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第87話 報酬

 俺が見知ったことを全てはなすと、魔王が呻き声をだし、頭をかかえた。


「君の交渉術だったか? あれの件から2ヶ月だよね?」


「はい」


「……それだけで大砲を作って実践でつかえる数をそろえたの? どうやったんだろ?」


「それで調査のために1台捕獲してもらいました。ちょっと気になるのがありまして」


「さっきいっていたね。それでか。どう気になったんだい?」


「はい」


 聞かれたので、銃を撃っているのをみて思ったことを話す。

 あの時、銃をかまえ引き金を引くまえに、銃身が赤く光っているのを見た。

 あんな現象は普通おきない。

 だとしたら普通ではない何かが銃身内部でおきているはず。その何かについても……


「そうきたのか。その発想はなかったな」


「わかりますか?」


「君もわかったんだろ?」


「それを確認したくて大砲を奪いました」


「確かめたら、また報告にきてね」


 魔王はこの話を一端やめるつもりらしく、足をくみなおし、


「さて、僕の方からだけど、君に報酬をあげたいと思う」


「報酬?」


「なんだい? 君、もしかして、僕が君をタダ働きさせているのかと思ったのかい?」


「え? あ、いえ、そんなことはないですよ」


 まったく頭になかった。

 そういやそうだよな。母さんの手記もらったり、魔法おしえてもらったり(だめだったけど)なんてことあったから、その代わりに外交大使やっているように思ってた。


 報酬か~

 これって働いたことになるんだよな。外交大使なんて役職だしな。


 ――なにくれるんだろ?


「色々考えたけど、金銭的なもので満足できる?」


「金ですか? 正直いりますね。俺の交渉術は金銭的な取引もできますから」


「そうだね。というか、むしろそれが本来の使い方じゃないのかい?」


「さぁ? おれ商人じゃないんで……」


「まあ、そうだけど……君のスキルってみた限りだと商人に向いてそうな気がするよ」


 実はこれ俺もそう思っていたんだけど、考えないようにしていた。

 認めたら負けのような気がして。


「じゃあ、報酬は金銭にしておくか。どれくらいにしようか……そうだね、とりあえず今日までの分として200万ぐらいでいいかな?」


「……200? 万?」


 なんだ? 聞き違いか?

 今日までの分ってことはたぶんここ2ヶ月分ってことか?

 ……一ヶ月100万?


「あ、あの?」


「多すぎた?」


 コクコク頷いた。即座に!


「でもね~ あの場所に国がもしできれば助かるんだよ。その足掛かりに、君ほとんど関係しちゃったよね。それなのに、普通の報酬ってわけにもいかない」


「普通ので十分です!」


 金の持ちすぎは怖い。

 そりゃあ、アグニスさんのほうの契約で荒稼ぎする予定だったけど、予想していなかったほうからくると、怖いんだよ! なんか焦るんだよ!


「ん~ じゃあ、半分にしておくから、あと別になにかない?」


 減らして半分かよ……まあ、月に50万ならありか? 普通の大人って月にいくらもらってんだ? …いや、こっちの世界の人たちで考えないとわからないのか。でもそれって余計に分からないな……

 別って言われてもな……うーん……ハッ!


「あ、あの……できたら2年A組の人たちに合わせてもらっていいですか?」


 オドオドと尋ねてみる。魔王の目が一瞬つりあがったようにみえて、ちょっと怖い。

 このこと、ずっと忘れていた。だって村づくりで忙しかったし。

 帰還関係は、ミリアたちと合流したら手記わたせばいいかな~ っていう感じだったし!

 で、どうなんでしょう魔王さま?


「起源の魔族のことはフェルマンから?」


「はい、聞きました」


 返事をすると、魔王が少し考えこんだ。

 だけど、それほど待たずにフっと表情を緩めて、


「名前を知られた時点で察しがついただろうし……いいよ希望をかなえてあげよう。なんて大仰しく言う必要もないか」


 あ、これそうだ。俺が前に考えたパターンだ。魔王様も一族の一人なんだな。


「もしかしてとは思いましたけど、魔王様も?」


「うん。ちょっとわけありでね。前代の魔王が死んだら、次の魔王を一族から選出して引き継いでいるんだよ。僕以外にも何人か生き残りはいるけど、もうほとんど残っていない。引継ぎ時に行われる魔王選定の言葉は、自演というわけさ」


 ちょっと笑みを浮かべているけど、なんだろ? すごく嫌な笑みだな。


「あまり他人に話すのは好きじゃなくてね。この辺で勘弁してくれないかな?」


「わかりました」


「それで一族にあってどうしたかったの? たぶん帰還について聞きたいんだろ?」


「ハァ……でも、できなかったんですよね?」


「僕達がここにいる。それが答えにならない?」


「やっぱりですか」


 だよな~ もうがっかりだよ。こういう予想はあたってほしくない。思わず肩をがくっとおとしてしまった。


「そう落ち込まないでくれないか? 帰還については、僕にも考えがある」


「!? マジっすか!」


「素がでてるよ」


 ……いかんいかん。言葉では魔王様なんてよんでいるけど、心の中では魔王とか呼び捨てにしてるのバレてしまう。あぶないあぶない。


「なんだろ? ちょっとイラっとしたけど、君なにか考えた?」


「いえなにも気のせいです」


「そう? まぁいいや。それで考えのことだけど、簡単なことだよ。前にカリス爺がきてね、イルマ君が会談で君たちを勧誘するために言ったことを教えてくれた」


 一瞬何のことだ? と記憶を掘り起こしていると、ニヤニヤした魔王の顔を見て思い出した。

 あれだな。

 それぞれの国で研究させるんじゃなくて、一緒に研究を進めるって感じのやつ。


「合同研究といえばいいのかな? うん。もし、アルツを落とせたら、僕もそれに協力しようじゃないか」


「!? 本当ですか! あ、でも、アルツ攻めていいんですか? だって、魔族って直接的には戦闘しないんですよね?」


「それなんだけどね……」


 なんだ? 今度はいいづらそうにしているぞ? 迷っている様子が伺える。


「ペリスからの報告でわかったんだけど、現在アルツで託宣を聞けている人ってほとんどいないらしい」


「…え? ど、どういうことです? 託宣封印できていませんよね?」


「そうなんだけど……たぶん、君たちのせいだと思う」


 現状報告があったらしくて、色々教えてもらった。

 俺たちが関係してきたことが、色々波紋をよんで拡散したようだ。

 それを魔王は、まるで……


「病原菌って……ちょっとひどくないですか?」


「そう思うけど、他にうまい例えがちょっと浮かばなくてね。まあ、いいじゃないか」


「は、はぁ?」


 いいのか? まあ、いいんだろうな。

 しかし託宣のいうことに従っていた連中が、急に聞こえなくなったのだとしたら、どうなるんだろ? 俺達がきてからだとすると、たぶん、5,6カ月か? その間どうしていたんだ? 


「あともう一つ。ちょっと奇妙なんだけど、ラーグスのやつがどうも君からの情報を《神託》がおりたといいはっていたらしいよ」


 本当に奇妙というか、自分でいっておいて意味が分からないといった顔をしている。


 なんだよそれ? 向こうにはスキルの声が聞こえなかったのか? あれ聞こえていたのは俺だけ? いや魔王も聞こえていたから2人か。


「その《神託》から大砲や銃をつくったのだとしたら、大分あっているきがするけどね~ ただ、どうもラーグスの言葉が《託宣》の代わりになりつつあるらしい」


「……また、すごい状況になっていそうですね。ペリスさんも、そこまでわかっていたなら、大砲の情報とかアグロに伝えられなかったんですか?」


「言っちゃなんだけど、僕達以外は大砲なんて知らないからね? 知らないものをみても、それが危険かどうかわかると思う?」


 庇うような言葉を強い声でいってくる。大事にしているのかな?

 ペリスさんやニアさんも、魔王のことを大事にしているようだし、お互いに守っているような間柄なのかね。ちょっとうらやましいぞ。


「僕としては、人間達に時間を与えたくない。大砲だって作り出したんだ。それ以上のものを作りだすかもしれない。封印を優先してきたけど、そうもいっていられないよね。それに君達のおかげで託宣封印が仮初だけどできている」


「……」


 ちょっとこの場からにげたくなってきた。

 だって、俺をみている魔王様の顔が、すごく悪そうな感じなんだよ。

 あー そんな口元をニヤニヤさせないで!


「そんなに怯えなくても大丈夫だよ。僕だって今すぐ攻めろなんていわない」


「そ、そうですか」


 という魔王さんなんだけど、顔からニヤニヤが消えていない。他にもあるのか?


「ただ、その準備はしておいてね。さっきもいったけど、あまり時間をあけたくない。……そうだね一ヶ月の猶予をあげよう」


「え?」


「その間に、戦の準備をしておいてほしい。方法は君とイルマとフェルマンが中心になってやってくれていい。カリス爺は少し休ませたい」


「え? あの? ちょっと?」


 戦争の準備だとか、そんなご無体な。


「人間領土に関してはカリス爺に任せてきたけど、そろそろ世代交代してもいいかもね。これはいい機会だ。頑張ってアルツを攻め落としてほしい」


 いかん。これは有無をいわせずやらせようとしている。

 一ヶ月の準備期間とかいっているけど、街の復興をしながら、戦争の準備とかどこの無理ゲーだ。


「まって、まって! なぜそこに俺なんです? 純魔族の方々もいるじゃないですか!」


「君一人とはいってないよね? 獣人との同盟。ブランギッシュでの行動、そして今回の一番報告。君は思った以上に機転がききそうだ。そうしたところを生かして、あの2人を支えてほしい」


 あ、ニヤニヤが消えた。魔王の顔だわ。これずるいよな。


「誇っていい。魔王である僕が、君を有能だと認めよう」


 真顔でそういう魔王様に、俺はごく自然に、跪いて頭を下げてしまった……


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