第272話 別れし人々
2017/10/21追加
ジグルド
残る事を決意した彼は、人生の全てを一つの事に費やした。
己がいた元の世界で起きた混沌とした戦争。
その理由の一つに関わっていたヒガンを守る為に行動を開始する。
彼が起こした行動というのは、他種族との交流を深めるという事。
戦争は、いつどのような理由で起きるのかは分からない。
また、自分やコリンがいつまでもヒガンを守れるわけではない。
そう考えたジグルドは、ヒガンに仲間を作る事を選んだ。
ヒサオが残した遺産とも言える現在の状況を考え、ユニキスの遺言に反するように、ヒガンを自分の知人達へと引き会わせ始める。
また、ドワーフ・オリジンとしての力についても一部の者達に報せ、何があった場合力を貸してほしいと頭を下げてまわった。
その中には、イルマやフェルマンも当然いて、この2人を中心に多くの支持を得られる事に成功を果たした。
道は1人で築けるものではない。
なら、仲間と一緒に作ればいい。
そんな想いを込め、彼は多くの種族と関係する道を選ぶ事にした。
テラー=ウィスパー
ロイドブランを人間達に認めさせる事に、彼女は一役かった。
まず、彼女の地位についてだがロイドブランの外交大使という事になる。
ウース、イガリア、オズルと日々忙しく訪れており、その行為によってロイドブランが認められたと言う事もあるが、そればかりではなかった。
それは彼女自身の本来の魅力。
抱えていたトラウマが消えたテラーは、同じ獣人ばかりではなく人間達の心まで動かした。
特にアルツの兵達の中には、彼女に好意を覚える者達が増えた。
その理由は依り代状態であった時に魂に刻まれた銀狼種としての姿からなのだろう。もっとも当人達にその時の記憶はないのだが。
トラウマが消えた事により、彼女にも余裕が生まれたのか、最近になってエイブンの気持ちに気付きだす。
だが、本当に自分が思う通りなのか?
そして、自分はどう思っているのか?
そういった悩みを抱えてしまい、エイブンとの距離が離れた。
だが、それは幼馴染として見ていた事から、1人の男として見る事に変わった距離とも言える。
テラーとエイブン。この2人がどうなっていくのか?
それを見守る仲間達は、時折苛つくようだ。
何時かは、どこかの獣王がエイブンの背を押すのかもしれないが、それがいつになるかは不明である。
ジェイド=ロックウェル
戦いの後、彼は勇者召喚の術を永久に消し去ることを決定した。
これに関する書物や術式を消し去ることを選び、またヒサオ達のように偶発的にやってくる可能性がある異世界人の為に魔族との同盟を強固なものにしていく。
理由は帰還魔法の管理をエルフで行う事になった為。
結果的にドルナードが望んだ魔法と科学の融合という新たな世界の変化に協力する事にもなる。
人間、魔族、獣人。
これらを繋ぎ続けた王。
そして同時に、大陸一の農地改革を行った王としても後世に名を残す。
それは果たして彼が望む事だったのかどうかは、彼のみぞ知ると言ったところだろう。
フェルマン=ウル=カスラ
カリスの補佐役として抜擢されたダークエルフ族の長。
今では、次代の魔王候補という評価が定着している。
これは前魔王であるサルガタナスや現魔王カリスの行動によるものだろう。
王としての経験を少しでも積ませ17代目魔王とする事が彼ら老人達の望みであるのだが、彼はその事を知らないまま忙しい毎日をおくっている。
また、その計画を知っているニア=ファスタとの関係も良好のようで、隠れて付き合い出したようだ。
尤も隠しきれていないようで、どういう経緯からなのか、遠く離れた帝国にいるドルナードの耳にも届いているらしい。
色々な注目を浴びているようだが、知らぬは本人ばかりといった状況である。
ゼグト=バーリアス
自分の主を突き刺した。という罪に束縛された彼であったが、リームが付きまとう事によって救われる形となった。
そうした経緯からなのか、ダークエルフとエルフの繋ぎ役となる。
自分に課せられた贖罪という意味で、この使命を果たしていくわけだが、彼が自分を本当の意味で許す日はこないだろう。
かといってそこに捕らわれたまま前に進む事を止めたわけではない。
彼にとって、託宣が残した傷によって歩みを止めてしまうのは、フェルマンという主と、今なお信頼を寄せてくれている仲間達への裏切りなのだから。
エイヴン=イーリス
テラーと共に新王国ロイドブランの外交大使となるが、それとは別に、軍事面の事も任されてしまう。
部下達からの信望が厚いようだが、これにはテラーとの関係もあったせいだろう。
訓練では厳しい鬼教官であるが、テラーの事に関すると全く逆になるという事が知れ渡っているせいで、親しみやすいのかもしれない。
そのテラーに対し異性からのアプローチが急増した事を知ると、彼は鬼のようになるのだが、そうした行為の繰り返しによってテラーに自分の気持ちが知られてしまう。
この事にエイブンは気付いておらず、急に距離を置きだしたテラーに対し嘆くことがあるのだが、それは今までとは違った関係になる為の一歩だという事に早く気付くべきだろう。
でないと、獣王様が強引に動きだすかもしれない。
コリン
彼女は何も変わらない。
ジグルドを愛し、ヒガンを愛し、どこまでも家族を愛している。
それは、かつて失った仲間達を取り戻そうとしているかのよう。
まったく揺らぐことが無い彼女こそが、最強と言えるのではないだろうか?
ジグルドもいつかは……
カリス=アザート
16代魔王となった年老いた元竜王。
彼は即位した時の宣言どおり、残った全ての寿命を魔族の為に費やした。
しかし、これによる問題が皆無だったわけではない。
竜人達にとってみれば、自分達の王が魔王となったのは喜ばしい事であるが、反面、カリスは自分達“だけ”の王ではなくなったのだ。
竜王の後継者がいない状態でカリスが魔王となってしまったわけだから、手放しで喜ぶことが出来なかったのだろう。
だが、そうした気持ちを持つ事によって自立心が芽生え始めたのか、中には変化を持ち始めた者達がいる。
カリスが望む次代の竜王は、皮肉にも彼が魔王となったことで出現する可能性を得たという事になるだろう。
イルマ=イングゥエイ
獣人達が初めて持つことになったロイドブランという国。
その初代国王となった彼であったが、それまでの彼とまったく変わらなかった。
相変わらず不得意な事は他人任せにしているようで、そうした性格を知っている住民たちは『イルマなのだから仕方がない』といった感覚で動いた。
これはヒサオが言い残した事もあったからだろう。
自分達の国である以上、自分達で動かなければならない。
面倒を見てもらうのではなく面倒をみてやるといった考えではないだろうか。
こうしたロイドブランの空気は、後にやってきた住民達にも伝わり、あっという間に各地に村々が出来始めていく。
人間領土だけではなく魔族領土にまでロイドブランという国は広がっていくのだが、それでもイルマは変わる事がなく、王ではなく、1人の獣人として皆と接しているようだ。
エルマ=トーレス
オルトナスの弟子として。
あるいは世話係として残っている彼は、大きく成長を果たす。
彼が考案した魔法の多くは人々の生活面に直結したもの。
洗濯やら調理関係。
さらには、農業や漁業関係にまで発展し、魔法と科学の融合文明に大きく関わっていった。
空間魔法を得意とするオルトナスの弟子でありながら、何故そのような魔法を産み出したのか?
その理由は、師の世話を楽にしたいという一念から。
無論、そのような裏話は公表されず、エルマ=トーレスは人民に寄り添った賢者と評判をうけるが、彼の性格を本当の意味で知るオルトナスは複雑な心境のようだ。
オルトナス=エウロパ
ヒサオやミリアと別れた以降、彼は、まず帰還魔法の管理を行った。
帰還魔法は裏を返せば勇者召喚にもなりえる危険性をもつ。
その為、彼は帰還魔法を誰にも教えず書物という形として残した。
これはエルフ王家で管理する事を望んだからだ。
もし、万が一にでも異世界人がやってくるような事があれば、このエーラムにおいて帰還が行われる事になっている。
その後の彼の活動を一言でいえば、世界樹や精霊樹の保護というしかない。
目新しい活動とは言えないが、もし世界樹に何らかの異変があった場合を考えると、彼の活動こそが世界の命綱と言えるのではないだろうか?
クロス=アースベルト
生真面目で要領の悪い彼であるが、その歩みは確実であった。
一歩ずつ先へと進み続ける彼の行いは、エルフ達のみならず他種族にも信頼されるようになり、魔都エーラムにおいて最も手本にするべき騎士と評される事になる。
デュランがその身を引いた後、エルフ達の軍事面は彼に一任される事となるが、その要領の悪さもあって多くの部下達が彼の為に動いたという。
ヒュース=カイベル
リームの弟であった彼は、神聖魔法を極める道に走った。
戦争において多数の怪我人を治癒して回った事で、自分の役目を悟ったのだろう。
目標が定まった事と、姉であるリームがゼグトから様々な事を学び始めた事に刺激され、彼の成長は早まった。
若くして神聖魔法を極めることに成功した彼は、その後、ドルナードが作り上げた、ある出来事に関わる事になる。
ちなみに、とあるエルフが付いて回っているようだが、まだ関係は深くない。何か怖いものを感じるらしい。
リーム=カイベル
精霊樹の巫女となった彼女は、世界樹とも契約を果たす。
この時、世界樹アルフが自らの枝を折り、杖と成したものを与えようとしたが、彼女はそれを拒絶。ジグルドが作ってくれた杖を気に入っているようで、手放したくないというのが理由だ。
しかし、それでは契約は成り立たないようで、困ったアルフは、リームがもつ杖と自分の枝を融合させてしまう。
この時になり、リームは自分の杖に名を付けた。
それは、神杖ミリアと言う名前。
ヒサオを忘れたくない人々がいるように、彼女にとってミリアこそが忘れたくない相手だったのだろう。
アスドール=リダ=オルトイア
戦争終結後、彼はエルフ達全ての王となる。
世界樹が出現したエーラムで多くのエルフ達をまとめ上げることに努力するが、全てのエルフ達が生活できる場所ではない。
できるだけ近くで多くの同胞たちが生活できる環境づくりを第一と考えたようで、この事で何度かカリスと意見衝突した事もあった。
この悩みを抱えていたのは何もアスドールだけではない。
カリスの補佐役であったフェルマンもその一人。
アスドールとフェルマンは、協力しあいエーラムの街を拡大。また自然も多数増える事になった。
エルフとダークエルフ達が住まう居住区は、エーラムの景観を変える事になってしまったが、観光名所の一つとなったようで結果的には良かったようだ。
デュラン=バースト
戦争終結後一つの問題が浮上した。
それは、モンスター達が魔族領土に大量に住まう結果になったという事。
この為、彼が率いる騎士団も忙しい日々を送る事になったが、戦争とモンスター退治という経験を積み重ねることで、さらに力量を増したようである。
その間に実績を積み上げてきたクロスに地位を譲った後は、一旦は隠居。
しかし、落ち着いた生活というのは性格に合わなかったらしく、新兵の訓練を率先して行ってしまう。
そうした経緯からエルフ騎士団の力量は各地へと知り渡ることになり、戦争抑止力の一つとして数えられるようにまでなった。
ヒガン
ドワーフ・オリジンとしての生を得た彼女であるが、その事を知らないまま、彼女は成長していき、ジグルドが知る能力まで開化してしまう。
この事を危惧していたジグルドであったが、その不安は的中しなかった。
彼自身が行った結果から生み出された獣人達との信頼。
そしてドワーフ族との約定を重んじるダークエルフ達。
さらに言えば、世界樹の巫女となったリームを通じ、エルフ達とも仲を深めた。
ヒガンはヒガン。
ジグルドが言った言葉に間違いはなかった。
この世界のオリジンであるヒガンと、ジグルドが知るオリジンは別の存在だ。
彼女を巡って争う事もなく、成長し、恋をし、相手をみつけ、子孫を残していく事だろう。
ドワーフ・オリジンというのは、精霊界から訪れた原初の存在。
その身は土と火の力を強くもつ精霊に近しいもの。
その彼女から生まれる子供というのは、ドワーフとなりやすい。
滅びかけたドワーフ族が、これからどうなっていくのかは、彼女の行動次第になる。
今のところは、イルマの息子と仲が良い様だが、果たしてどうなる事やら……
アグニス&ユリナ
『異世界亭』を作り上げたこの夫婦は、さらに支店を広げていった。
メグミがもたらした異世界料理百科を基本とし、そこから発想を広げ、ヒサオが言うユリナの料理と言うものを広めていく事になる。
その支店は、魔族領土だけではなく、アルツはもちろんオズルやウースにまで広がっていき、この世界におけるチェーン店を築くほどにまでなった。
『美味い物が食いたいなら、まず異世界亭に行け』
これは大陸規模で共通した言葉となり、この夫婦が残した偉業は、後世の料理人達にとって伝説とさえなった。
この夫婦の教えに、こんなものがある。
それは『飯屋で喧嘩が起きるのは料理が駄目だから』というものであり、これが食堂経営の一つの基準とさえなってしまう。
そうした教えの中から『喧嘩をするなら美味いものを食え』という言葉まで作られ、それがさらに曲がり『戦争をするくるいなら美味いものを食え』となってしまうのだが、今のアグニス夫妻は知らないままに、今日も元気に客達に美味い料理を作っている。
ムラタ=カズヤ(サルガタナス)
魔王を退位した後の彼は、徐々に体を衰えさせていった。
元々の寿命からくるものであり、こればかりはどうにもならない。
ヒサオ達が去った4年後には限界がきて、この世を去ることになったが、その前に彼は一つの心残りを見ることができた。
それは、ニア=ファスタの花嫁衣裳。
フェルマンとの間で咲いた芽は結ぶことができ、サルガタナスの目の前で結婚式が挙げられる事になる。
大勢の魔族と獣人。
そして人間達にも見守られ、彼は安らかな笑顔で、自分の体と魂を休めることになった。
異世界から勇者として召喚され、大勢の亜人達と戦い、魔族として、そして魔王として奮闘してきた彼の過酷な生涯はこうして終わった。
彼は言う。
自分は恵まれたと。
彼と一緒に召喚されたクラスメイト達の多くと比べると、どれほど恵まれた人生であった事だろう。
大勢のクラスメイト達が託した希望。
それを抱き帰還することが出来た2人のクラスメイト。
その時を自分の目で見ることができた。
これを恵まれたと言わず何と言うのだろうか?
そう、彼は言い残し、長く辛かった旅路を終える事になった。
ペリス=ファスタ
魔王が退位した後、彼女は新魔王カリスの護衛ではなく、ムラタ=カズヤの側についていた。
本来の役目である魔王の護衛という任務を放棄した形とも言えるのだが、これに異を唱えたのは、たった一人。
それは前魔王であるムラタ=カズヤだけなのだが、その声は当然のごとく無視され、彼女は自分の主が息を引き取るまでその側から離れなかった。
そして、彼がいなくなった後は、起源の一族の墓地を守る墓守になった。
彼女にとって主君はたった一人のみ。
それは揺らぐことのない彼女がもつたった一つの信念だったのだから。
ニア=ファスタ(ペリスの妹)
姉とは違い、彼女は新魔王カリスの護衛についた。
それは姉であるペリスから自分の分まで任務を全うするよう言われたからでもあるが、それだけが理由ではない。
次第にフェルマンとの間で気持ちを通じ合わせるようになり、前魔王の前で結婚式を披露する事になるのだが、その後も、己の任務を放棄することなく、魔王カリスとその後継者候補を守ることに力を注いでいく事になる。
ガーグス=ドナー
多くの弟子をもつ彼であるが、向上心をもたないわけではない。
全てとはいかないだろうが、少しでも上を目指したいと思いジグルドの側を離れないようだ。
鍛冶場を仕切りつつ、ジグルドの技術を盗むのは至難だろうが、それでも身に着けたいという欲求は止まることが無く続いたという。
ルイン=リムダート
元の世界へと戻った彼は、母へとミリアの事を知らせ世界樹にも報告を行った。
母親が流した涙が、娘が巣立った事を喜んでの事なのか?
それとも、2度と戻らない場所へと行った事を嘆いたのか?
それは分からない。
あるいは、その両方が入り混じったものだったという事もあるだろう。
その後ルインは村を出る事もなく、ミリアの代わりとなった仮巫女に自分が知っている事を教え始めた。
それは、ミリアから聞かされた、名もなき世界での出来事も含んでの事。
一つの物語が、ルインを通じ、彼がいる世界にも伝わることとなる。
余談ではあるが、その過程において、ルインと仮巫女との間に恋が芽生えた事も記しておこう。
カテナ
ルイン同様、元の世界に戻った彼女は、最愛の相手であるジンドと結婚を果たす。
また、ジグルドからもらった幾つかの鉱石を使い、腕の良い職人と共に様々な細工を施した武具を作り出した。
追い込まれていたドワーフ&獣人達は、そうした武具を手にし劣勢状況を覆していくのだが、それだけで終わるわけではない。
彼女がいる世界での戦争は単純なものではない。
多くの種族が入り乱れた戦う歴史を繰り返してきた事で、すでに収まりがつかない状態にある。
それでも、カテナは強く生きていく。
なぜなら、千年以上もの間続いた戦いが終わりを迎えた世界があるという事を、知っているからだ。
明けぬ夜はない。
そう胸に抱き、彼女は今日も淡々と生き続けていく事だろう。
ドルナード=ファン=エンペス
帝国に帰ると、まずは国の再建へと手をつけた。
その再建に膨大な時間をかけたが、それは一つの計画を実行に移す為。
人々が安穏とした生活に慣れ始めた時、彼は行動を開始した。
魔法と科学が融合した文明の姿。
帝国再建中の裏で様々な道具や施設を作り出し、それを一気に他国に見せつけた。
見たら欲しくなる。
真似をしたくなる。
そうした欲求に刺激を与える事に成功すると、彼はもう一つ行動を起こした。
それは、国という敷居を排除した国際学院の設立。
魔法理論と科学理論の教育を学ばせる場として作られたこの学院において、ヒュース=カイベルが教鞭をとると、多くの優秀な生徒が輩出されていき、多くの者が歴史に名を残す事になった。
ブロード=マキウス
ドルナードにとって唯一心を許す友である彼は、帝国が再建され文明開化が始まると、将軍職を辞めてしまった。
なぜ? という疑問が多くあがったが、何もドルナードの側を離れたわけではない。
彼には新しい任務が託されたのだ。
それは、冒険者ギルドの設立。
ヒサオの記憶にあるラノベが元になっているのは言うまでもないが、ギルドを必要とした理由は、そこに憧れたからではない。
世界は、ヒサオ達が訪れたイリーガル大陸だけではない。
まだ未発見の大陸がある事を考えたドルナードは、軍を派遣するのではなく、冒険を好む人々を集め、支援する団体を作り出し、彼等を見果てぬ大地に旅立たせようと考えたからだ。
そこに集った人々は何を夢見るのだろう?
彼等はどのような想いを胸に抱き、冒険へと旅たつのだろう?
ギルドを作り育てていくブロードは、ただ羨むばかりであったという。
いずれは我慢しきれず、自分も飛び出してしまうかもしれない。
トーマ=ウィス
ブロードが軍から離れると、彼が将軍になってしまう。
まったくもって不本意だと言いながらも、自分の上司であったリュッケを真似するように訓練の最中は生真面目に動いた。
ただし、プライベートの時間は違う。
軍事訓練が終わると、部下をつれ酒場に繰り出し、女達を口説いて回った。
たまに夜を共にした女が、『隊長~』と寝言を言う彼を見る事があるらしいが、将軍である彼の隊長とは誰の事なのか?
それは関係した女達の誰もが知らないらしい。
ラーグス=アグバ
ドルナードの意思あるスキルとしての残った彼は、人知れず世界の発展へと貢献してしまう。
観客が舞台に立つというのは、いかがなものか? と、言う事もあったが、その声はドルナードによって無視された。
良いように使われているだけなのだが、その代償として彼が望む世界の変化を間近で見られるのだから不満を上げる権利なぞないだろう。
世界樹アルフと精霊樹エーラム
ヒサオ達が去った後、この2人は一つの種子をリームに託した。
それは、エーラムが産み落としたユミルであったものの一部。
新たに生を受けた、その種子は、アスドールとフェルマンが作り出した新たな居住区近くへと植えられる事となった。
彼と彼女は、まだ意思存在が生じない精霊樹を優しく見守るのみ。
かつてのユミルのようになるのか?
それとも、まったく違う人格を形成するのか?
どちらにせよ、楽しみでならないと、2人は言う。
近い将来、どう名前をつけるかで揉める事だろう。
さすがに、エーラムと名乗らせるのは問題であるのだから。
上岡 油井&時田 卓
和也から託された希望をもち、元の世界へと帰還を成し遂げた2人。
その帰還先は、彼等が召喚された時にいた2年A組の教室であった。
クラス全員が消失した事によって大事件が起きた現場として保存されていた為、その場に帰ってきた彼等は一躍時の人となってしまう。
色々な事を尋ねられる毎日が続いた。
警察からの取り調べすら受けた。
連日、新聞やニュースで扱われ、一体何が起きたのかと注目を浴びる。
和也が危惧したとおり、2人には多くの疑いをかけられた。
中には、心無い言葉を投げかけるものも多かった。
……が。
彼等が持っていた手紙の数々が、これを打ち消す切っ掛けを作った。
手紙に書かれていたのは、子供達が、それぞれの親へと記した最後の言葉の数々。
とても信じる事ができない内容であるが、書かれている言葉の羅列や筆跡は、自分が知る子供のもの。手紙を通し、自分の子供がそこにいるかのような錯覚すら覚えたものもいるという。
多くの親が、事態を飲み込むまでは時間を要したが、次第に帰還した2人を守ろうとする人々が増えだしていく。
自分の子供達が残した希望。
そのものを守るかのように。
これで『異世界人達の成り上がり』は完結となります。
下に張ったURLは、本編完結後に書いた作者の活動報告です。
異世界人達の成り上がりに関する、後書きのようなものとなっております。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/863185/blogkey/1851000/
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!(`・ω・´)ゞ
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