表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
247/273

第246話 提案内容

 少し時間を戻そう。


 狭間の世界から、ヒサオ達が戻る前の事。

 切り離された託宣を媒体に使うという考えを知ったヒサオは『彼女』との話を再度始めた。


「あなたが行っている方法とは別に、世界を救う道があります。聞いてくれませんか?」

【現状問題なし】


「?」


 問いかけたヒサオが意味が分からず混乱し、世界樹ルインへと顔を向けてしまう。


「今の手段であっても問題がないから、聞く意味がないということだろう」


「……あぁ」


 元々『彼女』にとってみれば、魔族とモンスター達の全滅は定められた作業の一つ。

 それを問題視しているのはヒサオ達なわけで、託宣が別手段を求めているわけではない。

 なのに『もっといい方法があります!』と言われても、聞く必要がないのだろう。


(聞いてもらうには、今行っている手段の問題点を指摘しないと駄目ってことか……他に何かあるか?)


 と、考え込むと、以前から気にしていた事を思い浮かべた。

 それは……


「教えてください。あなたは人間達を直接支配していますが、その手段による歴史改変に問題はないんですか? 無いのだとすれば、なぜ、今までやらなかったのです?」

【記録の改変発生率67% 以降の歴史における問題発生率48% 現在修正可能範囲】


 どう答えてくれるのだろう? と考える暇もなく即答されてしまう。が、返された答えは理解しづらいものだった。


「……ドーナさん、説明お願いします」


 通訳スキルだけでは意味がないな~と思い知ったヒサオであった。

 そんな2人の会話に嘆息をついた後、ドーナが間にはいる。


「元々『彼女』は記録の海からの情報を元に人間達に託宣を下していた。しかし、『依り代』に1度でもなった人間達は、その後の人生で記録から外れていく可能性が高い。これが記録の改変発生率。その影響によって以降の歴史改変に問題が生じる確率が48%ある。という事だろう」


「……は? ちょっと待ってください。それが問題じゃないんですか?」


「修正可能範囲であるから問題なし。と、いった所なんだろうな」


「……それでいいのか? 本当に?」


 問題は発生しないほうがいい。

 修正可能といえど限界はあるようだし、その時がきたらどうするのだ?


「なんで『彼女』は問題が発生するような手段を?」


「それだけ追い詰められているのだ」


「追い詰められ……あぁ、精霊樹達の行動や、俺達がダグスを疑った事ですね」


「そう言う事だ」


「うーん。でも、それなら……」


 別の手段があるという自分の言葉に耳を貸さないのは何故? という疑問を抱く。


 その理由は修正が可能だから?

 限界が来る前に終わらせようとしている?


(でもそれぐらいなら話を聞くんじゃないのか? 頭が固いとか? あるいは意地っ張り? ……いや、感情はなかったんだな。じゃあ、違うか)


 だとしたら、耳を貸さない理由は別に……


(……あ、もしかして!?)


 一つの事が頭をよぎった。


 最初の会話時『彼女』は”ヒサオの力”による世界救世はありえないと判断している。

 それは、ヒサオ”個人”の力だけを考えての事だろう。

 つまり『彼女』は、誰か個人の力による世界救済手段しか、考えられない。と言う事ではないだろうか?


 人とは違うが故に。

 あるいは歴史すら改変できる力があるために。

 誰か個人による力”のみ”を考え、その力で救済が可能かどうかしか判断できない。

 託宣にとっての限界。

 あるいは弱点ともいえる点が、そこにあるのでは? と、ヒサオは考えた。


 単純かつ明快にいえば、


『他者と協力とするという考え方ができない』


 という事になる。


 なら、


「言っておきますが救済手段は、俺だけの力によるものじゃないですよ。貴方の力も借りたい。それに、ここにいる世界樹さんも協力してくれます」


「お、おい!」


 突然言われ、口を挟む世界樹に対して手を向け話を続ける。『彼女』は反応を示さないが、お構いなしだ。


「それだけじゃないですよ。もちろん、中に戻ったら俺達全員で協力します。問題をかかえたままの手段よりも確実で手っ取り早く済むと思いますが、それでも聞く気はありませんか?」


 いつから、確実な手段になったのか分からないし、協力するという約束までしてしまう。

 もちろん協力させられるであろう当人達の意思なぞ無視。

 世界樹が指摘したとおりドルナードと似た者同士なのかもしれない。


「いや、問題は残っているのだが……」


「それは、言っていた事ですか? でも可能性はあるんでしょ? 皆でかかれば、その問題も解決できるのでは?」


「……そうではあるが」


「なら大丈夫。問題は皆無ですね。もちろん……」


 ニコっとした笑みを『彼女』へと向け、


「あなたが聞いてくれるのが大前提ですが、いかがなものでしょう?」


 そう言うヒサオの笑みは、『お安いですよ。いまがお買い得! このチャンスを逃す手は有りませんよ、お客さん!』といった商人のそれであった。


 客にされてしまった『彼女』はといえば、


【世界樹。異分子存在。世界住人。協力関係。それらによる新たな救済手段。考慮に値する】


 しっかりとヒサオの口車にのってしまい、足元を滑らせるようにヒサオ達のほうに身体を向けたが、ソレをみたヒサオは、調子に乗りすぎたと知る。

 何しろ前は後ろと違っていて……


「すんません! こっち向かないでください! 目の毒ですから!」


「……しまらんやつだ」


 例え、その目に瞳孔がなく人形のように見えたとしても、ヒサオにとって『彼女』の姿は、この先を続けるには不都合なものだったようだ。


 2つの山が見えただけで彼の心は乱れまくったのだから。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 話は続けられる。

『彼女』はヒサオの願いどおり、再度島の方角に身体をむけてくれたようだ。


「ふぅ―…」

【救済手段の具体案を望む】


 落ち着きを取り戻したヒサオに『彼女』が何事もなかったかのように具体案を求めた。


(……さっきとまるで違う。いや、いいんだけどね)


 それが望みだったはずだが、納得しかねる部分が……と、考えながらも、


「えーと。まず確認します」


 そう切り出し、ヒサオは精霊樹やコタロウから聞いたことを確認し始めた。ただし、媒体に託宣の一部を使うという点を除いて。

 これに対し『彼女』は全て肯定の意を示し一安心する。

 


「俺が知る救済手段は、時間をもつ媒体を未来世界へと送り込む方法です。これにも問題はありますが、それについては後でドーナさんから説明してもらいます」


 と、そこでドーナを見ると頷き返される。

 確認がとれると、自分の胸に手をあて一呼吸。ゆっくりと『彼女』の背をみつめ、


「その話の前に媒体となる存在についてですが……ジェイド王の体をつかっている貴方の一部を使わせていただきたい」


 これさえ通れば……と、言い切った後に反応をまった。


【同調率低下を確認。予測不能】


「どうちょう……?」


 意味が分からず、再度ドーナをみれば、ヒサオへと近づいてくる。


「変わろう。ここまでくれば、私が話したほうが早い」


「お、お願いします」


 いちいち通訳するのも面倒と思ったのだろう。ヒサオに代わってドーナが話を続けた。


「低下した理由は感情の獲得が原因か?」

【肯定。感情の揺らぎを検知。警告の発令記録を有す】


「すでにか? いずれは自我を優先する事態を引き起こしかねないとは思っていたが、予想よりも早く起きえるか?」

【可能性を認める】


「ふむ……大事になる前に実行に移した方が良さそうだな。拒否反応がでてしまえば、君にとっても異物になるのだろ?」

【同意。問題を述べよ】


「その前に、ヒサオが言った事に対する返答はどうなのだ? 使用することに異論はないのか?」

【成功確率で判断】


「全てを聞いてから判断するということか。もっともな話だ」


 2人の間で非常にスムーズに話が進む。

 話を切り出したヒサオは、蚊帳の外におかれたような状況となりつつあった。


「では、君の許可がとれたとして話を進めるが、問題の一つは『彼』をジェイド=ロックウェルから引き剥がさなければならないと言う事だ。これは君だけで可能か?」

【不可能】


「では、私達の協力があれば?」

【可能】


「思ったとおりか。その手順についてだが、君からの支援を断ち切り、弱体化した『彼』をヒサオ達に拘束させジェイドから取り除こうと思う」

【成功確率は極めて高いと判断】


「よし。なら、次の問題だが……」


 ここで観客になりつつあったヒサオへと目を向けた。


「取り除いた『彼』をそのまま放置しておくのは危険だろうし、実体をもたない状態では帰還魔法による転移もできない。そこで、この男を使い『彼』をこちらの世界に持ってきたい」


「おれ?」


「そうだ。両方の世界で実体を保てるのは君ぐらいだからな。いわば、運搬役といった感じだ」


「……うへ。それって託宣の一部を憑りつかせるってことですよね?」


「そうなる」


「問題ないんですか? 例えば、俺まで支配されるとか……」


「……すぐにこちらに引き寄せるから、大丈夫だ」


「で、支配は?」


「問題ない。こちらに連れ込めば抑えてみせる」


「………つまり支配されることは確実なんですね……否定してほしかった」


 せめて『君次第だ!』とか『頑張ればなんとかなる!』的な発言がほしかったようだ。それが無いということは、察しろという事なのだろう。

 ガクっと肩をおとしたヒサオであったがすぐに顔をあげ、


「わかりましたよ! やればいいんでしょ! やれば!」


 逆切れを起こした。最低である。

 もっとも、一時的に身体を支配される可能性を聞かされて、冷静でいるというのもおかしな話であるが。


「当人の了承もとれた。私が考える問題はこれで全てだ。君の判断はどうだろうか?」

【思考演算結果。成功予想確率84%。きわめて高いと判断】


「まだ失敗する確率が残っているのか。原因は分かるか?」

【協力関係の崩壊】


「我々にその意思はない。君のほうに協力を放棄する選択肢があるのか?」

【現時点では皆無】


「……今はないが、その時が来なければ分からない。という事か。それでは、どのような案を出しても、100%には満たないということだな」

【肯定】


「分かった。では、これから開始しようと思うが、君に異論は?」

【実行開始時に同調を断ち切る】


「異論はなしか。すでに判断はしたのだな。よし。ヒサオやるぞ」


「もう?」


「不確定要素が増えないうちにやるべきだ。それとも不満があるか?」


「不満はないです」


「うむ。よし、ならば……」


 実行開始だ! と言おうとしたが、


「説明がよくわかりません! ジェイド王から託宣を取り除くとか、どうするの?」


「……」


 説明不足なのは否めないが、怒りを覚えた世界樹であった。


 この後『彼』に対する注意や、気絶させた後の処理に関して説明がなされ、ヒサオ達が戻されることとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ