第94話 ゴッコ遊び
オリハルコンを持ち込んだ時から、怪しいとは思っていたが……
レベル72 ジグルド
称 号 禁忌を歩む鍛冶戦士
アイテム 携帯鍛冶道具一式 作業服 アダマンランス オリハルコンの盾
ステータス 伝説の鍛冶戦士
ス キ ル 炎熱操作8 ドワーフの加護
だれ、あなた? まえ、28とかだったよね? それに称号も変わっているし。
持っていた武器と盾が、なんだか伝説っぽい素材で出来ていたのも知らなかった。
いったいどこで何してきたんだ。
なにより、鍛冶戦士? 純粋な鍛冶職人じゃなくなったのか?
それなのにオリハルコンを扱えるの?
色々聞いてみたが、
「邪魔じゃ」
この一言で鍛冶場から追い出された……
普段から鋭い目つきなのに、仕事となるとさらにきつくなる。
そんな、オッサンの茶色の目からは、いきいきとした生の躍動感すら感じられるし。一心に槌を振るう様子には、俺でなくても心を奪われると思う。
何をつくっているんだ?
という疑問はその日のうちに解かれた。
白髪を乱し、いつもの作業服を汚した状態で鍛冶場からでてくると、その手に、ライトグリーンの輝きを放つ弓があった。
「誰のもの?」
「フェルマンだ」
「ああ、弓得意だしね」
「それもあるが、これは精霊との交感力を高めるためのものでもある」
「……え? オリハルコンってそういう効果があるの?」
初耳なんだが?
まぁ、元々オリハルコンって、どういう金属なのか俺はよくわかっていないんだけど。
「オリハルコンにはない。じゃが、ミスリルと混ぜ合わせることによって、変化が生まれる。その金属で、使用者が扱いなれた武器をつくるとそうした現象がおきるのじゃ」
「ふぇ~ じゃあ、フェルマンさん、今以上に強くなるのか…」
「違う」
「え?」
「フェルマンだけではないぞ。精霊との交感に成功したダークエルフ全員につくってやるつもりじゃ。これは試作品となる」
「……」
とんでもないこと言いだしたな。
それ材料の心配もあるけど、オッサンの体のほうも大丈夫か?
……無茶しなければいいんだけど。
そんなオッサンの仕事場に、ミリアもやってきて、
「私の武器も頼めない?」
澄んだ青い瞳を向け尋ねてきた。
以前は長い金髪を編んでいたが、ここ最近はそういうことがほとんどない。
普通に降ろしているんだが、どうも前に比べサラサラ感が増している気がする。何か美容液でも入手したのか?
「それはよいが、今は何をつかっておる?」
「これよ」
と言って右手を挙げてみせた。そこには前に、ラーグスから奪った指輪がつけられている。
「指輪か。そのタイプでいいのか?」
「いえ、できれば腕輪にしてくれない?」
「腕輪? よいのか?」
「ええ。前につかっていたこともあるし」
「前といえば、杖をもっておったじゃろ? 悪いが、あれ以上のものはつくれんぞ」
うへ。
いまのオッサンにそこまで言わせるほどの杖だったのか。
たしか、牢にいれられたときに奪われたままだよな。
そんなに凄いものだとわかっていれば、脱出するときに探して見てもよかったかもしれない。
「やっぱり? それはしょうがないわ」
「わかった。では、魔力増幅でいくか? それとも速度の向上でいくか? 両方つけることもできるが、どちらも物足りなくなる可能性があるぞ」
「魔力でお願い。私の場合、無詠唱があるから、速度のほうは問題ないのよ」
「わかった。では、ミスリルで腕輪をつくり、ルーネスでも埋め込んでおくぞ」
「ルーネスあるの? それは助かるわ」
「竜人たちからもらった。彼らは宝集めが趣味らしくてな。今度の戦いで役立ててくれと言われた」
なんだか俺にはサッパリな会話が続くが、いい方向に話がすすんでいるようで安心した。
「ヒサ君!」
今度はケイコか。
こっちは相変わらずのポニテだ。
あ、でも服は変わったな。制服は大事にしまっているらしい。今は、赤いブラウスと紺のスカートだ。
「どうした? そんなにあわてて」
「私にもできることない?」
「……っていわれてもな」
ケイコと合流してからもう5日ほどたっているんだが、部隊編成は終わっている。
そんな状態なのに、戦闘経験のないケイコをどこかの部隊にいれるなんてことはできない。
一緒に召喚された2人を助けたいと考えているのは分かるんだけどね。
「なんでもするよ! マップスキル便利だし!」
といいつつ、なぜかメイスをぶんぶん回す。
鑑定で見た感じ、神聖魔法つかえるんだし、そっちのほうで協力しようとは思わないのか?
「まぁ、考えておくけど、部隊編成はフェルマンさんとイルマが指揮っているから、俺より、あっちの2人に言った方がいいぞ」
「うッ!」
「……なんだ、その「うッ!」てのは」
また何かやらかしてないか? と疑いの目をむけていると、俺の肩がポンポンって叩かれた。
「もう聞いたのよ。だけど、どっちでもいらないって言われてね」
ミリアによる説明がはいりました。
でも、それくらいなら安心だな。
「そういや、ミリアはどうするんだ?」
「私は遊撃部隊にはいることになったわ。テラーたちと一緒ね」
「ああ……テラーか」
「なに、不安?」
クスって笑みを浮かべて、俺をみるな。
前から抱えていた悩みが浮かんでくるからやめてくれ。
「テラー? って、前に電話で言ってた人?」
ああぁ! ケイコまでくいついてきた!
「ヒサオ、この子に何いったの?」
「いや……テラーのやつ謝りに来ないからさ」
「うゎ。ダッサ」
「ひでぇえ!」
「そんな相談、普通女の子にする? なにとち狂ってんのよ」
「い、いや。あの時は、愚痴きいてほしくて」
「やっぱり、ダッサ」
「おい!」
どこでそんな言葉を覚え……出どころはケイコだな。
「あんた聞いた話だと、魔族側の外交大使とかになったらしいじゃない。なのに、そんなことでウジウジ悩んで、あげくに幼馴染に愚痴こぼしたの? 成長してんのかどうか分からないわね」
「お前は、鬼か! どんだけ俺を追い詰めるんだよ!」
ジリジリと壁に追い詰められております。精神的にも。
つか、こいつだって、『テラー!』とか『呼び捨てにするな!』とかいってたじゃねぇか! なんでここまで言われなきゃならんのだ!
「だったらシャキっとしなさいよ。戦争に参加するんでしょ? そんなんでどうするの」
「まあ、そっちは、なんとかなるだろう」
若干考えがあるから、参加することは早めにいってあったんだよな。
「……急に、立ち直ったわね」
「愚痴こぼしたのは言う通りだとおもうけど、戦争のほうはまた別問題だから」
カリスさんがやられた光景を思い出すと、ふざけていられない。
「ケイコ、携帯はどうなった?」
「え? うんと、やっぱりだめみたい」
唐突に話をきりかえ、ケイコに聞いてみる。
こいつの携帯も、使用不可状態になってしまったらしい。
「じゃあ、また、ちょっとかけてみるぞ」
「うん。いいよ」
ささっと用件を済ませようケイコのアドレスにかけると、
「はいは~い」
『はいは~い』
「……」
うん。やっぱりだ。
――――プチ
「やっぱり携帯じゃなくて、頭のほうに通じるね」
「……ああ」
オッサンに通話したら、連絡がとれたからどうやっていたんだろ? と思ったら、頭の中に聞こえてきていたらしい。だから念話って言ったんだろうな。
相手側は普通に喋ったり、思うだけでいいみたいで、俺の携帯から声が聞こえてくる。
ケイコの携帯が使えなくなったのを聞かせられて、この事を試したってわけだ。
しかし、まったく覚えのない人のアドレスまで登録しされているんだが、どういう判断基準なんだ?
「何が問題?」
ミリアが、俺の後ろからまわりこんで携帯を覗いてきたので、登録された人達のアドレスを見せた。
「私やジグルドが登録されているのは、分かるけど…誰この人たち?」
俺もしらない見知らぬ名前がズラズラとあって、首を横に振ってこたえた。
「しらないの?」
「全く覚えがない」
「……ためしにやってみたら?」
「やってみたら?……って、この人たちに連絡?」
「そうそう」
「それ良いかもしれないよ。何かわかるかも。やってみたらヒサ君」
ケイコまでもか。こいつたまに適格なこというからな~
うーん……
携帯をカチャカチャしながら考えてみるけど、これって……
……あっ!
「ちょっと試してみる」
ちゃっちゃと携帯を開いて、てきとうに電話っと。
「なんか悪い顔してない?」
ミリアさんうるさいよ。
トゥルウルルー…ガチャ
……『暇だなあ~』
繋がったな。よしよし。
『託宣が聞こえなくなってから、一気にやることなくなったよな。お前、普段どうしてる?』
ほー たぶん誰かと話をしているようだな。どれ、
「聞こえるか?」
『ッ!?』
さっきの声からして男だな。それもわりと年配の。登録されている名前は……よし。
「クラスト=ダム」
『……お、おい。久しぶりに託宣が聞こえたぞ!』
………なに? 託宣?
え?
ちょっとクラストさん?
『ああ、たぶんそうだ。おっと、ちょっと静かにしていろよ』
あー うん。なんか分かってきた。
えーとこういう場合、小説だと……
「告げる。汝の隣人を殴りつけよ。その後、汝も殴られよ」
『……おい、なぐるぞ』
いかん。これは面白い!
ミリア達が気にし始めているけど、黙っているように合図をだした。ここで介入されたら面倒になりかねん。
電話口のむこうから、殴る蹴るの音がきこえてくるが……おれ、蹴りのことまではいってないんだが?
『はぁはぁ。こ、このくらいでいいはずだ。お、おいもういいって! やめろ!』
……まだ殴られてる。もういいかな。
ガチャ
一方的にきった。
「なに今の? どういうことよ」
「咄嗟におもいついた託宣ゴッコ? なんか勘違いされたから、ちょっと試してみた。これ作戦に利用できるんじゃないか?」
なーんかわかってしまった。グフフフフフ




