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第百十話  世界情勢

 令和初の投稿だー!

 結構出遅れて悔しい・・・

 セイキュリー大陸は、破滅へ向けてまっしぐらとなっていた。

 バスティリア王国とエイスティア王国の惨状は、ハレル教圏の結束に楔を打ち、その動揺は徐々に表面化していた。

 まず動いたのは、両国の周辺国である。

 独断行動によって動き出したアウトリア王国の聖教軍の進軍が、各所へ影響を与えたのである。

 周辺国は、距離的に近い事から教皇庁よりも先にこの動きを把握すると、すぐにこの動きがおかしい事に気付いた。

 対ネルウィー公国で招集されたにも関わらず、目的とは関係の無い動きを始めたのだから当然である。

 警戒の為に各国が独自に軍を動かす事となったのだが、この動きは軍を動かした各国の更にその周辺国を疑心暗鬼にさせた。

 この動きは、勇者一行の活動によって一応沈静化したが、突発的に発生した事態であった為に拭い難い不信感に覆われる事となった。

 教皇庁が事態を把握した頃には全てが終わっており、介入する暇さえ無かったと言う体たらくである。

 尤も、迅速に対応したお陰でそれ程深刻化はしなかった為、表面上は解決したと言っても差し支え無かった。

 だが、二ヶ国の崩壊に加えてこの様な醜態を晒した事に一般の信徒は大きく動揺していた。

 街道整備が完了し、これから本格的に復興しようとした所へこの様な騒ぎが齎されたのである。

 「その内、自分も同じ様な騒ぎに巻き込まれるかも知れない。」と考える者が多く、復興の為のモチベーションは大きく下がっていた。

 それでも、通常であれば大量の奴隷を酷使する事で補えていたのだが、かなり前からその奴隷の多くが行方不明となっていたのである。

 教義の問題もあり、ハレル教圏の抱えている奴隷の数は多くは無い。

 およそ20万人と言った所ではあるが、労働奴隷はその内の半数程度に過ぎない。

 更に、その内3万人以上が行方不明となっているのである。

 いくら酷使しようとも、根本的に人手不足となっている現状は変わらなかった。

 更に、まともに労働に勤しんでいる者に対する締め上げも、徐々に厳しくなっていた。

 一般の信徒は知らない事ではあるが、センテル帝国との貿易に起因する富の枯渇が発生しているのである。

 あまりにも不公平なレートによって何処もかしこも節制を余儀なくされており、その影響がモロに一般へと波及していたのである。

 どれ程頑張っても上向かない状況に、「ハルーラ様に見放されたのでは!?」と考える信徒が急増し始めていた。

 しかし、それだけで済めば良い方で、自暴自棄になって暴れ散らす者や、中にはハレル教そのものを盛大に批判する者まで現れる始末であった。

 尤も、その様な真似をしてタダで済む筈も無く、苛烈な弾圧が横行している。

 しかし、弾圧する側も動揺している事に変わりは無く、疑心暗鬼から間違った判断を下す事態も度々発生していた。

 当然、信徒の不安は更に増す事となり、まともに信用出来るのは身内だけと言う地域も現れ始めていた。

 この状況を絶好の機会と捉えているのが、ハレル教圏に属している被征服国である。

 彼等の扱いは、お世辞にも良いとは言えない。

 その為、常に反乱の機会を伺っているのである。

 とは言え、今すぐに実行すればハレル教圏結束の為の絶好の口実を与えかねない。

 その為、水面下で準備しつつ機が来るのを待ち続けていた。

 この様な事態に対し、教皇庁は外部へ捌け口を求めた。

 そして、通商破壊と武力侵攻を実行した。

 その目的は、どちらも他大陸の富の奪取である。

 ところが、武力侵攻は目的地であるレック諸島へ近付く以前の段階で返り討ちに遭い、通商破壊は当初こそ上手く行っていたものの、命令の不徹底からセンテル帝国籍の商船へ攻撃を行ってしまい、この状況を危惧していたセンテル帝国の本格介入を招いてしまう。

 これにより、ハレル教圏の動員可能な戦力が大幅にダウンしてしまい、防衛に頭を悩ませる事態となった。

 事態はそれだけに留まらず、核攻撃後も貿易を継続していた一派すらも敵に回す事となってしまい、本格的に打つ手が無くなっていた。

 その様な末期状態のハレル教圏に苦しめられているのが、イウリシア大陸である。

 この大陸は、新たな問題の表面化に頭を悩ませていた。

 暁帝国との国交樹立以降、最も安定した発展を享受して来たのがイウリシア大陸である。

 単に技術が近代に達しただけでは無く、インフラ整備によって流通が大幅に活発化していた。

 更に、暁帝国によって新たな資源が次々と見出され、既存の資源に関しても新たな鉱脈を多く発見していた。

 これ等の要素により、経済規模は以前の6倍に迫る勢いで拡大している。

 同時にインフレも進行したが、暁勢力圏での紙幣の導入に合わせて迅速に紙幣を採用した事もあり、混乱を最小限に抑え込む事に成功した。

 しかし、最大の問題は紙幣の導入を含むあらゆる新要素への更新である。

 官民問わず、あらゆる分野で近世から近代への機材の更新を全面的に行わなければならなくなったのである。

 国力に余裕のあるアルーシ連邦とピルシー帝国はともかく、その他の中小国にとっては深刻以上の問題であった。

 暁帝国依存を警戒するフレンチェフ大統領の呼び掛けにより、イウリシア大陸全体を巻き込んで独自の地位を確保すると言う思想の元、アルーシ連邦の支援を受けてどうにか近代国家としての体を保つ事には成功したが、末端まで浸透しているとは言い難い状況が長らく続いていた。

 その状況が大きく変わったのは、世界会議以降である。

 アルーシ連邦の必死の働き掛けによって独自の経済圏を形成しつつあったイウリシア大陸は、センテル帝国を中心とする情勢変化にモロに巻き込まれる事となった。

 イウリシア大陸の独自の地位は、ウォルデ大陸を巻き込む形で行われていた。

 センテル帝国の影響力は、経済的結び付きを強めるだけでもそれなりの効果を発揮するものであったのである。

 その筈は、一人の外交官僚の勝手によって潰えた。

 結局、暁帝国との結び付きを強めざるを得ず、イウリシア大陸は暁帝国経済圏の支部的な存在へとなり下がろうとしていた。

 その状況を止めたのが、世界中に存在する資本である。

 暁帝国の存在により、主要な資本が東部地域へ集中しつつあったのである。

 暁帝国との関係が深いイウリシア大陸も、その恩恵を受ける事となった。

 中小国もその恩恵を受ける事となり、近代化が更に進む事となった。

 フレンチェフの方策が破綻した事で、皮肉にもフレンチェフの考えていた展開に近い展開となったのである。

 どちらが良いのかは、誰にも分からない。

 だがその様な状況とは関係無く、ハレル教圏の暴走が事態を悪化させていた。

 ノーバリシアル制裁に端を発する世界の緊張は、ハレル教圏の軍事行動を引き鉄として東部地域で大きなうねりとなりつつあった。

 どうにか全面戦争の危機は押さえ込めているが、それだけで楽観してくれる程資本家は生易しくは無い。

 資本の中心であったセイルモン諸島から撤収の動きが活発化してしまい、折角の好景気に水を差されてしまったのである。

 それでも、暁帝国から手を引くなど有り得ない。

 次善の策として、イウリシア大陸を経由するルートがメインのルートとなった。

 イウリシア大陸への資本投下は、この様な事態へ備えての意味合いもあった為、見事にその思惑が当たった事となる。

 だが、此処でその思惑の足を引っ張っているのが、大陸外に潜伏するハレル教徒である。

 大規模なテロ行為は防げているとは言え、ハレル教圏の行動が過剰にハレル教徒の活動に対する不安を煽っている現状が存在している。

 この様な背景から、イウリシア大陸は障害の多い大陸であると認識され、経済活動が鈍化していた。

 セイルモン諸島が頼れなくなり、肝心の大陸でも勢いが弱まってしまっては、いよいよ打つ手が無くなってしまう。

 現在景気を保てているのは、大規模な軍備更新による所が大きい。

 だが、それも長くは続かない。

 早急に問題を解決しなければならないが、具体策は暁帝国が提示した勇者一行の亡命しか存在していなかった。

 これ等、東部地域で発生している情勢変化に最も過敏に反応しているのが、ウォルデ大陸である。

 この大陸は、センテル帝国の一強体制によって成り立っている。

 暁帝国との関係構築による梃入れにより、その傾向はより強まっていた。

 かつての世界会議による急激な影響力低下は、各方面の懸命な努力によってかなり回復していた。

 とは言え、暁帝国の台頭により、かつて程の圧倒的な影響力は持っていない。

 だが、その様な事は今のセンテル帝国にとっては些細な問題である。

 目下最大の問題は、東部地域の不安定化である。

 暁帝国との関係は、センテル帝国経済にも大きな影響を及ぼしている。

 また、その様な事情を抜きにしても、国是から情勢の不安定化は望ましくない。

 ノーバリシアル制裁終結直後と言う事もあり、ハレル教圏牽制の為に過剰な戦力が充てられた。

 その判断は、幸か不幸か自国籍の船舶の救助に役立つ事となった。

 軍艦ならばともかく、民間船舶を躊躇いも無く攻撃する姿勢には、軍事行動を嫌う傾向にあるセンテル帝国と言えども、激怒するに十分であった。

 この件は大きく報道され、世論も軍事行動を後押ししていた。

 そして、ハレル教圏所属艦の徹底的な狩り出しが行われる事となり、セイルモン諸島情勢の悪化は一気に押し留められた。

 とは言え、急激な情勢変化によって暁帝国以外はこの変化を把握出来ておらず、緊張状態は相変わらず保たれている。

 また、急激に損害が増したとは言え、ハレル教圏の通商破壊は続行中である。

 情勢のこれ以上の深刻化を止める事は出来たが、好転するにはまだまだ時間を要する事に変わりは無い。

 だが、東部地域への戦力集中は、裏で発生しているもう一つの問題を放置する事へ繋がっていた。

 その問題は、ガリスレーン大陸で発生している。

 暁帝国のモアガル帝国との関係構築は、同大陸の各国を刺激した。

 単に友好的接触を試みる国はともかく、モアガル帝国が悪党として仕立て上げられて来たのを良い事に、モアガル帝国を追い落とそうとする野心に燃える国が殊の外多かったのである。

 その結果、暁帝国を中心とする情勢変化に乗り遅れる事となってしまったのだが、それで大人しく引き下がる様な者などいない。

 野心を捨てられない各国は、強硬策へと舵を切り始めた。

 とは言え、徒に列強国を敵に回すなど自殺行為でしか無い。

 各国は、対モアガル帝国で連携を取り始めた。

 それでも、列強国との技術差、国力差は極めて大きく、具体的な行動を起こす事は無かった。

 ところが、ノーバリシアル神聖国によるモアガル帝国攻撃が、均衡を大きく崩してしまった。

 沿岸で留めはしたが被害はそれなりに大きく、その被害を「国力が大幅に弱まった!」と都合良く解釈する事で、各地で小競り合いが頻発し始めていたのである。

 正規軍を出す国も多く、戦局はひたすらに泥沼化して行った。

 更に、穏やかに接触を成功させた国々にも被害が及び始め、大陸全体が極めて険悪な情勢へと変わってしまったのである。

 しかし、希望的観測に基づく軽挙妄動などが成功する筈も無く、直接的な被害は国境線付近に留まっている。

 一向に状況が好転しない状況に業を煮やした強硬な国々は、遂に暁帝国にまで矛先を向けた。

 直接的な軍事行動こそ不可能だが、何らかの弱点を見付ける事で譲歩を迫ろうと試み始めたのである。

 その舞台となったのが、セイルモン諸島である。

 しかし、その様な動きを警戒しない国など存在する筈も無く、中でも突出した技術による警戒網を保有する暁帝国を出し抜く事は不可能であった。

 やる事成す事全てが失敗しているにも関わらず、各国はひたすらに頑迷であった。

 いつまで経っても手を緩めない強硬な態度に穏健な各国はいい加減うんざりしているが、ひとまずは押さえ込めている事からそれ程深刻に捉えられてはいない。

 ガリスレーン大陸の騒ぎを対岸の火事として眺めているのが、エイハリーク大陸である。

 この大陸では、大きな情勢変化は起きていない。

 エンディエ王国が東部地域情勢を注視している以外は、ズリ族が積極的な情報収集を行っている程度である。

 そもそも、人口の少ない遊牧を中心とする大陸である為、外海の情勢へ興味を示す事自体が無理のある話なのである。

 唯一その能力を保有しているエンディエ王国も、暁帝国との直接的な国交は持っておらず、主にガリスレーン大陸を経由して輸入される各種製品によって、生活水準が多少上向いている程度である

 しかし、ドレイグ王国は例外であり、センテル帝国へ大使館の設置を行っている。

 実際、規模はともかくその力は極めて大きく、ドレイグ王国のこの本格的な動きには世界中が驚きを以って見つめていた。

 それによってすぐに情勢が動く事は無いが、エイハリーク大陸の情勢変化を促すのでは無いかと思われている。

 暁帝国台頭以前からの情勢に変化が見えるのは此処までであり、更に西のアウステルト大陸には、目立った変化は見られない。

 アウステルト大陸の更に西のエイグロス帝国は暁帝国を注視してこそいるが、具体的な動きをする事は一切無く、いつも通りひたすらに国力の増強に注力している。

 東の果てより生じた巨大な波紋は、今や世界中の有様を大きく変えていた。

 その変革は徐々に収まりを見せ始めてはいるが、未だにあらゆる国々が策動している。

 ある国は発展を享受し、ある国は今正に滅び去らんとしている。

 様々な変化が起こり続けるこの世界の動きを、人々は不安を以って見つめ続ける。




 ・・・ ・・・ ・・・




 ???



「報告が纏まりました。」

「そうか。では、早速聞かせてくれ。」

「前回の調査とあまり変わりません。戦艦を保有している勢力ですが、更に強力な艦を複数建造している事が分かりました。総数は、10隻を超える事は確実です。」

「ふむ。これだけの物を独力で作り上げる事が出来るならば、此方側へ誘うのも良いかも知れんな。」

「それと、装甲空母を持つ勢力ですが、奇妙な航空機を確認しました。」

「奇妙?」

「これです。」

「・・・プロペラが、上に付いている?」

「報告によりますと、空中で静止が可能な航空機との事です。」

「空中で静止だと!?そんなモノがあれば、戦術の幅が一気に広がるでは無いか!」

「ただし、速度はあまり早くは無いそうです。せいぜい300キロ弱が限界との事です。」

「うーむ・・・制空権の確保が前提になると言う事だな。だが、この様な物が作れるならば、是非とも我等の元へ降って欲しいものだ。」

「同感です。この二勢力は、戦力として見るべきと考えます。」

「他はどうだ?」

「つい最近、帆船から脱した勢力もある様ですが、見込みはありません。」

「ならば、そちらは予定通りに行こう。ところで、肝心の二勢力の航空戦力はどうなっているのだ?」

「戦艦を保有している方は、陸上も複葉機で間違いありません。ただし、装甲空母を保有している方は単葉機が確認されました。」

「やはりそうか・・・それで、性能は?」

「遠方からの観察の為、そこまで詳しい事は分かりませんが速度は400半ばは確実、機動性もそれなりで、安定性が極めて高そうとの事です。武装については不明ですが、13ミリクラスを4~6挺搭載している可能性ありとの事です。」

「思ったよりも苦戦しそうだな。やはり、味方に着ける方向で行こう。」

「報告は以上です。」

「分かった。情報収集は此処までだ。近い内に、行動を起こすぞ。」



 気になることがあれば、質問してください。

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