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第227話 問題の発覚

「人間やめてる? 何それ?」


「いや、オルトナスさん達がさ……」


 カクカクシカジカと聞いたばかりの話を言うと、突然ミリアの手が、俺の脇腹やら背中を触り始めた。


「ちょ! やめ! くすぐるな!」


「すぐ終わるわよ……う―ん……」


 言ったと同時に終わったようで、俺から離れる。

 そのまま自分が眠っていた部屋へと歩いていき、扉前で立ち止まったまま指を動かした。


「なんなんだ?」


「いいから、早くきなさい」


 まだ調べたりないのか?

 いっそ、精霊樹に尋ねてみるのが早いんじゃ? ……ああ、そうする為か。

 部屋に入るなり、ベッドの脇に置かれていた世界樹の杖に向かって声をかけた。


「アルフ聞こえる? ちょっと聞きたいことがあるの。こっちにきて」


 まるで通信機か何かのように杖に向かって言うと、宙に浮き出し飴色の光を放った。アルツの時と同じだ。


『呼びましたか?』


「ええ。手短に聞くけど、ヒサオの魔力って、今どうなっているの?」


『あなたが思うとおりですよ』


 なに? 今度は魔力? 体のほうじゃなくて?


「やっぱり……じゃあ、この魔力は、もしかして……」


『はい。彼自身のものです』


「……うそでしょ。こんなはず」


『本当です。ユミルはエーラムの中で休眠状態にはいっていますから、彼女の魔力はヒサオの中に流れていません』


「……って、ああ!」


 そうだよ! そういえば、ユミルは消滅したはずじゃ! って、休眠? え? 消えたんじゃ?


「ちょっと待ってくれ。俺は消滅したって聞いたぞ?」


『それで良いです。今はまだ休眠状態ですが、このままエーラムが取り込むことになるでしょうから』


「取り込む? え?」


「ムリエルと同じよ。ヒサオは知らないでしょうけど、私達が精霊界で見たムリエルは、残留思念のようなもの。それすら消えたら完全に融合しちゃうみたい」


「それが休眠?」


「彼女達はそう呼んでいるようね……そこから復活する事はないの?」


『ユミルの大樹が存在していれば、まだ希望はあるのですが、すでに枯れています。今は、エーラムの中で眠っていますが長くはもちません。もうじき消えるでしょう』


「そう――なのね」


 アルフの言い方は淡々としたものだった。

 冷たいように思えるが、彼女もまたユミルを死なせまいと努力をしているように思える。


「話を戻すけど、これがヒサオの魔力なの? おかしくない?」


「どうおかしいのか、そこらあたりから説明してくれないか? 置いてけぼりなんだが?」


 このパターンは、とんでもなく魔力が高いというケースだと思うが、その前の話が気になる。

 すでに人間じゃないものに変質していて、そのおかげで魔力が上がっているとか言われたら、まったく嬉しくない。


「……ユミルが魔力を貸していた時と同じ。あるいはそれ以上。私の感知能力じゃ把握すらできない感じね。たぶん、本気で知ろうとしたら感覚が狂うかもしれないわ」


「そこまでなのか?」


「あまり驚いていないようだけど、これは異常よ。分かってる?」


「あ、ああ。それについては、話の流れから考えていたからさ」


「察しがいいわね……どうしてそういう事は……まったく……」


「ん?」


 急に声のトーンを低くしたな。何を言いたいんだ?


「何でも無いわよ。それより、アルフ。どうしてこうなったの?」


『原因は、正式な《接続》が行えてしまったからでしょう』


「正式?」


「なんだそりゃ?」


『メグミの時とは違い、ヒサオの場合は記録の海に自分の意思で接続しています。その瞬間から、ヒサオは私達と同列の存在になりました。これに気付いたのは、つい先日。言うべきかの判断が出来ずにいて申し訳ありません』


 アルフの言葉を聞いた瞬間、ミリアが俺を見つめてくる。狼狽している感情が伝わってきて、それがひどく悲しい。


 なんだろうな。

 俺の事で感情を取り乱してくれるのが、ちょっと嬉しい気もするけど、ミリアの感情がたまらなく痛くて、心に棘が刺さった感じだ。


「ミリア……その……」


「何も言わないで」


 突然顔をそむけた。俺やアルフに顔を見せないようにしている。

 そんなミリアをなだめようと肩に手を置こうとした時、


『勘違いしているようですが、ヒサオは人のままですよ』


 アルフの言葉に、ピタリと手が止まる。


「え?」


 顔を戻した瞬間、俺の手もパッと定位置に戻る。

 アルフの奴、俺で遊んでいるんじゃないだろうな?


『間違いありません。ヒサオは人間です』


「ほ、本当よね? 後で、実はこうだったとか無いわよね!」


『そんな事は言いません。大丈夫ですよ。人間であることには間違いがありませんから』


「いや、でも、同列云々(うんぬん)はどういうことだ? それで魔力が上がったんだろ?」


 腑に落ちない点がある以上、素直に喜べない。ミリアではないが、後になって間違っていました、では困るのだ。


『すでに当人には聞けないため、これは推測になりますが、ユミルは予測していたのだと思います』


「予測? なんの話だ?」


『ユミルにはメグミの記憶があった。もちろん《接続》スキルについても知っていました。そして、ヒサオには、そのスキルを扱える土台がそろっていた。これらの事から導き出される可能性を全て考え、あなたが眠っている間に、人のままでいられるように調整した。と、私は考えています』


「……どんだけ」


「凄いわね……」


 もし本当なら、俺はユミルによって救われた形になるんだろう。感謝してもしきれないぐらいだ。


『納得していただけましたか? でしたら、もういいでしょうか?』


「え、ええ」


「ありがとう。なんかホッとした」


『では、ユミルの事が気になりますので、これで』


 と、言い去ろうとしたとき、大事な事を思い出した!


「うゎ! ちょっと待ってくれ!」


 消えかけていた光が、ピタリと止まり再度人型に戻る。ほんとごめん!


『なんでしょう?』


「魔法陣! 勇者召喚の魔法陣! あれって、どうなんだ? こっちじゃ、アレを破壊すれば、世界の繋がりや託宣の消滅にも繋がるんじゃないかって、考えているんだけど……やったらマズイ?」


『その事ですか。確かに魔法陣の構築式を崩せば、繋がりは消えるでしょう』


「託宣は?」


『聞こえなくなります。ただし、託宣を発している存在は消えませんが』



「あぁ‥…」


 ついつい託宣といっているけど、それは名前じゃなかったよな。

 でも、託宣を発している存在をどう言えばいいのか分からないし……何か思いつくまで成り行き任せにしておくか。


 しかし、いい事を聞いたな。

 少なくとも託宣は聞こえなくなるのだから、魔法陣を破壊する価値は大いに有りだ!


 と、気を良くしたのだが……


『ただ、この世界は救われたとしても……」


 まだ何かあるのか?

 託宣を発している存在が消えないのは残念だけど、この世界と魔王様がいた元の世界が……


 ………んん?


 そういえば、考えたことが無かったけど、もしかして……


『魔王がいた世界は、止まったままになります』


 覚えたばかりの不安が的中しそうだ。

 今度は何なんだよ! 



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 俺達がいる今の世界。そして魔王様がいた元の世界。

 この2つの世界は、繋がっている。


 先にあるのは魔王様がいた元の世界。仮に未来世界。

 あとから追いかけているのは、俺達がいる世界。仮に過去世界。


 この2つの世界は近づきつつあるわけで、過去世界が未来世界に向かっているという構図になる。


 そして、過去世界において託宣が影響を及ぼしているように、未来世界においても異変が発生していたらしい。


 その異変というのが”世界の時間停止”


 勇者達が召喚された時間。

 その時点で、この世界という(おもり)をつけられた為、その先へと進むことができずにいる。そういう事らしいが、それって大丈夫なのか? と聞いてみると、


『大丈夫です。時間の流れが停止しているのだから、全てが、召喚時の状態を維持しています』


「……問題ないの?」


『はい。問題ありません』


 うん? じゃあ、良いんじゃないのか?


「繋がりが消えたら動くんだろうし、不安にさせるなよ」


 まったくヒヤヒヤしたぜ。と思ったのもつかの間だった。


『いいえ、動きませんよ』


「え?」


「ちょっと、どういうこと?」


 錘が消えても元に戻らない? どういうことだ?


『時間が停止しているのですから、動かなくて当然です。再度動かすためには、きっかけのようなものが必要となります』


「……あ、再稼働させないと駄目ってことか?」


 例えるなら人の心臓? 死んでしまったばかりの人間に電気ショックを与えて蘇生させるような?


 ぼんやりとしたイメージを浮かべていると、アルフがコクリと頷いて見せる。

 状況は把握できたが……そんな世界に元勇者達を帰還させるわけにはいかないよな。


 うーん……参ったな…

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