは、古い籠手だった。

だいぶ年季が入っていて、古めかしさが目立つ代物だった。

ただ、なんとなく由緒ある雰囲気があり、気品があるような感じを漂わせていた。


中身を見た途端、ゾルダとマリーの興味が失せるのがわかった。

二人とも残念そうな顔をしているからだ。


「ただのガントレットか。

 何故こんなガントレットを奇麗な箱に入れて渡すのじゃ」


「期待して損しましたわ

 カルムも期待させ過ぎですわ」


気持ちは分かるが、ゾルダとマリーが勝手な期待していただけだろう。

カルムさんが悪いわけではない。

でも、こんな古びた籠手をたいそうな箱にしまって渡したくらいだ。

カルムさんの何か意図がありそうな気がする。


箱から籠手を取り出して、持っていた布で拭いてみた。

汚れはそれなりに落とされているようで、埃はついていなかった。


「何かの遺物というか、家宝というかそういうものなのだろうかな。

 手入れはされているようだし……」


だとしても、何の説明をなく渡されている。

勇者にまつわる何かなのだろうか。

悩みながらその籠手を見ていると、移動手段を考えていたセバスチャンが近くに寄ってきた。


「アグリ殿、隅々まで見ていただければわかると思います」


セバスチャンは何かに気づいているようだ。

その言葉に俺は、籠手の裏やちょっとした隙間も確認した。

すると、見覚えのあるような文様が……


「これって……」


「はい。そうです」


「でも、二人は気づいてないようだけど……

 セバスチャンの時は、二人が先に気づいて教えてくれたんだけど」


「少々力が弱っているといいますか、封印がまだ強いのではないかと」


だから二人は気づかないのか。


「じゃ、どうやって封印を弱くすればいいのかな?」


「そのあたりは私も存じ上げません。

 ただ、まずは肌身離さず身に着けてみるというのがいいのかと思います」


確かに身に着けたり、持ったりしたことで、三人とも実体化している。


「ありがとう、セバスチャン。

 とりあえず身に着けてみるよ」


箱から取り出した籠手を左手に着けてみた。

なんだかんだでしっくりした感じがする。


「なんじゃ、気に入ったのか?

 その古そうなガントレットを」


古びていることもあり、あまり良さそうに見えないのだろう。

ゾルダは俺が付けているのを不思議そうに見ていた。


「せっかくカルムさんがくれたんだから、使ってみようかと」


「まぁ、おぬしにはちょうど良いかもな。

 見た目からしてそれぐらいのものが」


古そうな籠手が似合っていると嫌味たっぷりにいうゾルダ。

それに対して俺は


「あぁ、そうかもしれない」


と肯定的な言葉を返した。

その言葉にゾルダは戸惑っていた。

たぶん、俺が突っかかってくると思っていたのだろう。

当てが外れたゾルダは


「そうじゃ、そうじゃ、お似合いじゃ」


とさらに煽ろうとしてきた。

でも、ちょっとめんどくさくなったので


「はいはい」


とだけ返して、スルーしようとした。

それが気に食わなかったようで、ゾルダは機嫌が悪くなった。


「もういい」


と叫ぶと、足早に先を急ぎ始めたのだった。

多少構わななっただけなのに、そんなに怒ることもないのに……

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― 新着の感想 ―
この第110話は、旅の一幕としてとても穏やかで、けれど物語の今後に関わりそうな“伏線”がしっかり仕込まれている、絶妙なバランスの回ですね。 冒頭から一連のフォルトナとのやり取りを経ての出発は、チーム…
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