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転生した赤ちゃん皇女さまは家族のために暗躍します~冷酷皇帝一家の天才幼女がどんな事件も解決でしゅ!~  作者: りょうと かえ
皇女と悪女

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9/9

9.さらに練習しよう

(ちょ、私が赤ちゃんだと思ってっ!!)


 とっさに身の危険を感じた私は、魔力を込めた手のひらでグレンダの頬を打った。


「やぁー!」


 ぱーんと甲高い音が鳴り、グレンダがのけぞる。

 思ったよりもクリーンヒットしてしまった。


「ぶはっ!?」


「まぁ……ラミリア!」


 カミルも席を立ち、私をグレンダから引き取った。

 ど、どうしよう。とりあえずはぐずってみるしかない。


「まんまー、びぇーっ」


「ああ、よしよし……。どうしたのかしら、めったに泣かない子なのに。グレンダ、大丈夫?」


 グレンダは頬を押さえていた。


 やっぱり結構な一撃をお見舞いしてしまったらしく、グレンダの頬にあざができている。

 でも赤ちゃんの私が身を守るためにはこれしかなかった。正当防衛だ。


「……ええ、なんてことないわ。気にしないで」


 グレンダの声と態度は落ち着いて、さっきの悪女の雰囲気は微塵もない。

 でも私は知っている。こんな可愛らしい顔をしながら、この女は私の太ももに爪を突き立てててきたのだ。


 グレンダの手から魔力があふれ、あざがすぅっと引いていく。

 回復系統の魔法だろうか。さすがの魔力だった。


「ごめんなさい、グレンダ」


「いいのよ」


 グレンダは言ってから、にこやかに私たちを見た。


「私こそラミリアちゃんを驚かせてしまってごめんなさい。その子、結構な魔力があるのね?」


「どうも高熱が治ってから、そうみたいなの」


「ふぅん……。良いことじゃない」


 カミルは私のことを見てて、グレンダを見ていない。


 一方、私はグレンダのほうをちらちら見ていた

 だからわかるのだが――めっちゃ睨まれている。


「ふぅ……そろそろお暇しようかしら。また来るわ、カミル姉様」


「わかったわ。またお茶を飲みに来て、グレンダ」


 グレンダは微笑みながら踵を返す。その一瞬、猛烈に憎悪の秘められた視線を私は感じた。


 きっとグレンダは私が見ていることに気が付いていない。

 だから呪詛めいたことを言って、憎悪をぶつけてきたのだ。


 今のやり取りでも私のことは魔力以外わからないはず。


(もし私に相応の知性があると知られたら――怖すぎるでしゅ!)


 良かった。自分のことを軽々しく言わないで正解だった。

 グレンダに私のことがバレたら絶対に嫌な予感がする。


 でも……この出会いは貴重な一幕だった。


 太ももはまだ痛むが、グレンダは私とカミルを敵視している。

 グレンダは要注意人物だ。気を付けないと。


 あとは身体強化もマスターしよう――私はカミルに抱かれながら、そう決意したのだった。



 それからの夜、私はモナックと魔法の練習に勤しんだ。


 モナックは猫だから夜行性で、そのほうがモナックにも都合が良いのだ。

 かくいう私も昼間は人の目が多くて身動きができない。


 なので昼間はたっぷり寝て夜に備える――というライフサイクルのほうが合っている。

 幸い、昼間にどれだけ私が寝てても誰も文句は言わないし。


『あたしも夜の暇潰しがラミリアちゃんとできて、楽しいのにゃん』


『そ、そう? こっちこそありがとなんでしゅ』


『人間は夜、遊んでくれないのが難点にゃーん』


 今日はカミルの寝た後、部屋で身体強化の練習だ。

 腕と腰に重点的な魔力を集め、高速でハイハイする。


『音を出さないようににゃーん』


『うん、モナックのマネをするでしゅ……』


 隠密行動という面で猫は素晴らしい能力を持っている。

 素早く動ける上にしなやかな身体は物音を立てない。


 数日、モナックの指導を受けるとかなりの経験値が貯まってきた。

 その夜はソファーから飛ぶ練習だ。


 魔力を全身にみなぎらせ、馴染ませると想像もできないほど上手に動ける。


『ほっ……でしゅっ!!』


 くるくるくると回転しながら床にすちゃっと着地する。

 我ながらびっくりするほどの身体能力だ。今のままでもオリンピックでメダルが獲れそうな気さえする。一歳児が出場できればだけれど。


『なかなかなのにゃー』


『ありがとうでしゅ……!』


『ラミリアちゃんは、この方面での才能が凄いのにゃね。普通はここまで身体強化は使いこなせないにゃ』


『そうなんでしゅ?』


『テレパシーにしても身体強化にしても、ラミリアちゃんは自分の身体に使う魔法が得意みたいにゃ。……光の群れの魔法はどうにゃん?』


『それなんでしゅよね……』


 カミルが見せた練習用の魔法、光の群れ。

 魔法としてはかなり簡単な部類だとか。というのも魔力を光らせて動かすだけだから。


「ばぶー……」


 私は人差し指を立てて集中する。指先に淡い光は出るのだが、それだけだった。


 ううーん。まず身体の外に飛ばせない。

 手元を照らしたいなら擦ったマッチを持ったほうがマシなレベルだった。


『最初の時はぺかーって光るかと思ったけど、それが限界にゃんね』


『あたちはこっちのほうの才能がないでしゅ?』


『多分そうにゃね。かなり珍しいタイプではあるにゃん』


 大多数は身体から魔力を飛ばす魔法のほうが得意だという。


 それは光の粒だとかが目に見えてイメージできるからだ。

 光の群れもごく最初はマッチの火やホタルを見ながら練習するのだとか。


(要は目で見て覚えるってことができるからでしゅね)


 なので直接目に見えない魔法のほうが習得に時間がかかり、不得手な人が多い。

 でも私は逆だった。テレパシーや身体強化はすんなり会得できても、手元から魔力を離す魔法が非常に難しい。


『年齢もあるかもしれないにゃ。普通、一歳児は無意識でしか魔力を使えないしにゃ』


『一歳児の魔法練習メニューがあるわけじゃないでしゅもんね』


 魔法はおおむね自我ができてくる五歳くらいから習う。

 私は早過ぎるため、その意味でも規格外だ。自主練しかない。


 その後はこっそりモーニャと夜の散歩をする。

 居住区内の構造もかなりわかってきて、速く移動できるようになっていた。


 今日、忍び込んだのは皇宮奥の中庭だ。

 真夏の風は生温く、じっとりとしている。それでも草木と花の香りが満ちて、新鮮な気持ち慣になれるのがこの中庭だ。


 池、テラス、ベンチ、花壇……池には橋がかかり、蔓で編まれたアーチや彫刻もたくさん置かれている。


 池は浅く、ポンプが稼働して泡が浮き出ていた。

 今夜は星の光が際立って美しく、池に気持ち良く反射している。


『センスのある池でしゅねー』


『ここは歴代皇帝のお気に入りの中庭にゃん』


『ほえー……』


 私はじーっと池を見た。水草も整えられており、水底の石も丸くて輝いている。

 隅々まで気を配って整えているのがわかる池だ。


 その中でひとつだけ不思議な点がある。

 こんなに良さげな池にひとつ足りない点があるような。


『池に魚がいないでしゅ。いてもいい気がするのに』


『昔、あたしがじーっと泳いでる魚を見ていたら、その時の皇帝に魚を移されたにゃん』


『………』


『なんにゃん!? さすがのあたしも池の魚を獲って食べるわけないのにゃ!』


『う、うん。そうでしゅよね?』 


 しかしその時の皇帝はモナックの視線に不安を抱いたのだろう。

 モナックとのテレパシーができなければ、意図を読むことはできない。やむを得ない選択だ。

 でもそういうやり取りを聞いて、私はちょっと嬉しくなる。


『ふふっ……』


『どうしたのにゃ?』


『歴史を感じられて、でしゅ』


 こうしてさらに数日が経過し、身体強化にも結構慣れてきた。

 季節は夏真っ盛り。そんなある日、ついに兄たちと会える日がやってきたのだ。

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