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第225話 自分達にできること

「逃げはない。戦う。いいね」


 魔王様の決定に誰も異論を唱えない。言われる前から全員が決めていたようだ。

 アルフの言う事が全て事実だとしたら、俺達に選べる選択肢なんて最初からなかったしな。


「その話をする前に、一つ報告がある」


「アスドール……まだ何か言うつもり?」


「報告といった。帝国の事ではない。我が国ユミルで起きた出来事だ」


 おっと、そっちか。

 そういえば、俺が通話で連絡をする前に異変があったらしいが、その事を聞いていなかった。


「我らがヒサオの言葉に従ったのは、起きている出来事を理解できたからではない。精霊樹ユミル……彼女が、リームの体を使い自身の消滅を口にし撤退を進めてきたからだ」


「え? ユミルが?」


「消滅? そこまで!?」


 俺の後に魔王様が続いて驚きの声をあげると、


「……本体である精霊樹が急速に枯れ始めた時ヒサオから連絡が入った。必死な口調であったし、ユミルからの助言もあったので撤退を行った。以上がユミルで起きた出来事だ」


 要点だけを言い終え、目と口を閉ざした。

 誰にぶつけたらいいのか分からない、苛立ちのようなものを抱え込んでいる様子だ。


「すでに、精霊樹達にも被害が出ているのか……僕達よりも先に戦う事を選んだんだね」


「そうなるんでしょうね……」


 同胞の中から被害がでているにも関わらず、俺達を逃がそうとしてくれていたのか。頭が下がるよ。


 ドルナードとの協定問題。魔王様の本音。ユミルで起きた出来事。

 こうした話をすることで、俺達の気持ちが繋がってきた。


 1人じゃない。

 皆がいる。それは精霊樹達も含めてだ。

 その精霊樹が言った事を、まずは考えなければならない。

 俺達が戦おうとしている相手は、今まで世界を裏で操ってきていた存在。

 途方もない相手だと思えるが、みんながいるなら戦える気がしてきた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 話が一旦おちつくと、今度は託宣に対する対抗手段を考え始めた。


「魔王のいう、勇者召喚の破壊は?」


「すでにそれも難しいだろうね。今までの事から考えると、魔法陣の側には託宣がいるかもしれない。アルフの話では、近づくことも容易じゃないようだし……それに、それで託宣が消滅するのか? という事も分からないままだ」


「なぜだ? そのコタロウという賢人と相談した結果、得られた結論なのだろう?」


 賢人…… コタの奴、ドルナードから賢者扱いされてる。今度教えておこう。


「彼の考えは世界の繋がりについてだよ。その結果、託宣にも影響がでるのかもしれないけど、もし仮説どおりだとしたら、なぜ託宣は行わなかったのか? という疑問が出てくる。世界を守るのが存在目的だとしたら自己犠牲だってあり得ると思うんだ。それに――」


 魔王様の視線が、アスドール王に向き、


「ユミルが行ったのも、魔力を蓄えていた結晶の破壊。多くの事を知るはずの存在が、なぜそれを優先したんだろ? って考えると、簡単に魔法陣の破壊で全てが終わるとは考えにくい」


 以前に、ドルナードに対しても言っていたことではあるが、ユミルが行った事によって真実味がでてきたな。まだ、何か俺達の知らない事があるのかもしれない。

 と、いう事はだ、


「その確認なら、リームに尋ねてみませんか? 彼女ならアルフとの交感も可能だ」


 彼女こそが、この世界で認められた巫女のはず。

 異世界の巫女であるミリア以上に、精霊樹達との接触が可能だと思えた。

 そういえば、ミリアのやついつの間にアルフとの交感ができるようになったんだろ? 呪いとかいうのが解けたのか? 


「いるにはいるが、ユミルが消滅して以来、塞ぎこんでいる。エーラムに連れてくるのにすら難儀したものだ」


「あぁ……」


 何となくわかった。

 最初に交感を果たした時、リームはユミルに対して甘えまくっていた。彼女がどういう気持ちでいたのかは知らないけど、そうした甘える事ができる存在が消滅することを、自分自身の口でいってしまったんだ。そりゃあ、精神的にきついよな。


 かといって、聞きださなければ今後の方針が決めにくいし何か方法は………世界樹の杖をつかって対話が行えたけど、あれはどうなんだろ? 聞けたのは俺だけのようだけど、それでも確認するだけならできそうだと思うんだが……


(かといって、アレも向こうからだし……また、フワフワ浮いてこの場にやってこないかな?)


 なんて思いはしたが、やってくるわけがなく、仕方がないと席から離れた。


「ヒサオ。どうしたの?」


「少し、ミリアの所に行ってきます」


「起こすつもりかい?」


「いえ、そうじゃないです」


 駄目元で、世界樹に向かって呼びかけてみようかと思い歩き出した。

 その途中でオッサンが、話かけてくる。


「待て。ミリアの杖を思いついたのならば、今はやめておけ」


「え? なんで?」


「あれは異質な代物だ。所有者が眠りについている間は、下手な事はせんほうがいい」


「そういうもの?」


「今のワシなら分かる。あれは武器ではない。武器という形をした別の何かだ。お主が持っている携帯電話と同質かもしれん。外見に惑わされてはいかん」


「……そ、そんなにヤバイものなの? いや、俺の携帯電話と同質と言われてもピンとこないけどさ」


「ワシにもよくわからん。そもそも、なぜこんな事を感じたのか、それすら曖昧じゃ」


「……それって、もしかしなくてもアルフが言ってたこと?」


「じゃろうな。エーラムのやつめ。ワシに何かしおった。勝手な事を……」


 アレな~ ちゃんと説明しておけよと思ったよ。

 そういえば、ミリアにも何かしたらしいな。なんだろう?


「でも、じゃあ、どうするんだよ? このままじゃ、何も決められないぞ?」


「それ以前に、意見は出尽くしてはおらんように見えるの。まだ話し合える事があるのではないか? 精霊樹を頼るのは、それからでも遅くは無いと思うぞ」


「あ……」


 言われてから気付く。すでに犠牲者が出ている精霊樹達を、また頼ろうとしたのか。


「ジグの旦那の言う通りだな。俺もそう思うぜ」


「魔法陣の事については、ミリアが目を覚ました後でもいいでしょう」


 イルマとテラーが、そろってオッサンに同意した。


「そうですな。猶予はまだある。焦らず、ワシ等にできることを話し合うべきじゃろう。まずは、どの程度の戦力が残っているのか確認するべきと思うが、皆、どうじゃろうか?」


「オルトナスの言う通りだ。魔王、エーラムの戦力はどうなのだ?」


「動ける純魔族は数人程度。エーラムが守れていたのは、ここにいるイルマ達のお陰だと思ってくれて構わない」


「――やはりか。エルフも同様だ。ユミルの戦力はまだいいが……こうなってくると、戦力集中はいずれ必要となっていただろうな」


 オッサンの言葉から、みんなの意識が、自分達ができることへと話が変わる。


 そうだよな。

 情報なら後でも取得できる。

 まずは、やってくる敵に対してどう構えるか? そこからなのかもしれない。

 どうやら、俺も焦って話を進めようとしていたようだ。オッサンに感謝……うん?


「どうかしたか?」


 話が進みだしたけど、オッサンの顔が渋面だ。普段からシワをよせて難しい顔をしていることが多いけど、今のオッサンは、さらに輪をかけて考えこんでいるように見える。


「……ヒサオ。アルツで精霊樹が撤退を言いに来た時の事を覚えているか?」


「もちろんだよ。それがどうした?」


「もしやと思うのじゃが、試したいことがある」


「オッサン?」


「……悪いが、この場は任せる。ワシは、ワシが出来るかもしれん事を始めよう」


 俺にだけ言うと、その場で席を立ちあがり、


「少し試さねばならんことが出来た。どうなるのか分からんから、今、この場で詳しいことはいえん。ワシは席を離れるが、元々こういった場所には不似合いなもの。いなかった者として扱ってくれてかまわん。では、先に失礼する」


 有無を言わせなない言い切り。戦力確認を進めていた皆の会話が止まった。

 そのまま、部屋を出ようとしたとき、ふと顔をあげ足を止めた。


「皇帝よ。お前の部下たちを少しばかり借りるぞ。いいな?」


「それは構わないが、どうする気だ?」


「悪いようにはせんつもりじゃ。では借りていくぞ」


 ドルナードの返事を待たずに、そのまま扉をバタンと閉めてでていく。

 外のほうで何か聞こえてきた後、再度扉が開かれ見ればトーマだった。


「へ、陛下! あ、あの……よろしいので?」


「何が良いのか全く分からないが、付き合ってやれ」


「分かりました! ありがとうございます!」


「……ん?」


 妙に嬉しそうな声でトーマが返事をすると、ドルナードが首を捻った。オッサンのやつ何をいったんだ?


「……さすがだ。さすがジグの旦那だ」


 何が流石なのか、よくわからないが俺もそう思う。オッサン今度は何をする気だよ。


「やはり異世界人は面白い。ラノベと言うのもあるようだしな。ぜひとも読んでみたいものだ」


「……はい?」


 まさかのドルナードの発言に、俺はその場で凍り付いてしまった。

 その情報ってもしかして俺から?




 実は俺もラノベ好きだったという事が、バレちゃうじゃないか……

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