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第86話 竜王の負傷

「カリスさんが危ないって本当に!?」


 騒然とする街中で、俺の声が響く。

 フェルマンさんが、大砲を調べていた俺にわざわざ知らせにきてくれたのだ。


「いま、光の精霊が頑張ってくれているが、本人の生命力が極端に足りないらしい」


 生命力が足りない。つまり老いか?

 精霊の力だって限界があるんだろう。


「ヒサオ、どうにかできないか?」


「どうにかって、俺は医者じゃないですよ」


 頼られるのは嬉しいが……まてよ?


「すいません、容態をみせてください」


「なんとかなるのか?」


「いえ、とにかくいきましょう」


「集会場の中に運び込まれている。いこう」


 解体しようとしていた大砲をそのままに、おれとフェルマンさんは走り出した。


 カリスさんの元へとくると、見覚えのないダークエルフの人がカリスさんに手をかざし、彼の体を光で包み込んでいた。これはたぶん光精霊の力なのだろう。


「どうだ?」


 術者の意識を乱さないよう、フェルマンさんが小さな声できいている。


 俺はと言えば、カリスさんの容体を見ているんだが………ひどいな。

 巨大化したときにもらった砲弾のせいだと思うが、手足が折れ鱗が剥がれ落ち、皮膚が露出している。骨はでていないが、おそらく粉々になっている部分もあるだろう。それに出血も酷そうだ……幸いなのは、元のサイズに戻れているというところか。


「……」


「ヒサオ?」


「ちょっと席をはずします」


「あ、ああ……」


 多少気落ちした声が聞こえてきたが、俺にそれを気にしている余裕はなかった。

 集会場の外へとでると、すぐに空間に手をつっこみ携帯を取り出す。

 かける先はもちろんコタだ。


 トゥルルルウー…ガチャ


「コタ! 悪いけど、頼みがある!」


『もしもしも言わせないとは、なんだい?』


「世話になった竜王様が大砲を食らいすぎて倒れた。いま精霊の力で治療しているが危ないらしい。外傷は………」


 俺がみたままを説明。それを黙ってきくコタ。何もツッコミをいれてこないところをみると、緊急事態だということを察してくれているのだろう。


『精霊の力で、どのくらいまで回復できそうなの? あと足りない血とかはどうしている? それにそっちの医療レベルはどのくらい?』


「精霊の力で回復できるのは、患者の生命力しだいだ。血に関しては分からない。だけど点滴なんかもみたことないし、たぶん血止めしかできないと思う。医療レベルでいえば中世のあたりじゃないかな?」


『……で、そのカリスって人はどのくらいの歳?』


「結構いってると思う。たぶんバァちゃんぐらいの歳じゃないかな?」


『それ厳しいね……造血剤みたいのないの?』


「造血? ああ、鉄分とかいうやつか? こっちでそういうのは聞いたことがないな」


『そんな状況なのか……そういえば、その竜王さまって、人間と同じ血なの?』


「どうだろ? 少なくとも血の色は赤かかったぜ」


『……それも不明か。うーん』


「なにかないか?」


『ごめん。こっちの医療知識を調べてもだめだと思う。そっちで血液とか操作できるようなスキルや魔法使える人いないの? 少なくとも出血が危険そうなら、何かで補わないと駄目だ』


「うわ~そういわれてもな~」


 血液操作? っていわれても、魔法でそんなことできたっけ? ミリアはいないし、っていうかあいつの回復魔法だって同じだろうし…


 ……操作?

 ……どこだったかで……って、あぁ!


 ……いや? どうなんだ? あれってそういうスキルなのか?

 ……ええい、だめもとだ!


「コタ悪い。きるぞ」


『何かあった? わかったよ。あとで教えてね』


「ああ。とりあえず頼んでみる」


 ガチャと電話をきり、フェルマンさんの元へとむかうと、


「どのくらいかかるかわかりませんが、少し街からいなくなります」


「ん? この状況でか?」


「すいません。思い出したことがありまして。ダメ元ですが、ちょっと魔王様のところにいってきます」


「ま、魔王様!? なぜだ?」


「それもあとで。あとのことお願いします」


 聞かれるとは思ったが時間がない。とにかく急がないと。

 無事だった転移魔法陣にのり起動。行先はもちろん魔王のもと。




 エーラムにつくなり、城へと向かう。


「ごめん! 急ぎなんだ通してくれ!」


 城前で門を守っているゴブリン兵2人に敬礼された。あれ? 止められるの覚悟していたんだけど?


「いいの?」


「ヒサオ様ですね? はい。もちろんです」


「????? ま、まあいいか。通りますね」


 何がなんだか知らないけど、都合がいいや。行くか。

 謁見の門前までくると、謁見待ちしている純魔族と思われる人が数人。うわ~ これまたないとだめなのかな? 急ぐんだけど……

 扉を守っているのも純魔族さんっぽいな。ええい!


「すいません、急ぎの用件なんですけど、取り次いでもらえないでしょうか?」


「人間がどうして……ああ、もしかして、ヒナガ=ヒサオ様ですか?」


「え? あ、はい? そうですけど――様?」


「あなたでしたら並ぶ必要はありませんよ。今終わっている謁見が終わり次第、お会いできるでしょう」


「ほ、本当に! お願いします!」


 なにがなにやら。というか様ってなに? いつから俺えらくなったんだ?

 外交大使らしいから役職って感じ?

 ――って今はそんなこと気にしていられないし、ああ、早くおわらないかな~

 扉前でうろうろしていると、扉が開き、中からでてきた人とすれ違う。やっぱり純魔族の人か。この人たちってみんな肌が青いからすぐわかる。


「いいです?」


「どうぞ。おまちですよ」


 知らせにいった門兵がもどってきて教えてくれた。さっそくと中にはいっていくと、あれ?


「魔王……様?」


 着用している服のガラは一緒なのだが、背丈も顔も……いや、これ成長してる?


「そうだよ。前の姿は、初めて会う人よう。子供相手だとだいたい油断してくれるからね」


「……って、それどころじゃない!」


「どうしたんだい?」


「アグロの街が人間たちに襲われました。人間達は追い払えましたけど、カリスさんが重症をおって、かなり危ないんです!」


「なっ!? それを先にいいなよ! 直属の純魔族をまわすよ。ニア!」


 名を呼ぶと、魔王の影から黒ずくめのニアさんがでてくる。相変わらずの美女だ。


「聞いていたね? 治癒の一族を至急むかわせてくれ」


「仰せのままに」


 それだけの会話で彼女は天井へとジャンプそのまま闇の中へときえた。あれは、くノ一とかいうレベルじゃないぞ……


「それで、もしかしてだけど、危惧していたことが原因なのかい?」


「はい。大砲と銃を見かけました。俺達が駆けつけたときには、もうカリスさんがやられていて、ああ、もう、とにかく早くきてくれませんか?」


「え? もしかして僕? いや、それに大砲? こんな短期間で?」


「その話は後で。魔王様って肉体操作っていうスキルありますよね? それで治療ってできませんか?」


「それで来たのか。残念だけど、僕のこれは自分にだけなんだよ」


 あぁ――!、やっぱりか!

 ちくしょ! ちょっとは期待していたのに!


「そうでしたか、申し訳りません。では、至急もどります」


「まてまて、君がもどってどうするきだい?」


「何も。でも何かできるかもしれない。それに大砲を一台奪取してあるので調べたい」


 本当はすぐ戻りたいのに、くそ!


「……君ずいぶん変わったね? 前にきたときは、そこまで必死じゃなかったと思うんだけど?」


「……俺のせいですから」


 胸を握りしめる。

 そうでもしないと、この喉からでてきそうなナニかに耐えれそうになかったから。


「確かに君の責任でも(・・)あるね。でも君だけ(・・)の責任ではないし、悪意をもってつかっているのは、君では(・・)ない」


「……」


 魔王の言葉を黙ってきいた。

 今にも扉からでていきたいが、そんな俺の背中を魔王の言葉が止めている。


「君が、人間たちの罪まで背負うのは僕が絶対に許さないよ」


 そういう魔王からは、この距離からでもわかるほどの怒気が発せられている。


「分かりました…」


「……まあ、落ち着いてくれ。カリス爺のことは大丈夫だ。腕利きの術者をむかわせたからね」


「ですが……」


 あ、そうか。魔王さんしらないのか。


「あの、実はですね……」


 精霊の話をしていなかったことを思い出して話したら、


「知っているよ」


「え?」


「ここ最近のブランギッシュの動きについては調べてある。凄いね君」


「ええ?」


 いつのまに? というか、どうやって? それにさして驚いてないようにみえるんだけど?


「なのでカリス爺は大丈夫だ。光の精霊でも治せなくても、彼等なら大丈夫だ」


「……そんなに凄い人たちなんですか?」


「うん。ただ、あまり力をつかうと今度は自分が倒れてしまうから、必用な処置をしたらすぐ戻らせるよ」


 これで一安心って感じかな? どこまでしてもらえるのかわからないけど、やれることはやったか?

 ふぅー……なんか肩からどっと力が抜けたな。


「落ち着いたようだね。さて、じゃあ、詳しい話をきこうか。それに僕の方からも君に話がある」


「はい。わかりました」


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