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第69話 起源の一族

 まず朝。

 かなり早く起きる。なぜなら、朝食前に軽く狩りをするからだ。


「イルマ、頼む」


「いいぜ。訓練の変わりになるしな」


 どうやらイルマにとってこれは鍛錬の代わりらしい。まぁ、イルマのレベルもあがるだろうし間違ってはいないか。

 それに、


「この辺のモンスターは人間領土にはでねぇの多いからな。これはこれで経験になっていいぞ」


「そういうものなのか。ちなみに、どっちのほうが強そう?」


「そういうのはねぇよ。どっちも環境が違うってだけで、強さ的な問題はまた別よ」


「ふーん……」


 こっちのほうが経験効率いいとかそういうわけではないのか。ちょっと残念だ。


「たとえば、昨日みたマッドナイトな。ああいう騎士タイプのアンデットってのは、こっちにしかでねぇ。なんでかわかるか?」


「いや?」


「ありゃぁ、元は人間の慣れのはてだ。託宣が聞ける土地だと、ほぼ無意味な戦死ってのはありえねぇ」


「……」


「どうした? わからねぇか?」


「あ、いや。わかるから続けてくれ」


 俺には、託宣を聞いて死ぬこと事態が無意味にしか思えないんだが、こいつはそう考えていないのか。


「ああ? まあいい続けるぞ」


 気にさせてしまったかな? とりあえず話の続きを聞こうと、手をむけ(うなが)した。


「こっちだと託宣がきけねぇ。なんで遠征しにきたのか、わけがわからねぇまま死ぬ奴らが多いのよ。未練とか恨みとか、そういう腐った感情がたまりにたまって死んでいくわけだ。そうなると、死んだ後も腐って出てくるって流れだ」


「……すくわれない話だな」


「まぁな。俺ら獣人だと、ようやく死ねるっていう奴もいるくらいだしよ」


「さっぱりしてるな」


「あぁ。それだけ生きるのがつらいってことだ。死んだほうが楽だわ」


 なんて言って笑っているが、こいつも心底笑っているわけじゃないだろう。口元は笑みを浮かべているが、目がそう言ってないように見える。


「お、モア・ベアだ。こっちにもいたのか」


「ベアちゃん! なつかしいな」


「……ちゃん?」


「気にすんな」


 もう、懐かしいって思うようになっちゃたのか。一ヶ月ぐらいしかたってないのに。

 もちろん、この後、倒して宿屋にもっていった。今晩の晩飯はベアちゃんの焼肉だな。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 朝食をたべたあとは、勉強のお時間。


「色々考えたが、まずは、ヒサオが気になることを質問して、それに答える形にしようと思う」


「はい。じゃあ、それでお願いします」


 机にすわり、羽ペンをつかってメモの準備。

 フェルマンさんがそういってくれたので、俺は一番気にしていることを口にしてみた。


「託宣というのは、どういったものなんですか?」


 ズバリ聞いてみた。


「どういった? とは?」


「えーと、ここに来るまで色々聞いて知りましたけど、結局、託宣がどういった現象なのかわからないんで……」


「すまないが、もう少し詳しくいってくれないか?」


 だよな。俺も聞き方が曖昧すぎるとは思った。


「例えばですね、いつから託宣が聞こえているとか、あるいは、託宣を告げている存在はなんなのか? とか、あるいは魔族が長く住むと封印できる理由はなんなのかとか……そんなところです」


 言えばいうほど、伝わっているかな~? と思ってしまった。


「なるほど。根本的な部分か」


「そ、そうです。最初からそう言えばよかった」


「そうなると、俺では答えられないな」


「だめですか……って? 俺では?」


「ああ。俺はわからないが、知っている可能性がある人々のことは教えられる」


「いるんだ! というか、そういった諸々のことって判明してるんだ!」


 聞いておいてなんだけど、びっくりした。


「分からない。だが、もし知っているとしたら、この人達だけだろう」


「この人たち? って?」


 拳をぎゅっと握るフェルマンさんの銀の瞳が輝きだした。な、なにかな?


「ニネンエークミの一族。その英知をもって初代から3代魔王までに服従を誓い、魔族を繁栄に導いた起源の魔族と呼ばれている人たち!」


「……はい?」


 え? ちょっと?


「なんだ、聞き取れなかったのか?」


「耳がおかしいのか、ちょっと……すいません。もう一度お願いできますか?」


「ニネンエークミの一族。その英知を「ストップ!」……なんだ?」


 うん。これは要確認事項だと思います。


「3度も聞くのは気がひけるんで、俺の方から言いますね」


「ああ? なんだいったい?」


「2年A組の一族? って言いました?」


 まさかと思うから聞いてみたら、首をひねられた。なんだ聞き違いか。


「訛っている気がするが、その名前であっている」


 なま……いや、そこはいいとして。


「一族の名前は合っていると――はい。わかりました、で、次にその人たちと合うことは?」


「どうした? 何かあるのか?」


「いえ、どうしても確認しないといけない事案が発生したようなので会いたいな~と」


「それは無理だな。彼らは所在が不明で、新たな魔王様が即位するときのみ、代表者の一人が姿を現すのだ!」


 なんだろ? フェルマンさんが子供のように目を輝かせているから、俺もちょっとドキドキしてきた。


「即位のときのみ? やってきて何するんです?」


「こう言うのさ『我らは真なる魔王にのみ従う。それ以外の魔王に力を貸すきはない』っと言って去る。正直最初みたときは身震いしたよ。どうだ凄いだろ?」


「……はぁ?」


 何が凄いんだ? さっぱり分からない。


「その瞬間は、儀式に参加した人たち全てが失笑してしまう。そして、そのセリフがいつのまにか、引継ぎ終了の合図のようになった」


 それでいいのか魔族。笑ってすますなよ。


「いいんですか? それ。なにか間違っているような気がするんですけど」


「いいんだ。そもそもニネンエークミの一族は、初代から3代にまでわたって魔王様を支えた人たちだ。その労に報い、彼らには魔王選別の特権が与えられている」


 魔王選別? ってことは、その2年A組の一族が魔王を決めている? え? 自分たちで選んだ魔王を自分たちで否定? なにそれ?

 ……ああ、違うのか。最終選定の権利みたいなものかな? ……って、あ、もしかして。


「偽魔王って、そういうことなんです?」


「気付いたか。そうだ。4代魔王から現魔王にいたるまで、すべてが否定されている。そしてその間の魔王様たちを、人間達が偽魔王と称しているという話だ」


 うわ~ 全てか。

 そいつら頑固だな。けっこう患っているな。根深いかもしれない。

 それに、これ普通に魔王だよな。偽なんて称しているだけで、力とかは普通に強いんじゃないのか? 

 なんだよラーグスのやつ、そんなのと戦わせようとしていたのか?


「どのくらい代替わりしているんですか?」


「現魔王様が15代のはずだから、11代分ほどだな」


 俺は吹きそうになった。そんなのもう嫌がらせじゃないか。


「このニネンエークミの一族が、託宣に関する諸々のことを知っているんじゃないか? という話は前に聞いたことがある」


「それを確かめないんです?」


「しないな。そもそも会えるのが即位の儀式の時だけだし、来たかと思えば、すぐいなくなる。聞ける時間がない」


 ガクっと俺の頭が机にぶつかった。なんでいないのよ。おかしいだろ。


「い、いや、普通の魔族が聞けないというのは分かりますが、魔王様がその場にいるんでしょ? なぜ、止めてでも聞こうとしないんです?」


 これはどう考えても異常だ。

 11代も代替わりしているのに、誰も気づかなかったのか?

 その間、知っている可能性がいる人々から聞き出そうとしなかったとか、おかしいだろ。


「これは俺の推測でしかないが、もし本当に知っているのであれば、ニネンエークミの一族の方から言ってくると思っていたのではないか?」


 顔を傾けて自信なさげに言う。これはフェルマンさんに聞くより、当事者達に尋ねないと駄目だな。どう考えても2年A組だと思うが……

 英知で3代までの魔王達を支えたってことは、異世界の知識をこの世界にもちこんだ?

 会えるのが即位の時だけということは、接触できるのはその時だけか。

 じゃぁ、とりあえずこれは保留だな。

 次だ次。


 と、こんな感じで俺から質問がいくつ出していくと、だんだんとフェルマンさんが顔を歪め始めた。徐々に、聞いても分からない事が多くなってきたので、その日はおわった。

 しかし2年A組か……その起源の魔族ってさ……


 いや、保留だ保留。

 結論でそうだけど、出さないでおこう。なにかしらの手段をつかって確認しないと早合点しそうだ。

ヒサオ:……魔族って変?

フェルマン:なんだと!

イルマ:ようやくわかったか。


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