幕間 当代 癒しの巫女の選ぶ道
久々の予約投稿。
昨日、更新見ていない方は前話からどうぞ。
暖かい日差しの中で、厳しい声が響き渡った。
「これは大切なことだ。しっかりと聞きなさい」
父の、いつにも増して真剣な表情と声に眠気が吹き飛ぶ。
時折しか会うことを許されない父。
母は私を産んですぐになくなったと聞く。私の、一代前の巫女である母の温もりは知らないけれど、代わりに父と沢山の人が私を大切にしてくれる。
そして、母が私が生まれてくることをとても願っていたことも教えてくれた。
両親が手を伸ばせば届く距離にいないというのは、さみしいとは思う。
けれど一人ではないことを知っている。
「癒しの巫女としての力を受け継ぐ者として、大切なことだ。いいね?」
荷が重い。
期待が怖い。
それでも、癒しの巫女という称号に相応しい人になりたいという願望はある。
「シルヴィア、お前も人だということを忘れるな。どれほど癒しの巫女として崇められたとしても、人である事を忘れてはいけない。お前の力には限界がある。救える者には限界がある。嘆いてもいい。悲しんでもいい。だが、奢ってはいけない。絶望してはいけない」
そっと頬に手を添えてくれる父の厳しい声と表情。
けれど、その目には憂いが浮かぶ。
「力あるものは孤独になりやすい。お前もそう感じることがあるやもしれん」
癒しの力を持つものとして、光樹宮という場所に閉じ込められた私。
代々の癒しの巫女が住まう宮としてあるこの場所は広く、薬草園もあって閉塞感はあまりない。
それでも出入りする人の数は限られ、周りは大人ばかり。
「それでもね、シルヴィア。初代の巫女様をはじめとして、多くの方々は自身の意思で人を癒す者であることを誇りとしていた。人を癒す者であることを願い、誇ってくれる人のために癒す者であり続けることを願っていた。お前も、そうなってくれればいいと思っているよ。だがね、お前の人生はお前のものだ。お前の思うように生きてくれることが、私とお前の母の願いでもある。忘れてはならないよ。人を癒すことも大切だが、人を癒したいという心が伴わなければその力は半減してしまう。無理をしてまで癒しの巫女をするくらいなら、そんな地位は捨ててしまって自由に生きることを選びなさい」
こっそり、内緒話をするように、実際にこれは内緒話なのだろう。声を潜め、私以外には聞こえないように話をする父に、私はただ頷いた。
まだ、幼いとも言える私に何故父がこんな話をしたのか。
それはきっと、これが最後の機会だと父がわかっていたからなのだろう。
国の、どんな思惑や陰謀があったのかはわからない。
ただ、それが父と話をした最後の日だった。
自分が何歳だったのかなんて覚えてもいない。たぶん、5歳とか6歳とかくらいだろう。
父の顔もよく思い出せないけれど、その言葉と、父の手のぬくもりと、それからあの、憂いの混じった目をぼんやりと覚えている。
それだけで十分、私は愛されていたんだと思えた。
だから。
きっと孤独だとは思わない。
確かに一人ではないけれど独りであることは多い。今は。
母が父と会えたように、いつか、私も……
そう希望が持てるから。
当代の癒しの巫女さん。名前初登場?
シルヴィアさん(16歳)
なんか、ヒロインっぽい文章だけど全然ヒロイン予定じゃない子。期待した人はごめんなさい(笑)
というか、ヒロインはちゃんと出てきてくれるのかな。




