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海に降る雨  作者: 美斑 寧子
本編
46/152

46.湖畔の東屋で

※きりが良いところで区切ったので、今回短めです。あしからず~~(^o^;)b。


 かくして、クリスは去った。リンとアクセルの間にささやかな爪痕を残して。

 最後にリンを抱きしめ、キラキラと輝く瞳で再会を約束しつつ、アクセルと目を合わせてにやりとわらった少年に、同じく人の悪そうな、しかし共通の目標を持つライバルとしての親近感をこめた眼差しで答えて、アクセルは破顔した。

 そして、二人は予定通り、湖畔の散策道に足を踏み入れた。


*-*-*-*-*


 真夏の眩い日射しを遮るようにその枝を伸ばした木々は、しかし、綿密に手入れされ程良い木陰を提供してくれている。ここ、レ・バン湖畔にはデューランズ内外の資産家達が建てた高級な別荘が数多くある関係で、多額の固定資産税の恩恵にあずかる自治体が、それと引き替えに風光明媚な自然の整備や、治安の維持に力を注いでいるからだ。

 この散策道もその一つで、暑い地方の水辺、という悪条件にもかかわらず、羽虫の出ないようにそれらを駆逐する有益な天敵虫によるバイオ環境が整備されている。

 光る湖面を見渡す東屋には清潔なベンチが置かれ、チラチラと木漏れ日が斑模様をつくるその軒下には、可愛らしい水盤が置かれている。その中に作られた、メダカと睡蓮の共存によるささやかな緑色した小宇宙に、思わず顔がほころぶリン。そしてそんなリンの顔を見て、胸中でガッツポーズを取るアクセルなのだった。


「気持ちの良い場所ですね。」


リンが風に乱れた髪を押さえながら言った。アクセルはその横顔を盗み見ながら、胸をひたひたと満たす幸福感に酔った。

 今、アクセルは自分の気持ちを、いまだかつて無い確かさで把握していた。

 リンが好きなこと。

 リンとずっと一緒にいたいこと。

 それにはリンがリンであればそれだけで良い。リンに付随する何にも関係がないこと。

 リンの笑顔の為ならば、なんでも出来ること。

 アクセルの人生で、これほどシンプルでしかも心浮き立つ確信を持ったことがあっただろうか?無論、ありはしない。

 目の前のこの、アクセルの夢の具現である少女を見つめながら、アクセルはリラックスして、すっと息を吸い込んだ。


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