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転生した赤ちゃん皇女さまは家族のために暗躍します~冷酷皇帝一家の天才幼女がどんな事件も解決でしゅ!~  作者: りょうと かえ
覚醒

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3.真夜中の母

 どれほど時間が経っただろうか。


「ばぶ……?」


 ささやかな物音で私はそっと目を覚ます。


 部屋は完全な真っ暗ではなく、いくつかの小さな灯りがついていた。


 目を細めて首をゆっくり物音のほうに向けると、寝間着姿のカミルがいる。

 うっすらとした部屋の明かりは壁時計は深夜1時を指していた。


 カミルが分厚い本を片手に持ち、私へと歩いてくる。

 私は目を閉じて、寝たふりをした。


「……本当に良かった」


 金髪に、わずかに触れられた感触。

 やや疲れた声を出しながらカミル私の髪に触れたのだろう。


 私は寝たふりを続けていた。

 前世でも私はお母さんという存在をよく知らない。


 学校の友達たちとかで間接的に知っている程度だ――と今はわかっている。

 あるいは映画とかでも家族愛は当たり前のテーマだ。


 カミルの短い言葉が心に沁みる。


「まんま」


 呟いた私は、腕を空に向ける。赤ちゃんのたわいない動きだ。

 それにカミルは声を弾ませる。


「あら? ふふっ、私の夢でも見ているのかしら……?」


 カミルの指が私の指に触れた。私を起こさないよう、ほんのちょっとした接触だけ。

 でもとても温かい。


 カミルは少しの間、私の指をつついて離れていった。


「私も頑張らないとね」


 彼女はそのままベッドに向かい、枕元の明かりをつける。

 ぼんやりとした明かりの中、カミルは本を読み始めた。


 そして時折、カミルは手をかざす。

 なんだろうか、肌がじんわりと温かくなるような感覚が伝わってくる。


『あれが魔法にゃーん』


 眠そうなモナックのテレパシーが頭の中に響いてきた。


 もぞもぞと動くモナックの気配がソファーらへんから聞こえてくる。

 寝返りを打つ振りをして、カミルのほうに視線を向ける。


 本を持ったカミルはぶつぶつと口を動かしながら、片手をかざしていた。


 ぼんやりとした蛍の光のような粒がカミルの手からいくつか舞い上がり、夜の部屋に踊る。

 小さな光の粒が交差し、くるくると回っていた。


 さらに白い光の粒は赤になったり、青になったり。

 色を変えてカミルの手のひらの上を飛ぶ。


『綺麗でしゅ……』


 これが魔法。前世ではあり得ない光景だが、怖くはなかった。

 母の優しさが光になって舞っているようだったから。


 私にもできたりするのだろうか……。


 熱と波動。集中するとカミルの腕から何かが出ているように感じる。

 これが魔力だと私は直感した。


 目を閉じてもはっきりと光の粒が――心の眼で見えるようだ。

 私がぷにっとした手をそっとカミルのほうに向けると、モナックが慌てる。


『ストップにゃ! ラミリアちゃんがソレをやったら大変なことになるのにゃ!』


『はいでしゅっ?』


 言われて私はすぐに腕を引っ込める。


『ふぅ……光の群れは練習用の魔法にゃ。魔力がない人が鍛えるためのもので、ラミリアちゃんがマネしたら――』


『ど、どうなってたんでしゅ?』


『部屋中が光で埋め尽くされるのにゃ! 大騒ぎになって眠れなくなるにゃ……!』


『う、うわー……』


 軽い気持ちでマネしようとしたら大惨事だ。モナックが止めてくれて助かった。

 しかしモナックに止められてひとつ疑問が生まれる。


『ねぇ、でも現時点で私の魔力のほうがそんなに強いんでしゅか?』


 カミルは確かヘイラル帝国の公爵令嬢で、相応の教育を受けているはず。

 生まれたばかりの私よりも遥かに優位に感じられるのに。


『ざっとにゃけど、ラミリアちゃんのほうが百倍は上にゃ』


『そ、そんなにでしゅか!?』


『だからカミルちゃんと同じ魔法を使うと百倍になっちゃうにゃ。気を付けてにゃーん』


 先にそれを教えてもらえて良かった。


 うっかり人の魔法をマネしたら大変なことになる……覚えておこう。

 にしてもカミルは見ていると、ずーっと魔法の練習をしている。


 夜遅くに仕事から戻ってきての深夜練習だ。

 時刻はとっくに日付変更線を超えているが、カミルは一生懸命に本を読みながら魔法を使い続けていた。


『あれは魔法の教科書でしゅ?』


『んにゃ……にゃ、そうにゃ……』


 モナックは寝ぼけた声で答えた。どうやら眠気が限界らしい。

 私も多分、寝たほうがいい。


 一定のリズムでまだ光の粒は舞っている。

 星よりも美しい母の魔法。新しい記憶と今後のこと。


 やれることを考えなければいけないけれど……カミルが母で良かったと、私は思う。

 母の為にも私も頑張ろう。この異世界で。

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


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